音楽ナタリー Power Push - Czecho No Republic

フロントマンが語るバンドの変革

Czecho No Republicの3rdアルバム「Santa Fe」が完成した。本作はバンドの中心人物である武井優心(Vo, B)の「遊び心に満ちたアルバムを作りたい」という思いを起点に制作され、その結果彼らはCzecho No Republicのポップミュージック像を更新するアルバムを作り上げてみせた。今回は武井にソロインタビューを実施。「そろそろバンドのあり方を変えなきゃいけないと思った」というその理由も含めて、本作に込めた思いを率直に語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 上山陽介

楽しみながらバランスを取れた

──シングル「For You」のリリースタイミングでインタビューさせてもらったときに、武井さんはアルバム制作に向けて「四の五の言わず遊びます」と言っていましたが、実際その言葉通りのアルバムができましたね。(参照: Czecho No Republic「For You」インタビュー

武井優心(Vo, B)

うん、けっこう遊べたと思いますね。実現できなかったこともちょっとあったんですけど。

──というと?

俺が一番好きな曲がこのアルバムに入らなかったんですよ。次のアルバムには絶対入れようと思ってるんですけど。

──入らなかったのはなぜ?

ちょっとわかりにくいかなと思って。

──それはどういう曲なんですか?

かなりサイケな曲ですね。

──ああ、サイケなほうに寄っていきたいのかなというのはこのアルバムを聴いて感じたことでもありました。7曲目の「クワーキーワールド」などから顕著ですよね。

そう。制作の最初は「クワーキーワールド」みたいな曲がいっぱいあったんです。でも、「そっちに寄り過ぎるのは急だよね って、会議でデモを聴きながらそういう話になったんですよね。そこからバランスを取っていって完成したのがこのアルバムです。楽しみながらバランスを取れたというか。

──前回のインタビューではシングルをリリースする上でのジレンマも吐露していましたけど。

Czecho No Republic

そうですね。シングルに関しては、俺が展開していきたいモードとは異なるテーマをもらったものが2曲続いたので、そこで「うーん、アルバムどうしよう?」ってなっちゃって。自分がやりたい方向性を突き詰めると、シングル曲がアルバムの中でかなり浮くと思ったし。でも、そこのバランスをなるべく取るようにして。大きかったのはリード曲の「Firework」ができたことですね。「Firework」が全体のバランスをうまく取ってくれたし、この曲があったからほかの曲はけっこう自由に作れるなと思えたんですよね。「Firework」ができるまではメンバーも不安だったと思うんですよ。「この人、アルバムどうすんだ?」って(笑)。

──あはははは(笑)。

でも、「Firework」ができたときにメンバーから「おおっ」という反応があって。

──こういうエレクトロサウンドでリード曲を作りたいと思っていたんですか?

いや、そういう狙いはなかったけど、こういう感じのサウンドはリスナーとしてもずっと好きだったんです。「Beautiful Days」ができたときにすごく手応えがあって。でも、これもアルバムにポンと置いたときに浮いちゃうなと思ったんですよ。だけどそのあとに「Firework」を作ることができたから。俺の中では「Beautiful Days」が“静”、「Firework」が“動”というイメージで。今の時代、ダンスミュージックと言っても幅が広すぎますけど、この2曲はループミュージックなんです。コードをループしていく高揚感をいかにバンドで表現できるかがポイントでしたね。

四の五の言わずに「これ!」

──そもそも今作は全体的にシンセを軸にサウンドメイクしている曲が多いですね。

砂川一黄(G)

あんまりギターをフィーチャーしたくなかったんですよね。シンセに興味があったし。あとは正直、ギターの砂川(一黄)くんにはもっとサウンド全体を意識してほしいという気持ちもあって。彼はプレイヤーとして我が強いので、これくらいのバランスのほうがいい塩梅になるんですよ。

──そのあたりで砂川さんと意見がぶつかることはなかったんですか?

ありましたよ。「ここは無音でいいから」って言っても、俺がよそ見しているうちに彼が何かやろうとしていたこともあったし(笑)。

──なるほどね(笑)。

でも、今回は俺のわがままを通してレコーディングしたかったんです。アレンジもけっこう俺が作ったデモのままの曲も多いし。

──わがままというか、バンドのことを考えてそのほうがいいと思ったんでしょう?

そう。みんなで悩みながら曲を作るのもいいんですけど、その前に俺が迷っていたらバンドにこの先はないなと思ったし。「この曲はこれでいいから!」って押し通すくらいの勢いがないとダメだなと。

──フロントマンでありメインソングライターとして陣頭指揮を執るべきだと。

武井優心(Vo, B)

四の五の言わずに「これ!」って言わなきゃな、と。平和な感じでやっていくのもいいかなと思っていたし、前作「MANTLE」はみんなの意見を聞きながら作ったんです。でも、今思うとその作り方はちょっと窮屈だったなと感じるんです。

──これも前回のインタビューで「『MANTLE』はムダのないアルバムだったから、次はもっとムダなことをやりたい」と言ってましたよね。

そう、もっと変なアルバムを作ってもいいと思って。結局、メンバーに「どう思う?」って意見を聞いてもホントは自分の中で正解はあるし。

──でも、民主主義的に動かしたほうがバンドはうまく転がっていくと思っていた。

それが、バンドが長続きする秘訣なのかなって思ってましたね。

──チェコの前に組んでいたバンドをなぜ解体してしまったのかを考えると?

そうそう(笑)。でも、だんだんみんなの意見を聞きながらバンドを動かしていくことにストレスを感じてしまうようになったんですよね。例えば学生時代の修学旅行とかも、先生がいるから楽しいと思うんですよ。先生がいるからコソコソ夜遊びしたりするスリルがあるわけで。友だちだけで行った旅行の夜なんて意外と地味だったりするし。それに子供だけで過ごしてたら、部屋は散らかるじゃないですか。バンドがそういう状態になりかけていたんですよね。「俺が、俺が」ってみんな騒いでるような状態で。でも、「それってホントにバンドにとっていいことなのかな」って疑問に思ったんです。ホントは先生のような役割を担う人がいて、全体がピリッとするから面白いんじゃないかって。

──なら、自分がまとめ役になるべきだと。

山崎正太郎(Dr, Cho)

まあ、まとめるほど威厳はないんですけどね。だから、まとめるというより「僕は君たちに惑わされません!」という感じが正しいかも(笑)。

──あはははは(笑)。

でもね、メンバーも俺がそういう感じになるのを待ってたと思うんですよ。どこかで俺はずっとバンドに対して冷めてたので。でも、「それではいかんぞ」と体育会系の血が騒ぎ出したんです(笑)。

──武井さんにそんな血があったんだ(笑)。

消えかけてたんですけどね(笑)。消えかけていた火種をまたパタパタと扇ぎました。

ニューアルバム「Santa Fe」 / 2015年9月9日発売 / 日本コロムビア / TRIAD
初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / COZP-1061
通常盤 [CD] / 3024円 / COCP-39172
CD収録曲
  1. Firework
  2. Heart Beat
  3. Oh Yeah!!!!!!!
  4. Beautiful Days
  5. Fun, Fun, Fun, Fun, Fun
  6. エンドルフィン
  7. クワーキーワールド
  8. イメージ
  9. Empty Your Mind
  10. For You
  11. オルゴール
初回限定盤付属DVD
  • 日比谷野音ワンマンドキュメンタリー
ワンマンツアー「『Santa Fe』リリース記念 聖なる行進TOUR」
2015年9月18日(金)北海道 cube garden
2015年9月20日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2015年9月21日(月・祝)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
2015年9月24日(木)香川県 DIME
2015年9月26日(土)福岡県 DRUM Be-1
2015年9月27日(日)熊本県 熊本B.9 V2
2015年10月2日(金)大阪府 なんばHatch
2015年10月3日(土) 広島県 広島CLUB QUATTRO
2015年10月9日(金)石川県 Kanazawa AZ
2015年10月10日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
「Santa Fe」リリース記念 聖なる行進TOUR スーパーファイナル ×一夜限りの結成5周年スペシャル
2015年10月17日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)

Czecho No Republic

武井優心(Vo, B)と山崎正太郎(Dr, Cho)を中心に2010年3月に結成。メンバーチェンジを経て、現在は武井、山崎、八木類(G, Syn, Cho)、タカハシマイ(Cho, Syn, Percussion)、砂川一黄(G)の5人で活動している。2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリース。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表した。2013年10月に2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューし、2014年7月にはセルフプロデュースのアルバム「MANTLE」をリリース。10~12月にはフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマとして「Oh Yeah!!!!!!!」が全国でオンエアされた。2015年2月、グリコ「ポッキーチョコレート」のスペースシャワーTVバージョンCMソングに提供した「For You」をシングルとしてリリース。同年7月には東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを開催し、9月に3rdアルバム「Santa Fe」を発表する。