音楽ナタリー Power Push - 大ラジカセ展×水曜日のカンパネラ
コムアイ、カセットテープ工場に行く
私が知ってるテープの音じゃなかった!
──工場を見学してみてどうでしたか?
小さい頃は単純作業に対する憧れがあって、「大人になったら工場で働きたい」と思っていたんです。ずっと同じことを繰り返す仕事って、見てて安心するんですよね。なんだろう、同じ物がいくつも重なっている束が好き。例えば今日見た中で言うと、箱にテープがたくさん詰め込まれているところとか、歌詞カードが何百枚も一緒に刷られて積まれているところとかを見ると「ウフフ」と思っちゃう。
──見学の中で一番感動したところは?
最後に試聴室でカセットテープを聴かせてもらったところかな。ちゃんとしたスピーカーやコンポで聴いたからこそって言うのもあるんですけど、私が知ってるテープの音じゃなくて。私のイメージより音質がクリアだったし、迫力もあって「カセットテープってこんなにすごいんだ!」っていうのが再発見できました。あとオーディオルームの設備が充実してて“音質チェックをちゃんとやる”工程を大事にしているのが印象的でした。料理で言うとしっかり味見をしている、みたいな(笑)。
カセットテープの音は場が温まりやすい
──コムアイさんが小さい頃はカセットテープってありましたか?
どちらかと言うと小さい頃はMDのほうが主流だったんですけど、当時習っていたバイオリンの先生がご高齢の方で。レッスンで使う課題曲の音源がカセットテープだったんです。だからテープが再生できる機器を買ってもらって、使ってました。工場の方も言ってましたけど、カラオケの練習とか楽器の練習をするのにテープって便利だなって思うんです。実際、少しだけ巻き戻したり早送りしたりするのが簡単でCDとかMDより便利でした。
──例えば最近、どこかでカセットテープに出会ったことはありますか?
DJミックス音源をテープに録音してくれた友達が手書きのラベルも付けてくれて、「うわ、これはずっと持っておこう」と思ったんですよね。それとDJでカセットを使ってる人がいて、ちょっとザラザラした感じの音がホッとすると言うか、すごく気になったんです。ノイジーでノスタルジーを感じさせるテープの音って、場が温まりやすい気がして。そのDJのときに機材のトラブルがあって、カセットの音がすごく歪んで出ちゃってたんですけど、その感じもすごくよかった。あ、それと水曜日のカンパネラの「ユタ」っていう曲の歌は、実はテープでレコーディングしたんです。
──オオルタイチさんがプロデュースをした楽曲ですよね。
そうです。タイチさんの家に大きいオープンリールのレコーダーがあって。クリアで鮮明ないつもの歌声より、粒子が鳴っている、砂をジャラジャラしているようなテープの音のほうが温かみを感じてしっくりきたんですよね。“音がキレイに整頓されていて輪郭がハッキリ見える”っていうのがCDとかハイレゾの魅力だと思うんですけど、でも実はボヤっとしていたりノイズが入っていることで逆に音がいいと言われることもある。音作りってただキレイならいいってだけじゃない気がするんです。
安っぽいんだけどハイテクな“あの感じ”が好き
──コムアイさんが感じるカセットテープの魅力はどういうところですか?
アナログレコードとかレコードプレーヤーって、日本の家には大きすぎる気がするんです。その点、カセットってコンパクトでちょっと積み重なっててもオシャレ。カセットのプレーヤーも小さいですし、日本人向けの音楽機器なんだと思います。それとデザインでいろいろ遊べるのもカセットテープの魅力だと思うんです。例えば表と裏で違うプラスチックを使ったツートンカラーのカセットがあったり、プラスチックの部分にいろんな工夫ができる。
──今回、ナタリーストアとのコラボアイテムとしてカセットテープを作ることになっていますが、どんなテープにしたいですか?
今回は音源の入っていない空テープを作るんですけど、プラスチックの色味のよさは生かしたい。アイテムとしてつい手に取りたくなるようなデザインのものにしたいと思っています。それと、いつかはカセットテープで水曜日のカンパネラの音源も出したいです。
スタイリスト 田浦幸司
ヘアメイク 宮川朋子(エスト・アン)
着用アイテム
ニット¥4,800 / オーバーオール¥8,800
<問い合わせ先> the poem 052-880-3922
大ラジカセ展
- 2016年12月9日(金)~12月27日(火)
- 東京都 パルコミュージアム
(池袋パルコ本館7F) - OPEN 10:00 / CLOSE 21:00
※最終日のみ18:00閉場
※入場は閉場の30分前まで - 入場料:一般 500円 / 学生 400円 / 小学生以下無料
水曜日のカンパネラ(スイヨウビノカンパネラ)
主演・歌唱担当のコムアイと、作曲・編曲担当のケンモチヒデフミ、それ以外担当のDir.Fから成る。2012年夏にデモ音源「オズ」と「空海」をYouTubeにて公開。2013年3月に東京・下北沢ERAにて初ライブを実施した。ライブではコムアイのみがステージに立ち、彼女の趣味の1つである“鹿の解体”をイベントで行うなど個性的なパフォーマンスで話題を呼んでいる。2016年6月に7曲入りの音源「UMA」をリリースし、メジャーデビューを果たした。同年11月には配信限定シングル「SUPERKID」を発表。現在全国ツアー「ワンマンライブツアー2016 ~SUPERMAN~」を開催している。
- 配信シングル「SUPERKID」
- 下記サイトにて配信中!