ナタリー PowerPush - Czecho No Republic
5人が鳴らすユートピア
砂川&タカハシから見たチェコ
──砂川さんとタカハシさんにはチェコというバンドはどう映っていたんですか?
砂川 単純に僕はファンだったんですよ、CDを家で聴いてたくらい。ライブを初めて観たときの印象はハッピーなバンドだけど、フワッとしてるなという感じで。それはそれでよかったんだけど、今中に入ってみて思うのは、バンドとして1本芯が通ったなってことなんですよね。サポートとして関わるようになった当初はギターに徹していたところがあったんです。でも、みんなが「もっと自分を出していいよ。本来はもっと明るい人なんだから」って言ってくれて。それで素の自分を出すようになって、どんどんエスカレートして今に至るみたいな。前のバンドでは今とは全然違うキャラだったんですよ、ライブ中も下を向いて顔を見せないみたいな。MCもしゃべらなかったし。
──ミュージシャンとして生まれ変わったみたいな感覚もあるんですか?
砂川 けっこうそうですね。もともと根は明るかったんだけど、それを見せてなかったので。素の部分をチェコに引き出してもらったところはありますね。
──タカハシさんは?
タカハシ 私ももともとバンドを組んでいて。そのバンドは私が18歳のときに解散して、しばらく1人で歌ったりしてたんです。武井さんとは前から知り合いで、「コーラスを探してるんだけど、どう?」っていうところからチェコのサポートをやらせてもらうことになって。キーボードはチェコと関わるようになってから始めました。チェコのライブは結成当初からよく観に行かせてもらっていたんですけど、そのときの印象は……なんだろうな?
武井 なんじゃい! ドキドキするわ!(笑)
タカハシ なんかこう、自分の子どもの音楽発表会を見守るみたいな感じがあって(笑)。4人の時代は特にアディムのキャラクターもあいまって、かわいいなって思ってましたね。
砂川 母性本能をくすぐる感じはわかるな。
タカハシ いいバンドだなと思ってたし、人気も出そうだなって思いながら観てたんですけど。でも、アディムが脱退して女性の私が加入するってなったときに心配もあったんですよ。
──それはどういう種類の心配だったんですか?
タカハシ 認めてもらえるかな?っていう。
──リスナーに?
タカハシ そうです。でも、そんなこと気にしてやってたら、ほかのメンバーにもお客さんにも失礼だなと思うようになって。最初はアディムに負けないようにしようという思いでやってたんですけど、今はもっとナチュラルにこのバンドで音楽をやることを楽しもうという姿勢でいますね。
引き算の曲作り
──今回、メジャーデビュー盤であり、既発曲の新録と純粋な新曲が混在するフルアルバムを制作するという意味では、バンドの音楽的なアイデンティティを再確認する機会でもあったと思うんですけど。制作にあたってどんなことを考えましたか?
武井 なんだろうな? やっぱり自分の趣味としては、カラフルで楽しい音楽をやりたいから。細かいことを言えば、サビをパワーコードで埋めるとか、そういうことはしたくなくて。全パートの音の鳴りにこだわりを持って、アイデアが思い付かないからテキトーなフレーズをはめていったりするのはヤなので。で、最近になって引き算を意識して曲作りするようになったんです。八木さんが「引くことも大事だと思う」っていう助言をくれて。まずは完全な設計図を作ったうえで引き算していく。その方法論が今のチェコにとって大事になってますね。
──武井さんの歌は、子供心をくすぐるような陽性の魅力があって。ソングライティングのルーツはどういうものなんですか?
武井 ソングライティングの部分では、いろんな洋楽を聴いてきて、テンションが上がって「うわー!」って興奮した状態でギターを弾きながら作るっていう流れが基本的にあって。そこから楽しいオカズをいっぱい考えたり。子供心をくすぐるみたいなことはたまに言われますね。ワードのチョイスとかもそう思わせる要因になってると思うんですけど。あんまり生々しいことは歌わないので。やれ童貞だ、処女だとか。昔からディズニーランドとか大好きなんですよね、休日もフラッと行きたくなるくらい。
──日常にもファンタジーを求めてるというか。
武井 ああ、そうですね。そういう場所に身を置いておきたいという気持ちがあって。絵本に出てくるような海外の街とかにも行きたいし。曲にそういう願望が出てるんでしょうね。ほら、そういう曲を作ればPV撮影でも楽しいところに連れていってもらえるかもしれないじゃないですか。
タカハシ そこかい!(笑)
武井 いや、それもいいじゃん。だから、Czecho No Republicというバンド名にしてよかったなと思っていて。いつかチェコに行けるかもしれないし。でも、歌に関してはいまだに悩みの種なんですけど。
──それはどういう部分で?
武井 曲を作るのは好きなんですけど、もともとボーカル志向ではないので。このバンドを組むときもボーカルを募集してたくらいなんですよ。アディムがいた4人時代も1回下北沢のマクドナルドで言ったことあるんですよね。「ガチでボーカル入れたいんだけど!」って。テーブルにBeckの写真をボンって置いて、「こんなやついねえかな!?」って(笑)。
──まあ、なかなかいないよね(笑)。
武井 みんなにも「いないでしょー!」って言われて。アディムとかは俺に「ちょっと似てるから大丈夫だよ!」って言うから、「嘘つけ、おまえおだてんのか!」って。
一同 (笑)。
──僕は武井さんの中性的な声質、いいと思うけど。曲のテイストとすごく合ってるじゃないですか。
武井 いやあ、もっと歌がうまい人はいっぱいいるよなって思うんで。
──技巧的なこと言えばそうだと思うけど、大事なのはそこじゃないでしょう。
武井 でも、いつも歌入れのときヘコむんですよ。スタジオで録り終わった声を自分で聴いたときに「子供みたいだな!」と思って。もうちょっとシブい声がいいんですけどね。
──ないものねだりですよね。
武井 八木さんの声はローが効いてるから、ユニゾンしてもらうときはガキっぽいところを打ち消してもらってるんですけど。タカハシさんも歌がうまいし、今後はどんどん歌ってほしいなって。でも、あんまり消極的だと叩かれるかな……いや、歌いたいですよ!
一同 (笑)。
砂川 でも端から見ていて、最近はちゃんと自分がボーカリストだという自覚を持ってるんだなって思う。いつも練習してるし。
武井 恥をかきたくないんで。
タカハシ すっごいうまくなったよね。
武井 もういいよ!(笑)
収録曲
- ネバーランド
- MUSIC
- Call Her
- レインボー
- Don't Cry, Forest Boy
- 1人のワルツ
- リッパー
- 絵本の庭
- 幽霊船
- ダイナソー
- 国境
- ショートバケーション
- エターナル
Czecho No Republic(ちぇこのーりぱぶりっく)
武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加えた4人編成となり、2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリースする。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表。2012年8月に吉田がバンドを脱退し、2013年1月にサポートメンバーだったタカハシマイ(Cho, Syn, G, Per)、砂川一黄(G, Cho)が正式メンバーとして加入した。同年10月30日、2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たす。