アナログレコード市場が活況を呈している近年の音楽シーンでは、ベテランから若手まで幅広い層のアーティストがアナログレコードを発売している。ここでは今年4月に初のアナログ7inch「アジアの純真 / Shangri-La」をリリースしたチャラン・ポ・ランタン、コンスタントにアナログレコードでも作品を発表し続けているスカートとSuchmosのYONCE、昨年デビュー30周年を記念し、満を持してアナログボックスセットを発売した久保田利伸に、アナログレコードへの思いを語ってもらった。
YONCE(Suchmos)
レコードは音楽を一番カッコいい音で聴けるメディアだと思います。何より音がリアルでガチ。叔父の営むバーでレコードを聴かせてもらったのが原体験です。
今は気の合う仲間と、居心地のいい場所で聴くのが好きですね。
メンバーや友達とそれぞれの家でお気に入りのレコードがかかれば文句なし。
ニューヨークに初めて行ったとき、友人の家で聴いたマイケル・ジャクソンの7inchコレクションはとても強い思い出になってます。
お気に入りのレコードはThe Beatles「Abbey Road」です。まず大前提として、単純に「Abbey Road」という作品自体が大好きで、レコードだとアートワークや聴く環境を一緒に楽しむことができるし、一層魅力的な1枚になると思いますよ。A面のラストナンバー「I Want You」をホワイトノイズで終わらせて、レコードを裏返させるThe Beatlesのユーモアを愛してます。
- Suchmos(サチモス)
- 2013年1月に結成された、神奈川県出身のバンド。YONCE(Vo)、HSU(B)、OK(Dr)、TAIKING(G)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)の6人からなる。2015年4月にデビューCD「Essence」、6月に7inchアナログ「Miree / Pacific」を発表した。2016年11月に1stアルバム「THE BAY」をリリースし、12月には本作の12inchアナログ盤を数量限定で発売。2017年7月に自主レーベル「F.C.L.S.」の第1弾作品「FIRST CHOICE LAST STANCE」を発表した。
スカート
僕は家に両親のアナログレコードが残っていたのがきっかけで、アナログレコードを聴き始めました。小学生の頃にYMOに興味を持ったのですが、そのアナログレコードの中には母が所有していたYMOのタイトルだけでなく、メンバーのソロ、XTCやRCサクセション、遠藤賢司さんの作品などもあり、現在に至るまで影響を受けています。
お小遣いが限られていた中高生(なんなら大学生も含めて)の頃は名盤が100円とか300円で買える、という、魅力がアナログレコードにはありました。今は、針を降ろしたり、ひっくり返したりする手間が愛おしいですね。手間かけて音楽を楽しむ贅沢!
さまざまなタイトルが復刻されたり、今までアナログレコードになっていなかったものまでリリースされる時代が来たのはとても幸せなことだと思います。本当にうれしい。新品の値段が高価というのもそうですが中古の相場も上がってきて気軽にレコードを聴けた頃と比べると少しハードルが上がってしまったような気がして、そこを何とかできないか、と考えることもよくあります。今年30歳になる僕らの世代はまだギリギリ家にコンポがあって、それを土壌にしてレコードにたどり着けたのかもしれないけど、今後若い人たちにとってレコードがコレクターズアイテムではなく、聴くものとして普及していくといいな、と思っています。
ちなみに僕のお気に入りはブロッサム・ディアリーの「SINGS」というレコード。大好きなアルバムです。再生機器はTechnicsのSL-1400を使ってます。ベルトドライブのプレーヤーを長く愛用していたのですが、回転率のゆがみがときどき起こるようになってしまってダイレクトドライブのプレーヤーを探しました。なおかつ、眠る前にレコードを聴くこともあったのでオートリターンのものがいい、ということでいろいろ調べてこのモデルを買いました。
- スカート
- シンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト。昭和音楽大学卒業時よりスカート名義での音楽活動を始め、2010年12月に自主制作による1stアルバム「エス・オー・エス」をリリースした。以降もセルフプロデュースによる作品をコンスタントに制作し、2012年6月に初のアナログ盤「消失点」、2014年12月にアナログ12inchシングル「シリウス」、2017年4月に3rdアルバム「CALL」のアナログ盤を発表。同年10月にポニーキャニオンよりメジャーデビューアルバム「20/20」をリリースした。
久保田利伸
針を落とすときの緊張感と高揚感、塩化ビニールの匂い、そして12inchの存在感……何年経ってもVinylは別格です。Super highまで聴こえてしまうCDやハイレゾ製品とは異なり、その周波数に限りのあるアナログは、曲や演奏者の持つ個性が逆に際立ち、聴く者と制作者との距離を縮めてくれます。アナログの持つ温かさの所以でしょう。そんなスペシャルなものですから、僕のデビュー30周年に相応しいVinyl Collectionが企画、発売されたわけです(参照:久保田利伸 アナログ盤ボックスセット「30th Anniversary Vinyl Collection」商品ページ)。
僕のお気に入りのアナログレコードは、スティーヴィー・ワンダー「Songs in the Key of Life」、Bob Marley & The Wailers「Babylon by Bus」、ジョセリン・ブラウン「Somebody Else’s Guy」、とても貴重なボックスセット「LOVE BALLADS 14枚組BOX SET」です。Dualのターンテーブル、Audio-Technicaの針、McCORMACKのアンプ、ProAcのスピーカーで世の中が寝静まった丑三つ時、お酒を飲みながら照明をキャメル色になるまで落として1人ぼっちで聴いてます。一度聴き出したら、2時間は続きます。
- 久保田利伸(クボタトシノブ)
- 静岡出身の男性R&Bシンガー。1985年に作曲家としてデビューを果たし、田原俊彦、鈴木雅之、小泉今日子などさまざまなアーティストに楽曲を提供する。1986年にシングル「失意のダウンタウン」でソロシンガーとしてメジャーデビューし、2016年12月にデビュー30周年を記念したアナログ盤ボックスセット「30th Anniversary Vinyl Collection」を発売。2017年9月には初のライブ盤「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」をリリースした。
2018年11月16日更新
もも(チャラン・ポ・ランタン)
私はレコードを聴く環境で育っていなくて、今でもどうやってレコードを持てばよいか、どうやって音が出ているのか、全然わからない身なのですが、こんな私でもたまに入る喫茶店で流れるレコードの音や、友達の家へ行ってそこで触れるレコードの音に、安心感や味わい深さ、温かみを感じます。あと、ジャケットというか見た目だけでも写真を飾るみたいな感覚で見ていて楽しいし、かわいいです!
今まではCDしかリリースしたことがなく、でもずっとアナログレコードに興味はあったんです。カバーアルバム「借りもの協奏」をリリースしたタイミングで中に入っている PUFFY「アジアの純真」、電気グルーヴ「Shangri-La」の2タイトルでアナログ盤を出したらカッコいいんじゃない?!?と盛り上がって、そして実際にリリースできることになり、決まったときはうれしかったです。
できあがったアナログレコードを見て、本当にビニール製なんだな!と衝撃でした(笑)。そして、やっぱり部屋に飾ると華やかになってかわいいなって、何度も見てしまいます。ジャケットもお気に入りのものだったので、それをアナログレコードのサイズで部屋に飾れるのがうれしくて!! また機会があれば、アナログ盤をリリースしたいです!