愛知・名古屋を拠点に活動する女性3ピースバンド、CRUNCHが1stアルバム「てんきあめ」を完成させた。SoundCloudにアップした楽曲がイギリスの新聞「The Guardian」をはじめとする海外メディアからの注目を浴び、国を越えて支持を受ける彼女たち。レミ街の荒木正比呂プロデュースによるアルバム「てんきあめ」は、これまでの集大成にして、バンドの新たな一歩を示している。
そんなCRUNCHが“意識低い系作家”として知られるマンガ家・サレンダー橋本とコラボ。バンドのオフィシャルグッズにサレンダーの描き下ろしイラストが使用された。サレンダーはネットに上げた4コママンガが話題となり、のちにWebサイト「オモコロ」に参加。現在では雑誌「ヤングチャンピオン」で連載を持つ人気マンガ家である。
両者の共通点は「SNSでのバズ」と「働きながら創作活動を続けている」ということ。今回音楽ナタリーではCRUNCHの川越玲奈(B, Vo)と堀田倫代(G, Vo)、サレンダー橋本へのインタビューを実施し、音楽とマンガというジャンルの垣根を越えて、作り手としての思いを語り合ってもらった。
また今回の特集にはサレンダーの描き下ろしマンガも掲載。インタビュー時の様子や心情をコミカルに描いた作品となっている。
取材・文 / 金子厚武 撮影 / moco.(kilioffice)
諸星大二郎みたいな、霊的なものを感じるんですよ
──サレンダー橋本さんがCRUNCHのイラストを描くことになった経緯を教えてください。
川越玲奈(B, Vo) 数年前からTwitterで相互フォローをしていて、ほかにはない不思議なセンスのマンガ家さんだと思っていたんです。なのでアルバム「てんきあめ」を出すときにはぜひサレンダーさんに聴いていただきたいと思って。ダメもとでイラストの執筆をお願いしたらOKをいただけたので、すごくうれしかったです。
──「不思議なセンス」と言うのは?
川越 メンバーの3人共「明日クビになりそう」(参照:サレンダー橋本が“クズ会社員あるある”を描くギャグ、ヤンチャンで開幕)が好きなんですけど、「こういうシチュエーションあるよな」とか「こういう社員いるよな」っていうリアリティがあるんですよね。さすがに主人公の宮本くんみたいな人はなかなかいないと思うんですけど、トラブルが起こったときに、そこの部署のみんなで走り回るあの感じとか、「あるよね!」って共感できて。
堀田倫代(G, Vo) ギャグやストーリーも面白いんですけど、特に絵が好きなんです。キャラクターの何気ない表情がよくて、ちょっと諸星大二郎みたいな、霊的なものを感じるんですよね。あの世とつながっている感じと言うか、精神的な世界を感じたり。
──もともと皆さん、マンガがお好きなんですか?
堀田 いろいろ読んでるわけではないんですけど、好きですね。ほかにマンガ家との関わりでは、はっぴいえんど「夏なんです」「暗闇坂むささび変化」のカバーを収録した作品「Momonga EP」(参照:Momonga EP | CRUNCH)のジャケットイラストに小田扉さんの「団地ともお」のワンシーンを使わせていただきました。このときもTwitterで連絡しました。小田さんの描く動物の絵が好きなんです。
──では逆に、サレンダーさんから見たCRUNCHの魅力は?
サレンダー橋本 あんまり感情的じゃないと言うか、淡々とやってるのがすごくいいなと感じました。歌詞はけっこう感情的なことだったりもすると思うんですけど、歌い方のトーンが一定と言うか抑えてるところがすごくカッコいいです。
会ったら音楽の話で終わっちゃう
──CRUNCHは高校の軽音部のメンバーで、高校卒業後に結成されたそうですね。資料には「荒井由実・ミーツ・New Order!?」とあって、確かにその要素はありつつ、でももっと雑多な音楽性が混ざっているように思います。結成当時はどんな方向性を思い描いていたのでしょうか?
堀田 音楽性は特に意識していなくて。最初からオリジナル曲をメインに演奏していたんですけど、みんなで遊んでる感じでした。それぞれが自分のやりたいアイデアを持ち込んで、とにかく3人で練っていく。だから、いつもどんなふうに曲が仕上がるか自分たちでもわからないんです。
──CRUNCHは3人共作曲をしますが、それぞれ好みもバラバラなんですか?
堀田 3人共通して好きなのがNew Orderとフィッシュマンズで、あとはグラデーションのように好みが変わっていると言うか(笑)。ドラムの神野(美子)はネオアコっぽいのが好きで、私はファンクっぽいのが好きだったり。
川越 私はエレクトロっぽいのを聴いてたり。
橋本 曲を作るときにリーダーがいないと、複数人でやるのって難しくないですか?
堀田 その曲の発案者がリーダーになりますね。
川越 で、困ったらみんなに助けてもらう。最初の頃はローテーションを組んでて、「今思い浮かばない」ってときはパスしたり、順番をリバースしたりしてました(笑)。その分、時間はかかるんですけど。
堀田 みんな自分のこだわる部分にはすごくこだわるんだけど、「ほかはどうでもいい」みたいなところはあるかも。
橋本 いい意味で、けっこうビジネスライクなんですかね?
川越 そうですね。仲よくないわけじゃないですけど、とにかく会ったら音楽の話で終わっちゃうんです。
──高校時代から「音楽が好き」でつながってるんですね。
堀田 そうですね。音楽が共通言語です。ほかは特に……。
川越 「プライベートの話をするのはここじゃない」みたいなね(笑)。
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自己顕示欲がだんだん抑えられなくなる
- CRUNCH「てんきあめ」
- 2017年11月22日発売 / THANKS GIVING
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[CD]
2160円 / DQC-1590
- 収録曲
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- Simple Mind
- Blue
- 通り雨
- Holiday
- 人魚と海
- ウタカタ
- Sunny
- 君からの合図
- Eternal
- サレンダー橋本「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」
- 2015年10月28日発売 / 小学館クリエイティブ
- サレンダー橋本「働かざる者たち」
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Webサイト「コココミ」にて連載中
- CRUNCH(クランチ)
- 堀田倫代(G, Vo)、川越玲奈(B, Vo)、神野美子(Dr, Cho)の3名によって結成された愛知・名古屋出身のロックバンド。シティポップやポストパンクから影響を受けたサウンドを特徴とし、これまでに「The Guardian」や「beehype」、「The Japan Times」など海外のさまざまなメディアで紹介され話題を呼んできた。Bandcampを中心にオリジナル楽曲を発表しつつ、2014年には松石ゲル(PANICSMILE)をプロデューサーに迎え、初の全国流通盤となるミニアルバム「ふとした日常のこと」を発表。2017年11月22日には荒木正比呂(レミ街)プロデュースによる1stアルバム「てんきあめ」をリリースした。
- サレンダー橋本(サレンダーハシモト)
- “意識低い系作家”と呼ばれるマンガ家。2013年より自身のブログにて4コママンガの発表を開始し、同年Webメディア「オモコロ」 にて4コママンガ、短編マンガの連載をスタート。2015年には小学館から初の単行本「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」を発表した。2017年3月からは秋田書店「ヤングチャンピオン」にて、“クズ会社員あるある”を描く「明日クビになりそう」、Webサイト「コココミ」にて「働かざる者たち」を連載中。