音楽ナタリー PowerPush - Czecho No Republic
ポップに振り切った 幸せじゃないラブソング
Czecho No Republicのニューシングル「For You」が2月4日にリリースされる。高らかに鳴るホーンを取り入れ重層的に構築されたポップサウンドは幸福感に満ちていながら、タカハシマイ(Cho, Syn, Per)がロングトーンで歌うサビのメロディで一気に切なさが帯びるという味わい深いラブソングに仕上がっている。今回のインタビューでは、グリコ「ポッキーチョコレート」のスペースシャワーTVバージョンCMソングに採用されたこの曲の制作エピソードと、前作「Oh Yeah!!!!!!!」からタイアップシングルが続いている中でバンドが現在どのようなモードにあるのかをメンバー全員に語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 須田卓馬
亡き人を思う「For You」
──「For You」はポッキーのタイアップの話があってから制作したんですか?
武井優心(Vo, B) いや、「For You」のデモは今の5人編成になったばかりの頃に作っていて。でも、アレンジも決まりそうで決まらず、フワッとしたままストックされていたんですね。サウンドも俺としてはそこまで新しくないし、俺がメインで歌うといつもの感じになっちゃうなと思って。で、ポッキーのタイアップの話をいただいて、タイアップに使う曲をどうするか考えてるときに、「For You」をタカハシさんが歌えばいい感じになるんじゃないかと思い付いて。で、タカハシさんに「サビのロングトーンも得意そうだし、やってみない?」って話をして。バレンタインの時期に流れる曲だし、女性から男性へのラブソングとして聴いてもらえたらいいなと。ちょうどレーベルサイドも同じことを思っていたみたいで、じゃあ決まりだねと。
──タカハシさんはその提案をどう受け止めたんですか?
タカハシマイ(Cho, Syn, Per) デモを聴いたときに、ポップなサウンドに男性ボーカルのロングトーンが入ってるのがしっくりきていたので、最初は「武井さんが歌いなよ」って言ったんですけど(笑)。でも、ポッキーでバレンタインというタイアップの話だったので、じゃあやってみようかなと思って。音楽ニュースなどでは私のリードボーカルということが打ち出されてますけど、リードボーカルをとること自体は初めてじゃないので、そこは自然体で臨めましたね。変に気を張ってもよくないと思ったし。
──アレンジはどんなことをポイントに置いて着地させたんですか?
武井 「とりあえずリズムを跳ねさせるか」と思って。デモではベースとドラムの鳴りがベタッとしていたんですよ。でも、それを跳ねさせてみたら一気によくなって。そしたら一瞬でアレンジが決まりましたね。
──デモを作ったときのモードを思い出せますか?
武井 2年前はとにかくポップで明るい曲を作るのが好きだったので。ブラスもデモの段階から入っていて、歌詞も込みで最初はもっとメルヘンな感じでしたね。動物とか登場しちゃうような(笑)。
八木類(G, Cho, Syn) デモの段階でブラスもシンセで入ってたんですけど、レコーディングのときに武井さんが生の音で入れたいって言い出して。
砂川一黄(G) 歌詞も最初はホントにハッピーなムード一色という感じだったんですけど、もうちょっと深みを出したほうがいいんじゃないかって話になって。
──たしかに幸福感もあるんだけど、それと同時に切ないニュアンスも感じられますよね。「君」という存在はもうこの世にいないんじゃないかという。
武井 まさにそうですね。歌詞を書き直したときに、亡き人を思うというテーマが出てきて。あとは、タカハシさんと俺の2人で歌うという前提がある中で、デュエットっぽくしたくなかったんです。「僕はこう思う」「私はこう思う」みたいな会話っぽい歌詞にするのはやめようと。それを意識してたらめっちゃ時間がかかって。作詞は(山崎)正太郎にかなり手伝ってもらいました。
山崎正太郎(Dr) ラブソングでサウンドもポップでキャッチーだからこそ、「僕たち幸せです」みたいな曲にするのはちょっと違うなと思って。そこに含みの要素として、さっき話に出た“亡き恋人を思う”みたいなテーマを設けたらいいんじゃないかと思ったんです。「You」という対象を聴き手それぞれが想像できるような。そのほうが万人に響く曲になると思ったし。
タカハシ 最後のどんでん返しじゃないけど、幸せなラブソングと思いきや「君といたかった」という部分でハッとさせられるので。最後まで聴いてもらって初めてこの曲のストーリーを伝えられるものになってよかったなと思いました。歌入れのときは、私は感情が声に出やすいので歌が出しゃばらないように気を付けましたね。
理想を具現化するのはアルバムで
──「ドラゴンボール改」のエンディングテーマに採用された「Oh Yeah!!!!!!!」に続いて大きなタイアップシングルになるんですけど、ここで俗っぽく聞こえないのがチェコの音楽性の強みだなと改めて思ったんですよね。洗練されたポップネスを漂白せずにリスナーの間口を広げてるというか。そのあたりはどう思いますか?
武井 うーん、正直考えてもわからないですね。最近は特にそういうことはあまり考えないようにしてるのかもしれないです。逆にポップを追求することはずっとやってきたことなので、そろそろ違うことも勉強したいなと思ってるんですよ。ポップであることは前提ですけど、このタイミングを機に違う方向も探りたいなって。「Oh Yeah!!!!!!!」もライブ映えする曲ではあるんですけど、CDのミックスやマスタリングにちょっと納得いってない部分もあって。もうちょっと立体的な音にできたんじゃないかと思うんですよね。
──タイアップだからこそ、そういう音の仕上がりになった部分もあったんだろうし。
武井 そう。ライブではいいんだけど、ちょっと惜しいなって思ってるんです。だから、「For You」のミックスやマスタリングでは「Oh Yeah!!!!!!!」で至らなかった点を改善できたらいいなと思ったし。あと、まだはっきりしたことは何も言えないですけど、シングルを2枚リリースしてるんだから、今後明らかにアルバムを録る流れになるじゃないですか(笑)。そこでしっかり反映させたいなと思ってるんですよね。「For You」に関してはとにかくいろんな人が聴けるポップソングとして完成させたいと思ったので、音的な理想を具現化するのはアルバムになるのかなって。
八木 この2つのシングルはタイアップということもあるし、時間があまりない中での制作だったので。バンドとしては、どちらかと言うとスピンオフ的な意識がどこかにあって。ホントの流れはアルバムで見せられると思うんですよ。シングルだから、もちろんバンドの看板にはなるんだけど。
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- ニューシングル「For You」 / 2015年2月4日発売 / 日本コロムビア
- CD+DVD / 1944円 / COZA-1007~8
- CD / 540円 / COCA-16968
CD収録曲
- For You
- ANARCHY IN THE U.K.
DVD収録内容
「MANTLE TOUR ~2014年宇宙の旅~」 ツアーファイナルより
- Amazing Parade
- Crazy Crazy Love
- Summer Love
- JOB!
- Festival
- Hello,My Friend Sophie
- ネバーランド
- MUSIC
- No Way
- Melody
- 2014年宇宙の旅
- Oh Yeah!!!!!!!
- アイボリー
- Oh Yeah!!!!!!! TOUR
- 2015年2月6日(金)
東京都 TSUTAYA O-EAST - 2015年2月12日(木)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO - 2015年2月13日(金)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO SOLD OUT
Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)
武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加えた4人編成となり、2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリースする。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表。2012年8月に吉田がバンドを脱退し、2013年1月にサポートメンバーだったタカハシマイ(Cho, Syn, Per)、砂川一黄(G, Cho)が正式メンバーとして加入した。同年10月に2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューし、2014年7月にはセルフプロデュースのニューアルバム「MANTLE」をリリース。10~12月にはフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマとして「Oh Yeah!!!!!!!」がオンエアされた。2015年2月、グリコ「ポッキーチョコレート」のスペースシャワーTVバージョンCMソングに提供した「For You」をシングルリリースする。