ナタリー PowerPush - Chicago Poodle
1stフルアルバム「僕旅」完成 ピアノ3ピースが鳴らす美メロの秘密
自分が今音楽をやってるのは、マイケルを聴いてきたから
──9曲目の「スーパースター」はマイケル・ジャクソンへのオマージュとして作った曲ですか?
花沢 はい。マイケルは僕のルーツなんです。ずっと聴いていたし、心のどこかで「自分がいま音楽をやってるのは、絶対マイケルを聴いてきたから」という想いがあって。だから、絶対この時期にこの曲を出したかったんです。
──でも、作詞はご本人ではなく辻本さん。
花沢 言葉数が相当多いので、自分で書いたら5年かかるわって(笑)。僕の思い入れが強かっただけに、辻本くんはかなり苦労したと思います。
辻本 はい、すごく難航しました(笑)。最初は恋愛の歌詞を書いてたんですけど、花沢に「マイケル的な要素を入れて」と言われ、いくつかマイケルに関する単語とか言葉をもらって、それを広げていった感じですね。
──あと、この曲はサウンドも面白いですね。
花沢 アレンジに関しては結構こだわりました。例えばベースで「BAD」のフレーズを入れたり、ピアノで「THRILLER」のメロを入れてみたり。全体のノリとしても、マイケルの曲で印象的なギターのカッティングや多重コーラスなども入れて、盛りだくさんな感じにしました。
リスナーの耳にどこか“引っかかる”メロディにしたい
──山口さんが担当した歌詞の中で苦戦したものというと?
山口 2ndシングルでもある「ナツメロ」ですね。これはサビの言葉数が多くて、できたものを1回花沢に歌ってもらったら、サビの頭の音抜けが悪いということで、急きょ「“か”に変えてくれ」と。
──割と具体的な注文なんですね。
花沢 はい。「カモンカモン」でもいいし「カランコロン」でもいいから、とりあえず最初の音は“か”にしてくれって言ったんです。
山口 で、最終的に「駆け抜ける」になったんですが、とにかく言葉数が多いのにデモのデタラメ英語の響きも重視してくれって言われて頭抱えました(笑)。
──作詞のお2人は結構頭を抱えてますね(笑)。
山口 なんていうか、花沢のメロディが特徴的なんですよ。リズムが普通のJ-POPと少し違っていて、言葉が裏打ちのリズムで入ってくるんです。そこに日本語を乗せるのはしんどい作業なんですが……苦労した分、完成したときの感動はデカイですね。
花沢 そういうメロディは、僕の中では自然にできてしまうんです。ピアノで適当にコード進行を考えながら作ってるんですが、どこか“引っかかりたい”って思うんです。街で僕らの音楽が鳴ってても、どこかリスナーの耳に引っかかるようにしたいなって思いが強くて。だから例えば符割りが前のフレーズに食って入ってたりとか、膨大な言葉を詰め込んだりとか、すごい急に音を飛ばしたりとかっていう発想になる。聴いた人の耳にすんなり流したくなくて、“アレ?”って引っかかる感じが欲しいと思って追求してたら、こうなったんです。
──そうなったキッカケや理由は?
花沢 やっぱりそれも洋楽を聴いてきた影響ですね。例えばスティービー・ワンダーの曲って、僕の中ですごく無邪気というか、自由で枠にとらわれてない感じがあって。Aメロ~Bメロ~サビっていうのにもとらわれてないし、とりあえず白いキャンバスに向かって楽しみながらメチャクチャやってるっていう(笑)。それがすごい衝撃的で、自分もそういう音楽が作りたいなって思ったんです。
カップリングであれアルバムの曲であれ、すべて全力投球で
──ちなみに、Chicago Poodleのような、ピアニストがボーカルをとるグループって、現在のJ-POPシーンだと少し珍しいですよね。そういう自分たちの立ち位置についてはどう感じているんですか?
花沢 僕らは基本的に、CDでは(メンバーにいない)ギターが鳴っててもいいと思うし、そこまでピアノにこだわってるわけじゃなくて。その曲その曲で絶対活かせる楽器があると思うし、どちらかと言えばそこを重視していきたいと考えています。僕はピアノしか弾けないんで、どの曲でも弾いてるんですけど、とりあえずいいものを作りたい、何回も聴けるものを作りたいと思うから、ブラスが入っててもギターのカッティングが入っててもいいんです。
──なるほど。では最後に改めて、全11曲いろいろなジャンルが揃ったアルバムの手応えを。
花沢 Chicago Poodleらしさが存分に出せたと思います。今の僕らの知識やレコーディングの仕方など、培ってきたものが全部出せたかなと。
辻本 花沢が常々言ってることなんですけど、シングルのカップリングであれアルバムの曲であれ、すべて全力投球で。それこそ全部シングルぐらいの気持ちで作った自信作です。
──アルバムリリース後には初の全国ワンマンツアーも始まりますね。
花沢 こうして手塩にかけて育てた思い入れのあるアルバムを引っさげて回るのが、とにかく楽しみです。ワンマンツアーが初なので、各会場でChicago Poodleのすべてがわかるものにしたいと思うし、「僕旅」の楽曲は反応がやっぱり気になりますね。
山口 反応は地方によって絶対差があると思うんです。でもその中でいかに自分たちらしいパフォーマンスができるかがカギ。楽しみにしてライブに来てくれる人たちの期待に応えられるよう、しっかりやりたいです。
辻本 楽しみも不安もありますけど、どんな状況であれ練習しまくって、いいライブをするしかないと思ってます。
Chicago Poodle(しかごぷーどる)
2000年4月結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、花沢耕太(Vo, Pf)、山口教仁(Dr)、辻本健司(B)の3人編成に固まる。全曲を花沢が作曲、作詞を山口と辻本が手がける制作スタイル。1980年代の洋楽ポップスのエッセンスを感じられる、懐かしくも切ないメロディと、リズム隊が織りなす都会的なアンサンブルで注目を集める。2009年3月にデビューシングル「ODYSSEY」をリリース。その後7月に2ndシングル「ナツメロ」、10月に3rdシングル「さよならベイベー」を発売し、いずれも全国のFM局にてパワープレイを獲得。現在着実に支持を獲得してきている。