面白くないと伝えたいことが伝わらない

林　僕は逆に松原さんと関わることが多かったですね。松原さんのほうから歩み寄ってくれてたのもあるかもしれないです。

平井　確かに。やけに林に寄っていってたイメージあるわ。

林　最初は「なんかこの人、目が笑ってないな」という印象で（笑）。でもライブハウスで見かけると、ゴッツイ顔で働いていて、ちゃんと仕事してる人なんやなとは思ってました。まあ逆にそれをいじってたんですけどね。

風次　松原の入院中、シリカが復活する少し前くらいに、林に「もう死ぬから松原のお見舞い行け」って言うたやん。あのときはどんな感じやったん？

林　病室に入った瞬間、仕事してましたね。

平井　手塚治虫みたいやな。

林　でもやっぱりキツそうでした。ずっと咳してて。僕は具志堅用高の写真を印刷して、額に入れて持っていったんですけど、「バリ邪魔やわ」って言われましたね……。

風次　そのボケ流行ってたん？ 今年の「COMING KOBE19」のときにも、「復活しました」みたいな感じでKEYTALKにCDと一緒に具志堅渡してなかった？

林　渡しましたね。

風次　めっちゃ忘れて帰ってたで……具志堅もCDも。

林　滑ってしまったみたいですね。

平井　あと2人から学んだのは、ある程度面白くやらなほんまに伝えたいことは伝わらへんってことですね。「juJoe」のジャケット写真には、けっこうしんどいことを書いてるんですよ。僕はQOOLANDが解散したとき、「もう絶対バンドやらへんわ」と思ってたんです。バンドをやるのってめっちゃしんどいので。車両保険入ってないハイエースをずっと運転するくらい金なかったし。でも辞めたら辞めたで頭おかしなってもうて、「ゆうメンタルクリニック」に行ったら、先生に「あんたもう1回バンドやりなさいよ」と言われてjuJoeを結成したんです。でもそれを真面目なテンションで言ったら聞くほうもしんどいじゃないですか。だから面白く伝えなきゃと思って。

風次　それも面白くすんねや。

平井　しんどいことこそ面白くせなあかんのかなって。松原さんはがんになってしまったとことですらネタにして、それをプロモーションの一環にまでしていましたしね。あと松原さんと風次さんがすごいのが、注意事項や規約とかの文章すら変えてしまうところ。僕が囚われてた常識みたいなものを壊してもらった感じがします。CDの帯に“コピー厳禁”みたいなことがよく書いてあるじゃないですか。「juJoe」の帯には「コピーしてもOK」と書いたり絵文字を入れたりしていて。

「続けるって言ってるやんけ！」

──風次さんは松原さんから「COMING KOBE」の実行委員長を引き継がれましたが、今後について何か考えていることはありますか？

風次　今までの「COMING KOBE」では、松原に企画のアイデア泥棒をされて恨んだこともありました。なのでこれからは松原という存在を忘れて、どんどん新たなことを横暴にやっていきます。そういう意味を込めて、12月23日に「松原裕 お別れの会」をやるんです（参照：神戸ライブハウス「太陽と虎」代表・松原裕のお別れ会開催）。と言いつつもちろん感謝はしてます。でももういないから相談もできないし、進んでいくしかないと思っていて。今までの「COMING KOBE」では、責任を背負わずに、基本はブッキングとか対アーティスト面を中心にやっていました。わからないことだらけですが、今後は自分と周りの人間を信じて、芯の部分は残しつつ、変わっていく部分があってもいいんじゃないかと思っています。例年1月17日に開催発表しているんですけど、来年の1月17日にもいい発表ができればいいなとは思いますね。

平井　もう「COMING KOBE」を終わらせるという選択肢はなかったんですか？

風次　あったと思う。

平井　会議とかでその意見を言う人はいなかったんですか？

風次　俺その会議おらんかったからな……気付いたらもうやるって決まってて。まあでも、もうじき死ぬやつ目の前にしてさ、これで「COMING KOBE」最後にしようなんて言われへんやん。むしろ死ぬまでなんとか支えたろみたいな人が多かったんちゃうかな。

平井　なるほど。月並みですけど僕はこの先も「COMING KOBE」が続いていってほしいです。自分が何度も出させてもらったフェスなので。なんか松原さんの「続けるって言ってるやんけ！」って声が聞こえそうやけど。

風次　そやで。お前らから心配される筋合いはないし、大丈夫やから。