音楽ナタリー Power Push - Czecho No Republic

フロントマンが語るバンドの変革

シティポップの流れには乗れない

──ラストの「オルゴール」の歌詞は、振り切れた武井さんの思いが如実に表れてますよね。

タカハシマイ(Cho, Syn, Percussion)

そうですね。この曲は「Firework」ができた次の日に作ったんですけど、いろいろ吹っ切れてますよね。一番雑な曲でもあるんですけど……歌もヘタだし(笑)。でも、この曲の歌詞はこれくらい等身大のほうがいいなと思って。

──「流行りの歌はよく分からないけど」というフレーズなんて実に武井さんらしいですね。

だって「ホントにわからん」と思って(笑)。何をもってJ-POPとするのかもよくわからないし。

──でも、このアルバムはチェコ流のポップミュージックを表現できているという思いもあるでしょう?

うん、そうですね。「Beautiful Days」とかは世間に理解してもらえるのかわからないですけどね。でも、最近は若手のインディーバンドでもすごくカッコいい人たちがいっぱい出てきてるし、俺も好きなようにやろうと思って。まあ、今のインディーバンドはファンキーな感じとか、いわゆるシティポップな感じのバンドが多いから、俺にはできないと思うんですけど。

──そもそもチェコの音楽的志向はもっと海外のインディーサウンドに向いてるわけで。

八木類(G, Syn, Cho)

そう。今の日本のインディーシーンのような音楽も好きは好きなんですけど、今回アルバムを作るにあたって八木(類 / G, Syn, Cho)くんと「俺らはシティポップの流れにはどう考えても乗れないよね」って話したんですよ。その上で見出したのがサイケポップな方向性でもあるんですよね。

──八木さんと言えば、彼が作詞作曲でボーカルも務めている5曲目「Fun, Fun, Fun, Fun, Fun」はThe Beatlesへのオマージュを感じさせる曲で。

こういう曲を入れるのも面白いかなって。チェコのメンバーにこんなにガッツリThe Beatles好きな人がいるんだって思ってもらえるのもいいなと思ったんです。八木くんのソングライターとしてのキャラも見えやすくなると思うんですよね。

──一方で、これも八木さんの作詞作曲による9曲目の「Empty Your Mind」はtUnE-yArDs的なアプローチをしていたり。面白い振れ幅を持ってますよね。

ね。八木くんは、俺にはないセンスを持ってるので頼もしいですよ。

作りたい曲のイメージはありすぎるほどある

──で、やっぱり「Firework」もそうですけど、「Oh Yeah!!!!!!!」と「For You」というシングル曲がこのアルバムに存在していることはとても大きな意味があると思う。アルバムに入り込む“入り口”として。

ああ、確かにドアとして機能してほしいですよね。でもこの3曲は、俺はアルバムのドアとして機能してほしいと考えて作ったわけではないんですよ。シングル曲は今のモードと違う内容ではあったけど、無理をして作ったという感覚は全然なくて。無意識にこういう曲が最近ないから作っておこうかなという感じでできたものなんです。だから、アルバムに入ってるどの曲も横並びで見ている感じもあって。もちろん、その中で個人的なお気に入りはあるんだけど。ホントに入口になるような曲を意識して作ったらもっとコテコテのやつができると思います(笑)。

──アルバムが完成して今は精神的にスッキリしてるんですか?(※取材は8月中旬に実施)

うーん……今年は「FUJI ROCK FESTIVAL」に行けなかった悔いがかなり残っているんですよ。毎年フジロックでロックエネルギーを補充していたから、どこかでチャージしたいなと思ってますね。なので、「SUMMER SONIC」で散々遊んだら「オルゴール」の歌詞のような精神状態に戻れると思います(笑)。

──まずはインプットが必要だと。

武井優心(Vo, B)

でも、また曲を作らなきゃという危機感も日々生まれてきてるんですよ。1カ月くらい作ってないので。今は海外ドラマばっかり観てます(笑)。

──そうなんだ(笑)。サイケというキーワードも含めて、作りたい曲のイメージは明確にあるわけだしね。

そうなんですよ。作りたい曲のイメージはありすぎるほどあるので。その中でもループやサイケがキーワードになってくると思いますね。

──ライブに対してはどういうモードなんですか?

どんどんいい感じになってきましたね。最近、楽器や機材も新調していて。やっぱり出音にももっとこだわらなきゃと思ったんですよね。それで、新しくベースを買って、アンプを変えて、イヤモニにして、ローディチームも総入れ替えしたんですよ。

──そこまでいろいろ変えたんですね。

そうするとやっぱり迫力ある音が鳴らせるようになって。俺は基本的にお金を全然使わないんですね。飲み代くらいで。で、「最後に楽器を買ったのっていつだっけ?」って考えたらかなり前だったんですよ。これは全然ダメだなと思って。ミュージシャンならもっと楽器にお金をかけなきゃって。そういう意識が生まれてライブが楽しみになりました。これからはもっと演出にもこだわっていきたいですし。VJも導入したいんですよね。

──サイケ路線を推し進めるならVJは効果的でしょうね。

うん。なので、演出も豊かなものにしたくて。あとは、メンバー5人がステージ上でいかにライブを1つのショーとして意識できるかですよね。気合いをぶつけ合って成り立ってるようなバンドではないので。そこはもっとエンタテインメントを意識しないといけないと思います。

──ストレートに言えば、武井さん、明らかにプロ意識が高まってますよね。

これまでがホントにユルかったんですよ(笑)。今はお客さんに対する感謝もすごくあって。たくさんの人がライブに来てくれたのに「今日はテンションが上がらなかった」とか、そんなこと言うミュージシャンって最悪じゃないですか。前の俺はちょっとそういうところもあったんですけど、ホントにそんなことは言ってられねえなと。そういう意味でもやっとスタートラインに立てたような感じかもしれない。

Czecho No Republic
ニューアルバム「Santa Fe」 / 2015年9月9日発売 / 日本コロムビア / TRIAD
初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / COZP-1061
通常盤 [CD] / 3024円 / COCP-39172
CD収録曲
  1. Firework
  2. Heart Beat
  3. Oh Yeah!!!!!!!
  4. Beautiful Days
  5. Fun, Fun, Fun, Fun, Fun
  6. エンドルフィン
  7. クワーキーワールド
  8. イメージ
  9. Empty Your Mind
  10. For You
  11. オルゴール
初回限定盤付属DVD
  • 日比谷野音ワンマンドキュメンタリー
ワンマンツアー「『Santa Fe』リリース記念 聖なる行進TOUR」
2015年9月18日(金)北海道 cube garden
2015年9月20日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2015年9月21日(月・祝)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
2015年9月24日(木)香川県 DIME
2015年9月26日(土)福岡県 DRUM Be-1
2015年9月27日(日)熊本県 熊本B.9 V2
2015年10月2日(金)大阪府 なんばHatch
2015年10月3日(土) 広島県 広島CLUB QUATTRO
2015年10月9日(金)石川県 Kanazawa AZ
2015年10月10日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
「Santa Fe」リリース記念 聖なる行進TOUR スーパーファイナル ×一夜限りの結成5周年スペシャル
2015年10月17日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)

Czecho No Republic

武井優心(Vo, B)と山崎正太郎(Dr, Cho)を中心に2010年3月に結成。メンバーチェンジを経て、現在は武井、山崎、八木類(G, Syn, Cho)、タカハシマイ(Cho, Syn, Percussion)、砂川一黄(G)の5人で活動している。2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリース。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表した。2013年10月に2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューし、2014年7月にはセルフプロデュースのアルバム「MANTLE」をリリース。10~12月にはフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマとして「Oh Yeah!!!!!!!」が全国でオンエアされた。2015年2月、グリコ「ポッキーチョコレート」のスペースシャワーTVバージョンCMソングに提供した「For You」をシングルとしてリリース。同年7月には東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを開催し、9月に3rdアルバム「Santa Fe」を発表する。