ナタリー PowerPush - Chicago Poodle

新たな気持ち、新たな挑戦「3.0」

スリーピースのピアノバンド・Chicago Poodleが約2年半ぶりのオリジナルアルバム「3.0」を完成させた。今作は、よりシンプルになったバンドサウンドと、それによってストレートに響く歌の力に胸をつかまれる意欲作。制作中は、全曲の作曲を手がける花沢耕太(Vo, Piano)と、作詞担当の山口教仁(Dr)、辻本健司(B)のキャッチボールもかつてないほど密に行われたという。5月5日から今作を引っさげたリリースツアーもスタートする3人に、じっくりと話を聞いた。

取材・文 / 川倉由起子

 
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ベストを出して自分たちを客観的に見つめ直せた

──「3.0」は約2年半ぶりのアルバムとなりましたね。2011年には初のベストアルバム「HISTORY I」をリリースされましたが、ベストを出したことで今作の制作におけるモードや意識に変化はありましたか?

花沢耕太(Vo, Piano) ベストを作ったことで、自分たちがこれまでやってきたことをさらに客観的に見つめ直すことができたのは大きかったです。インディーズ時代も含め10年以上の歴史を振り返って、次のアルバムではこういう曲を作りたいっていうのが各々浮かんだり、僕の場合は自分の歌を見つめ直して自問自答したりもしました。だから今回のアルバムは、またイチから新たな気持ちで出発する作品になったのかなって。

山口教仁(Dr) 僕も花沢と同じです。ただ、ベスト出してひと区切り付けたあとも「コンスタントにいい曲を生み出していこう」っていう姿勢はまったく変わらなくて。僕は今回、今までよりもっと具体的な歌詞のディスカッションを花沢としたり、それを受けて何度も書き直したりしました。

辻本健司(B) ベストアルバムにはだいぶ初期の曲も入ってて、僕らはいつもそのときの一番いいものを求めて曲を作ってるんですけど、順を追って聴くと曲がちょっとずつ変化してるのも再認識できて。だからどんなときもとにかく、今生まれるメロディ、今できるバンドの演奏、今書ける歌詞の3つで作っていけば、それをもし10年後に聴いても「ああ、あの頃の音はこんなんやったな」って振り返れるんじゃないかなと。だから僕はベストを出して、いい意味でどこか開き直ったような気持ちになれました。

「ともし灯」は自分の新たな部分を引き出してくれた曲

──ベストアルバムの発売以降はどんな活動をしていたんですか?

花沢 制作とライブ活動を並行してやってましたね。今回のアルバムだと、「More Soul Train」なんかは早い段階からライブでやってて。

辻本 レコーディングする前からやってましたね。

──「More Soul Train」は、歌詞がすごく面白かったです。冒頭が「『ノンストップで理想郷へとgo!』 そんな列車があったらどう?」で始まるので、いろいろ想像をかき立てられるなって。

山口 これは僕(の作詞)なんですけど、ベストを出して自分の歌詞を見つめ直して、“いかにも歌詞っぽい言い回し”を排除した面があるんですよ。全体的にも今回は詞じゃなくて本当の言葉というか、普段話すような口調を心がけましたね。「More Soul Train」はメロディがけっこう動くので言葉を乗せるのに苦労したんですけど、その中でもわりとうまいこと言葉遊びができたのかなって。

──ライブでの反応は、どんな感じですか?

花沢耕太(Vo, Piano)

花沢 披露して間もない頃でも、お客さんが曲に合わせて手拍子をしてくれて。それは作ってる段階でイメージしてて、「これは盛り上がるゾーンでやったらいいかな」とか考えてました。ただ、アルバムの中ではこれは早めに聴かせたいっていう思いが3人共通であったので2曲目に持ってきました。

──今作は曲順もけっこう練られてるなって印象があるんですけど、1曲目の「ともし灯」がいきなり3拍子のナンバーだったのも印象的でした。

山口 これはあえて、と言いますか(笑)。ピアノの3拍子から始まるこの曲でスタートするのがピアノバンドとしてはいいんじゃないかって、3人で話し合って決めたんです。

──楽曲全体から醸し出されるどこかレトロなムードも魅力的でした。

花沢 ジブリの世界観じゃないですけど、日本よりはどちらかというとヨーロッパの街並みを彷彿とさせるようなメロディにしたかったんです。

山口 「ともし灯」の歌詞は花沢とディスカッションを重ね、何度も書き直したんですが、「もっとヨーロッパを思い浮かべられるような」とか「もっと切なくロマンチックになれへん?」っていうめちゃくちゃ難しい注文が花沢から来て(笑)。苦労はしたけど、自分の新たな部分を引き出してくれた曲になったのかなって思います。やっぱり作曲者の花沢にしかわからないイメージがあるので、こういうやりとりは今後も積極的にしていきたいですね。

リズムと言葉遊びを楽しんでほしい「退化論」

──バラエティに富んだ全12曲の中で、特にインパクトがあったのは「退化論」。打ち込みの音が入っていて、ピアノバンドのChicago Poodleにとっては大きな挑戦だったのかなと。

山口 そうですね。ほかの楽曲が生楽器なぶん、打ち込みの「退化論」はアルバムの中の飛び道具というか、スパイスになればいいかなって。

花沢 歌も洋楽テイストというか、日本語と英語のちゃんぽんをサビに入れて、それをすごく早口で歌ったら面白いんじゃないかなって思ったんです。リズムと言葉遊びを楽しんでほしい1曲になりました。

──歌詞を書いた辻本さんは、けっこう苦労されたのでは?

辻本 そうですね。作詞する前に、花沢から「内容うんぬんよりカッコよく。しかも内容はエロい感じで、今までの辻本にないテイストで」って言われて。悩みに悩んでこうなりました(笑)。

──すごく突き抜けた、強い言葉が並ぶ歌詞ですよね。

辻本 人間って自分の思うことが言えなかったり、やりたいことができなかったり、我慢することも多いじゃないですか。そこへいくと、動物ってすごく本能に忠実に生きてる気がして。人間も自分の気持ちを前面にさらけ出していいんじゃない?って気持ちが僕の中にあったので、結果こういう歌詞になりました。

ニューアルバム「3.0」 / 2013年4月24日発売 / 2500円 / GIZA / GZCA-5252
ニューアルバム「3.0」
収録曲
  1. ともし灯
  2. More Soul Train
  3. 煌ランナー
  4. タカラモノ
  5. カクテルスケッチ
  6. ミスターベイベー
  7. おやすみ(仮)
  8. 雨のち太陽
  9. 退化論
  10. 1225 ~君がいたクリスマス~ ver3.0
  11. ツヨムシ
  12. ありふれた今日の特別な場面
Chicago Poodle(しかごぷーどる)

花沢耕太(Vo, Piano)、山口教仁(Dr)、辻本健司(B)の3人編成バンド。花沢が作曲、作詞を山口と辻本が手がける制作スタイル。1980年代の洋楽ポップスのエッセンスが感じられる懐かしくも切ないメロディと、リズム隊が織りなす都会的なアンサンブルで注目を集める。2009年3月にデビューシングル「ODYSSEY」、同年11月に1stアルバム「僕旅」をリリース。その後もコンスタントに作品を発表し、2011年11月には活動の集大成となるベストアルバム「HISTORY I」をリリースした。2013年4月24日、約2年半ぶりのオリジナルアルバム「3.0」を発売する。