CRUNCH×サレンダー橋本|地方からバズる2組の共通点|サレンダー橋本謹製コラボマンガ掲載

「つらい」を押し続ける気力も、「ハッピー」を押し続ける気力もない

──「てんきあめ」と言うタイトルについて、バンドのオフィシャルサイトに「心の天気雨のなかで、悲しいけどウエットではない、カラッとしている、そんな気持ちを表現したアルバムです」というコメントが出ています。白と黒では割り切れない、ある種の人間の曖昧さを「そういうもんだよね」と肯定するようなフィーリングは両者の作品の共通点だと思います。

堀田 そうですね。「ただ楽しい」みたいな曲は作りたくないです。

川越玲奈(B, Vo / CRUNCH)

川越 普通に生活してて、「ただ楽しい」って思うことはないですよね。「楽しい」って思ってても、絶対ほかのことも考えてるし。

堀田 かと言って、「つらい、つらい」みたいな曲も嫌だし。

川越 「つらい」を押し続ける気力もないし、「ハッピー」を押し続ける気力もない。常に揺れてる感じっていうか。

堀田 「悲しいけど、がんばっていこうよ」みたいな、そういうところはあるかもしれないですね。

──サレンダーさんはこういったフィーリングについて、どうお考えですか?

サレンダー橋本

橋本 中学生のときに9.11(アメリカ同時多発テロ事件)があったんですが、次の日の朝礼で先生が「俺はあれを見てハリウッド映画みたいですげえなって思った。君たちもそういう本物の感情の存在を否定してはダメだ」って言って。それがけっこう印象に残っています。もちろんたくさんの人が亡くなったから、悲しい気持ちもあるんだけど、最初に抱いた正直な感情も忘れちゃいけない。日常でも同じようなことはあって、ときに最悪ですけどそこはちゃんと表現していきたいと思います。

堀田 「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」に収録されてるトイレの神様の話(「全員くたばれ大学生!~でも本当はうらやましい~」)って、サレンダーさんのスタンスを表してるのかなって思ったんです。

橋本 ワーッてやってる大学生の輪って入りたくないけど、やっぱりうらやましい感情もあるんですよね。まぶしいけど、手に入らないからけなしてしまうという。確固たる自分の価値観があるわけじゃなくて、周りをチラチラ横目で見ながらこそこそ過ごすという、そういうスタンスです。

不完全だけど魅力を感じてもらえるものに

──CRUNCHは音楽シーンに対してどんな考えをお持ちですか? 加わりたいと思うか、それとも、自分たちは自分たちか。おそらく、どっちもあるのかなって。

川越 たくさんの人に聴いてもらいたいけど、あんまり目立ちたくもない(笑)。イベントとか、仲間に入れてもらえるととてもうれしいんですけど、その分「大丈夫かな?」って怖くもなっちゃうんですよね。「ここにいても大丈夫なんだろうか?」って。でも周りに助けてもらってるから「しっかりしなきゃ」ってがんばれる。自分たちだけだったら「聴いてほしいけど、まあいいや」ってなっちゃうんじゃないですかね。

橋本 自分たちがやりたいことと、広く聴かれることの間で思い悩むこともありますか?

堀田 今までは好きなことに突き進んで、「こういうのは売れ線」っていうのはやりたくなかったんですけど、最近はもうちょっと聴いてもらう努力もしたいなって思うようになりました。先ほども言ったように、Yumi Zoumaってけっこう理想的で、彼らはマニアックな音楽が好きだと思うんですけど、一般受けする要素も持ってますよね。音楽性をガラッと変えなくても曲を整理して、アレンジをきちんとすれば、もっと多くの人に聴いてもらえると思うので、まずは曲の精度を上げていくべきかなって。

──では最後に、それぞれの今後の活動に対する展望を話していただけますか?

左から川越玲奈(B, Vo / CRUNCH)、堀田倫代(G, Vo / CRUNCH)、サレンダー橋本。

橋本 現状維持と言うとアレですけど……やっぱり、生活が変わる中で同じ活動を続けられる人って少ないですよね。マンガでも音楽でも同じだと思うんですけど。なので、まずはとにかく会社で働きながら描き続けることかなと思います。

──それこそネットによって、働きながらでも、地方在住でも、自分の好きな形で表現を続ける環境は整ってきてますしね。CRUNCHはいかがですか?

堀田 すごく計算した作曲だったり、完璧な演奏はできないですけど、むしろ不完全だけど魅力を感じてもらえるものを作りたいです。「音楽はこうあるべき」とか、そういう枠からはみ出した不完全なものがいいなって思うんですよね。バスドラがなくても、曲として面白いってこともある。それって働き方にも言えることで、何かが足りなかったり、逆に個性が強すぎたりしても、その人なりに働ける社会になればいいなって。

橋本 それが「Simple Mind」の歌詞にも出てくる、「君が遊ぶユートピア」ですね。

左から川越玲奈(B, Vo / CRUNCH)、サレンダー橋本、堀田倫代(G, Vo / CRUNCH)。

サレンダー橋本描き下ろし!本特集特別コラボマンガ

CRUNCH「てんきあめ」
2017年11月22日発売 / THANKS GIVING
CRUNCH「てんきあめ」

[CD]
2160円 / DQC-1590

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Simple Mind
  2. Blue
  3. 通り雨
  4. Holiday
  5. 人魚と海
  6. ウタカタ
  7. Sunny
  8. 君からの合図
  9. Eternal
サレンダー橋本「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」
2015年10月28日発売 / 小学館クリエイティブ
サレンダー橋本「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」
サレンダー橋本「働かざる者たち」
サレンダー橋本「働かざる者たち」

Webサイト「コココミ」にて連載中

サレンダー橋本サレンダー橋本「明日クビになりそう」

秋田書店「ヤングチャンピオン」にて連載中

CRUNCH(クランチ)
CRUNCH
堀田倫代(G, Vo)、川越玲奈(B, Vo)、神野美子(Dr, Cho)の3名によって結成された愛知・名古屋出身のロックバンド。シティポップやポストパンクから影響を受けたサウンドを特徴とし、これまでに「The Guardian」や「beehype」、「The Japan Times」など海外のさまざまなメディアで紹介され話題を呼んできた。Bandcampを中心にオリジナル楽曲を発表しつつ、2014年には松石ゲル(PANICSMILE)をプロデューサーに迎え、初の全国流通盤となるミニアルバム「ふとした日常のこと」を発表。2017年11月22日には荒木正比呂(レミ街)プロデュースによる1stアルバム「てんきあめ」をリリースした。
サレンダー橋本(サレンダーハシモト)
サレンダー橋本
“意識低い系作家”と呼ばれるマンガ家。2013年より自身のブログにて4コママンガの発表を開始し、同年Webメディア「オモコロ」 にて4コママンガ、短編マンガの連載をスタート。2015年には小学館から初の単行本「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」を発表した。2017年3月からは秋田書店「ヤングチャンピオン」にて、“クズ会社員あるある”を描く「明日クビになりそう」、Webサイト「コココミ」にて「働かざる者たち」を連載中。