ナタリー PowerPush - ダイスケ
ウジウジ青年の“夏めき”宣言
路上ライブでフリーミアム戦略
──八王子には路上ライブからライブハウスにつながっていくような音楽文化があるんですね。
ええ、八王子はストリートのメッカだったんですよ。路上ミュージシャンにも派閥があって、この曜日のこの時間はこの人たちがやる、という暗黙の了解なんかもあったりしました。毎週金曜日が、僕の日でしたね。たまに八王子ルールを知らない人が来たりすると、お互いにアンプのボリュームを上げまくってバトルみたいになったりとかして(笑)。そこでは3、4年やってましたね。だんだん人が集まってきて、楽しくなってきたんです。何百人も集まってくれたこともありましたし。僕も僕で、ステージの前に大きなピクニックシートを敷いて、コンビニで買った安いお菓子を置いて「自由に食べていいよ」って感じのことをしてみたりして。できるだけたくさんの人に聴いてもらうためにいろいろ考えてましたね。
──本業とは直接関係ない商品やサービスをタダで提供してお客さんを集めつつ、本業の商品やサービスを買ってもらうフリーミアム戦略だ(笑)。
冬場だったら、ブランケットやホッカイロを置いておいたり。で、路上ライブが終わったら、集まったみんなとお話するんです。人生相談に乗ったりもしましたね(笑)。
──デビュー前に学園祭にも出演していると聞きましたが。
路上ライブが口コミで広がってオファーしていただいたり、大きな学生団体の部長さんに曲を気に入っていただけたりして、いろいろな大学の学園祭やイベントに参加させていただきました。
──じゃあドラマーとしてではなく、シンガーとしてプロになろうと思ったのも、この頃ですか?
そうですね。路上ライブでお客さんが増えていって、味をしめたというか。あと、大きかったのは、やっぱり父なんです。周りの友達がだんだん髪を黒くして、リクルートスーツを着るようになっていく時期になっても、僕は音楽しか頭になくて、路上ライブに明け暮れていたんですが、その頃に父から「音楽一本でやっていくつもりなら、オーディションを受けてみろ」と言われたんです。オーディションのチラシを持ってきて「受かったら音楽を続けてもいいけど、落ちたらもう一度自分の人生を考えなさい」と。
──お父さんは道を示しつつ、高いハードルを課してくるんですね。
確かに父はいつも考えてくれている気がします。で、そのとき受けたソニーミュージックのオーディションがデビューにつながったんです。
「今、僕はこの人たちにもっと伝わる音楽をやりたい」
──そして今年の夏には7枚目のシングル「夏めく坂道」がリリースされます。やっぱり夏が好きなんですか?
大好きです! もう6月ぐらいから好きですね(笑)。スケジュール次第ですが、海にもひと夏に2桁は行きますし。地元が湘南なので、サーフィンをしたりとか。
──歌詞を書くときは、具体的な風景を思い浮かべたりします?
自分の中にある湘南の景色などが歌詞に入っているとは思います。あと、今回は「ポケモン」の主題歌に、というお話をいただいてから書き下ろしたので「ポケモン」に似合う曲はなんだろう?と考えながら書きました。サウンドや歌詞もけっこう意識していますね。
──今回の曲の歌詞は今までのダイスケさんの曲の歌詞に比べて、とても力強いフレーズが多いな、と思いましたが、それが「ポケモン」感なんでしょうか?
一種の「ポケモン」感でもありますし、だんだん自分自身が変わってきたところもあります。「スマイルキャラバン」で旅をするまでは、ただ自分の好きな音楽をやっていればいいと思っていたんです。「それがミュージシャンだろう」という意識が強かったんですが、2年間旅をすることで、僕のことを認知してくれる方が増えて、聴いてくれる方の年代も広がってきました。それこそ、小さい子からおじいちゃん、おばあちゃんまで。そうなったとき「今、僕はこの人たちにもっと伝わる音楽をやりたい」と思うようになったんです。子供でも口ずさめるような歌詞やメロディを作りたい。だから、曲や詞の書き方が変わったのは確かですね。
今は変革の時にある
──今までのダイスケさんの曲を改めて聴いてみると、本人のさわやかなイメージとは裏腹に、大学時代のバンドっぽいというか、すごくウジウジしてる部分があったんですよ(笑)。ウジウジしてる男の子が、がんばって前向きになる感じが。
あははは(笑)。四畳半的でしたね。
──「五畳半とラブソング」という曲もありますし。
ああいうウジウジした感じや、陰湿な曲が好きなんです(笑)。
──実はそっちが地なんですね。これまでの曲の歌詞を見ると、ダイスケさんの描く太陽ってだいたいいつも沈んでいるんですよ(笑)。「路地裏に落ちてゆく太陽」(「ボク☆ロケット」)とか。それが今回の太陽は「陽射しのスコール」と燦々と照っている。
あははは(笑)。確かに、自分の歌詞の中では夕暮れや夜の世界を歌うことが多かったです。
──「朝焼けに目がくらむまで」(「五畳半とラブソング」)って、朝焼けで目がくらんじゃう人だったわけですからね(笑)。
はい(笑)。だから今は変革の時にあるんだと思います。それがいいことなのか、悪いことなのかはわからないですけど。
──うんうん。今回の曲の力強さは、いろいろな層の方に伝わりやすくするための……。
1つの手段ですね。
※初回仕様の在庫がなくなり次第、通常仕様に切り替わります。
収録曲
- 夏めく坂道
- 高気圧ガール
- スケッチブック アコースティックバージョン
- 夏めく坂道 instrumental
ダイスケ
1988年神奈川県湘南生まれの男性シンガーソングライター。2000年代終盤より東京・八王子駅周辺で路上ライブ活動を開始し、ピーク時には数百人の聴衆を集める。2010年秋にはインディーズアーティストながら大学、専門学校など21校の学園祭、文化祭に出演し、翌2011年2月にシングル「ボク☆ロケット」でメジャーデビューを果たす。以来「あなたにしかできないこと」「Moshimo」など6枚のシングルと、2枚のアルバムをリリースする。その一方で2011年より日本テレビ系の情報番組「ZIP!」内のコーナー「ZIP!スマイルキャラバン」にレギュラー出演。約2年間て47都道府県を2周し、その土地土地の模様を歌を交えてレポートした。2013年7月、テレビアニメ「ポケットモンスター ベストウィッシュ シーズン2 デコロラアドベンチャー」(テレビ東京系)の主題歌となる7thシングル「夏めく坂道」をリリースした。