新しいことが始まる感じをアートワークで示したい

──今日は、まず2人のアートワークに対するこだわりについて訊かせてください。新生チャットモンチーは、これまでにも増して2人の能動的な意志がアートワークに注がれている印象があります。

福岡晃子　正直、デビュー当初は音楽だけやっていればいいと思っていたし（笑）、アートワークがそこまで重要なものだとは思っていなかったんですよね。なので、自分たちでアートワークを意識するようになったのは、デビューしてから徐々にという感じでした。スタッフやクリエイターの皆さんのアイデアを受けて、だんだんこういうことができるんだなってわかってきて、3人で意見を出し合うことが増えていきましたね。今は2人になって、これまでとは全然違う感覚もあって。

──フレッシュなアイデアが湧く？

福岡　そうですね。スリーピース時代はできないことのほうが多かったんですよ。スリーピースというバランスの中で「これはチャットらしくない」って思うことはやらないようにしてたところもあったし。でも、ツーピースだとこれまでと似たようなこともできるし、まったく違うこともできるんですよね。

──サウンドのアプローチと同様に。

福岡　そうそう。

──前回のインタビューで、橋本さんは、福岡さんにドラムをやりたいと告げられたときに「すごくワクワクして、曲やビデオクリップのいろんなイメージが浮かんだ」と言っていて。

橋本絵莉子　うんうん、そうでしたね。

福岡　あのときのえっちゃんは、3曲分くらいのビデオクリップのアイデアを出してきて（笑）。「こんなんもできる、あんなんもできる！」って。アーティスト写真のアイデアもいろいろ考えてたよね？

橋本　ふふふふ。そうだったね。

──ちなみにどういうアイデアを？

橋本　ビデオクリップだったら、頭にCCDカメラを付けた私とあっこちゃんが向かい合っていて、お互いの視線をそのまま映像にするとか。

──あ、面白そうですね。

橋本　あとは、自転車を押してるとか。

──ん？ どういうことですか？（笑）

福岡　あははははは。

橋本　自分でもよくわからないんですけど（笑）、自転車を2人で支えている画が浮かんだり。あとは、赤ちゃんを背負って演奏しているとか。

福岡　えっちゃんならではのアイデアです（笑）。

──ヤバい、それ観たい（笑）。

橋本　女性ならでは、という感じで（笑）。リアリティがあまりないからこそ面白いんじゃないかと。そんなことをいろいろ考えてましたねえ。スリーピースのイメージを守ろうとする頭が一気になくなったから、どんどんアイデアが浮かんだと思うんですよね。

福岡　今は自分たちの中から出てくるアイデアをなるべく大切にしようという考え方なので。なんでもやりたい気分ですね。

──ツーピースになって最初のアーティスト写真の展開も、見事にリスナーの驚きと期待感を煽るものでした。金髪の2人が並び立つ写真に始まり、最後は黒髪の2人の演奏ショットを見せるという。そのアー写で初めて福岡さんがドラムを叩いている姿を見せたのも大きなインパクトがありました。

福岡　あれは2人とスタッフですごく考えました。「おおっ、これからチャットはどうなっていくんだ!?」って思わせたかったから。1人脱退したという喪失感ではなく 、ここからまた新しいことが始まっていく感じをちゃんと示したかったんですよね。