ナタリー PowerPush - Czecho No Republic

5人が鳴らすユートピア

Czecho No Republicのメジャーデビューアルバム「NEVERLAND」は、彼らの持ち味である“ユートピア”にトリップするようなポップミュージックが新たな武器を得たことを証明する充実作だ。今年1月に砂川一黄(G, Cho)とタカハシマイ(Cho, Syn, G, Per)が加入。5人体制となったバンドに起こった変化とは? そして、5つの新曲と現メンバーでブラッシュアップしたインディーズ時代の代表曲で構成された本作はどのようにして完成したのか? メンバー全員に語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一 撮影 / 上山陽介

楽しさを外に向けて発信するアルバム

Czecho No Republic

──今、バンドがすごくいい状態にあることがアルバム全体から伝わってきます。結成当初からユートピアにトリップするようなポップミュージックを鳴らしてきたバンドですけど、特に新曲群はこの5人で音楽を鳴らしてる幸福感がそのまま楽曲化されてるなって。

武井優心(Vo, B) うんうん、そう思います。

──過去曲も現メンバーでブラッシュアップすることで、バンドの核と現在地を立体的に提示できるメジャーデビューアルバムになりましたね。

武井優心(Vo, B)

武井 今、言っていただいたことがすべてみたいな感じなんですけど。ホントに今、音楽が楽しくて。アルバムタイトルにもなってる「ネバーランド」っていう曲はピーター・パンのネバーランドじゃなくて、ユートピア的な視点で書いていて。これまでサポートをやってくれていた砂川くんとタカハシさんが今年1月に正式メンバーになったんですけど、このタイミングで5人で音作りを始められたのも楽しかったし、いろんな試行錯誤もありましたね。今までのレコーディングで一番時間をかけてしっかり臨めたのもよかったです。

タカハシ 私は正式にメンバーになって初めてのアルバムということで、新しい挑戦がいっぱいありました。コーラスとかは八木類(G, Cho, Syn)さんがいろんなアイデアを出してくれて。みんなで曲を作り上げていく作業がホントに面白かったですね。

八木 新曲はバリエーションもあってリスナーに「おっ!」と思わせるものができたと思います。だから、最初に言ってもらったことはすごくうれしいですね。ここからまた新しいことをどんどんやっていきたいと思うし。今までは自分たちが楽しかったらそれでいいやみたいな感覚が強かったんですけど、今はその楽しさを外に向けて発信することができてるというか。

山崎正太郎(Dr, Cho) 5人になって表現力がかなり増したと思うんですよね。砂川さんが前に組んでいたバンド(caroline rocks)はチェコの音楽性とは全然違うし、違う畑にいる人だったんですけど。でも、だからこそバンドに新しい風が入ったなと思うんですよね。

砂川 そう言ってもらえるのはありがたいですけど、今作はアイゴン(會田茂一)さん、いしわたり(淳治)さん、片寄(明人)さんという3人のプロデューサーをお迎えしたことも大きいと思うんですよね。1人ひとりタイプが全然違うプロデューサーで、今までバンドがやったことない音作りのアイデアもたくさんいただいて。それはすごく刺激的な経験でしたね。もちろん、僕とタカハシさんが正式メンバーになって初めてのフルアルバムという面で新しくなったところも楽しんでもらえたらと思います。

誰もこのバンドに期待してないだろうなと思っていた

──結成時からのメンバーである武井さんと山崎さんとしては、この5人になってやっとバンドが固まったなという思いがありますか?

山崎正太郎(Dr, Cho)

武井 うん、パーツがそろった感は確かにありますね。ないって言ったらウケますけど(笑)。

山崎 ただ、(吉田)アディム(2012年8月に脱退)がいた4人のときもあれはあれでよかったと思うんですけど、この5人もまた違う感じでいいというか。やっぱりバンドが開けたなとは思いますね。

武井 さっきも話に出てたけど、今まではポップであまり気合いの入ってない音楽をやって、自分たちが楽しければいいという感じがあったので。

──砂川さんとタカハシさんが加入して何が一番変わりましたか?

武井 会話が増えましたね。

タカハシ あはははは(笑)。最初の頃はどんな感じだったの?

八木類(G, Syn, Cho)

武井 前は会話もなくはないけど、音楽の話はそんなにしなかった。当時は生活のすべてをバンドにつぎ込んでいる感じは希薄だったと思う。若干ネガティブな言い方になってしまうけど、誰もこのバンドに期待してないだろうなと思っていたところもあったし。ライブが近くなると練習もがんばるし、家で曲を作ってるときは楽しいけど、四六時中バンドに没頭してるわけではなかったから。今は5人になって楽しく、真面目にバンドをやれてるのはデカいですよね。

八木 ライブのパフォーマンスにしても2人(砂川、タカハシ)は明るいので。メンバーが3人だったり4人のときは「ヘーイ!」みたいな感じで演奏していても、どこか内向きだったというか。さらに2人は音楽に対して真摯な姿勢をもっていることもあって、バンド全体が「ちゃんとやろう!」という雰囲気になったんですよね。

ニューアルバム「NEVERLAND」 / 2013年10月30日発売 / 2940円 / 日本コロムビア / COCP-38214
ニューアルバム「NEVERLAND」
収録曲
  1. ネバーランド
  2. MUSIC
  3. Call Her
  4. レインボー
  5. Don't Cry, Forest Boy
  6. 1人のワルツ
  7. リッパー
  8. 絵本の庭
  9. 幽霊船
  10. ダイナソー
  11. 国境
  12. ショートバケーション
  13. エターナル
Czecho No Republic(ちぇこのーりぱぶりっく)

Czecho No Republic

武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加えた4人編成となり、2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリースする。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表。2012年8月に吉田がバンドを脱退し、2013年1月にサポートメンバーだったタカハシマイ(Cho, Syn, G, Per)、砂川一黄(G, Cho)が正式メンバーとして加入した。同年10月30日、2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たす。