音楽ナタリー Power Push - チャラン・ポ・ランタン
入門にも最適! チャランポを紐解く7つの鍵(キーワード)最新版
チャラン・ポ・ランタンが紡ぐ音楽の基盤は、小春の哀愁匂わすアコーディオンと、もものこぶしを効かせた唄。オリジナル楽曲はすべて小春が作詞作曲アレンジを手がけている。アコーディオン奏者兼ソングライターとして、ボーカルとして、お互いの変化を問うとこんな答えが返ってきた。
小春 ももは声がずいぶん変わったよね。
もも たぶん、すごい使ってるからじゃないですかね。
小春 あー、まあね。年々、聴かせたい音域みたいなのが変わってる気はする。
──小春さんはそういうところも考慮して作曲しているんですか。
小春 っていうときもあるかな。聴かせたい音域がちょっと低音のほうに下がってきてるんだよ。でも音域は狭くならずに下にズレてるだけ。これでどんどん狭くなっちゃったら困るけど、幅的には変わらないんで。古い曲で、前とは全然違う響きになっちゃったから変えたいなって思うこともある。
──逆にももさんは、小春さんを見て変わったなって思うところは?
もも 3、4年前と比べて、全体的にすごく丸くなったと思いますね。関わる人が増えて、自分の好きでやっていることに対して面白がってくれる人が周りにたくさん集まってくるようになってから、変わっていったように思います。閉ざしてた扉を開いていっているみたいな。頑なというか、もっと鋭かったので。引きこもりっていう言葉が一般的になる前から引きこもってたもんね。家の押し入れに(笑)。その頃の小春のことは「私の宇宙」(アルバム「テアトル・テアトル」収録)って曲を聴くとわかるかも。
小春 まあ、怒んなくなったと思うよ。昔はステージの上でけっこうマジギレしてたんで。あはは(笑)。
もも バンド活動に関しても、自分で曲を作って、メンバーにスコア書いて渡してその通りにやってもらうっていう形式は変わってないんですけど、「もっとこうしたほうがいいんじゃない」っていう意見も取り入れるようになったというか。自分はこれがやりたいんだよって感じの、なんだよ文句あんのかよみたいなスタイルだったと思うんですけど、それがよりバンド感のある形になったと思います。依然としてバンドのリーダーだし、小春のやりたい曲をやってるわけですけど、その中でも個々のよさをより引き出そうと努力して、そうやって耳を傾けるようになってからアコーディオンの演奏も変わってきたように感じます。あと、2月から一緒にツアーに出るカンカンバルカンともライブ後の打ち上げをやるようになりました。今までは小春はライブ終わったらすぐホテルにこもる感じだったんですけど、それもあって最近ではバンド感がすごく出てきましたね。フェスとか出ても7人でステージに立つと負ける気しないですね。
サーカスや大道芸のエッセンスを取り入れた摩訶不思議なチャランポの世界観は、2014年7月にメジャーデビューしてからも健在。むしろ、私立恵比寿中学やタッキー&翼への楽曲提供、チュートリアルのライブの舞台音楽制作、ワンマンライブに東京スカパラダイスオーケストラのメンバーがゲスト参加するなど、姉妹を取り巻く状況は徐々に大きくなっている。
──メジャーデビューするときから一貫して、チャランポのスタイルみたいなものは変わらないと言っていますよね(参照:チャラン・ポ・ランタン「忘れかけてた物語」インタビュー)。
もも でも、例えば「テイラーになれないよ」のミュージックビデオを発表したタイミングとか、節々でいろんなこと言われてきましたね。「チャラン・ポ・ランタンも昔はああだったけど、メジャーデビューして大人にいろんなこと言われて変わったな」みたいな。SNSとかでそういう言葉で見ると「いやいや、そんなわけないじゃん」って思うんですけど。もしホントに誰かに言われたように楽曲作ってるとしたら……。
小春 たぶん、言われたことそのまんまTwitterに書くね。
もも でもまあ、3、4年前に「テイラーになれないよ」みたいな楽曲ができてたかっていったら絶対生まれてないんですけど。
小春 もしかしたら、「メジャーデビューしてから変わったね」って思われるのって、実際はその人自体が変わっていってるってことなのかな。
もも うん。だから、変わってはいるんですよ。状況とか、人との出会いとか、プライベートの出来事とか、いろんなことが重なって、自分自身も変わっていって、作る音楽も変わっていくのは事実。もちろん中には、やりたくないことを言われた通りやってる人もいるかもしれないですけど、私たちは姉妹でやってて、性格はなかなか変わらないですから。根っこは絶対に変わらないから、お客さんが不安に思いそう部分は大丈夫ですよ、って感じなんですけどね。ファン心理として好きなアーティストにはそのままでいてほしいというのがあるんでしょうね。でも私は曲ごと、アルバムごと、ツアーごとに、作られたチャランポ像を裏切ってみんなを不安にさせたいです。
最新アルバム「女の46分」のテーマは「女」。アーティスト写真も「女の理想と現実は紙一重」をイメージしている。また、アルバムのティザー映像にはお笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹と、Instagramで話題の双子・りんか&あんなちゃんが出演し、それぞれ“らしい”手法で「女の46分」を紹介しており、こちらも話題を集めている。
小春 テーマの“女”って、あとから出てきたんだよね。並べてみたら、いろいろな曲にまつわる共通点が女だったっていう。最後に作った曲が「時計仕掛けの人生」だったんだけど、そこで「女の46分」の世界が完成したって感じ。
もも 「時計仕掛けの人生」の歌詞はホントギリギリで、レコーディングの前日ぐらいに完成したんですよ。
小春 最後に作る曲って、ほかの12曲で言い足りなかったことというか、欠けてしまっていた部分が全部のしかかってくるの。それをしっかり背負ってくれたね。
──私は通して聴いて、作詞作曲している小春さんが、我が身の人生切り売りみたいなスタイルではなく、客観的な曲作りをするようになったなと感じたんですよね。
もも それは私も歌っていてすごい感じますね。この間、すごいひさびさにインディーズ時代の3部作(「つがいの歯車」「たがいの鍵穴」「ふたえの螺旋」)を聴き返してみたら、けっこうむき出しというか生々しいというか。まあそれもよさなんですけど、全然スタイルが違くて。前までは彼氏と別れるときに手切れ金を請求された実話を曲にした「潮時」(ミニアルバム「つがいの歯車」収録)とかありましたからね(笑)。
小春 確かに、1曲に対する個人的な感情みたいなものは、作るときには必要ないかなって思うようになったかな。前は、自分の部屋でできあがった時点で相当強い思いがあって、その歌詞がどれほど変な感じでも、のちのち「こっちの言い回しのほうがよくないか?」みたいに思うものでも、とにかく変えたくなくて。それぐらいもう誰も入るな感がすごかった。
もも うん(笑)。できた時点でそれが完成形。
小春 とにかく作ったときの自分を守らなきゃみたいな気持ちがあったので。今回は自分の個人的なそういう感情を、作ってるときに入れない気楽さみたいなのがあった。あまり入れないから大変な思いをしなくなった。そういう意味でも丸くなったってことなのかな。あ、映画やドラマの主題歌、CMソングなんかを監督たちの意見も聞きつつ作ることが多くなってきたのは影響してるかも。「ここをこう表現したらウケるんじゃないか?」とか、ちょっと職業作家みたいな感覚が出てきたかもしれない。
もも そうだね。そんないろいろな環境と心境の変化を含めて、全体的に今じゃないとできなかった作品だと思います。
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- ニューアルバム「女の46分」2016年1月6日発売 / avex trax
- 「女の46分」CD+Blu-ray盤
- CD+Blu-ray盤 / 4860円 / AVCD-93322/B
- CD+DVD盤 / 3780円 / AVCD-93321/B
- 「女の46分」CD盤
- CD盤 / 2916円 / AVCD-93323
CD収録曲
- 時計仕掛けの人生
- メビウスの行き止まり
- アダム
- 私間違ってた
- 男のサガ
- テイラーになれないよ
- この先のシナリオはあなた次第
- ミルクティー
- 好き同士
- 欲
- ちゃんとやってるもーん
- 貴方の国のメリーゴーランド
- ハバナギラ
CD+Blu-ray盤Blu-ray収録内容
- 貴方の国のメリーゴーランド(Music Video)
- メビウスの行き止まり(Music Video)
- テイラーになれないよ(Music Video)
- ぎんなん楽団カルテット(Music Video)
- ムスタファ(Music Video)
- 忘れかけてた物語(Music Video)
- 私の宇宙(Music Video)
- フランスかぶれ(Music Video)
- スーダラ節(Music Video)
- 71億ピースのパズルゲーム(Music Video)
- 美しさと若さ(Music Video)
- ワーカホリック(Music Video)
- 戦う女(Show Movie)
- さよなら遊園地(Show Movie)
- Oppai Boggie(Show Movie)
- チャラン・ポ・ランタン ニューヨークへ行く[Road Movie]
CD+DVD盤DVD収録内容
- 貴方の国のメリーゴーランド(Music Video)
- メビウスの行き止まり(Music Video)
- テイラーになれないよ(Music Video)
- ぎんなん楽団カルテット(Music Video)
- ムスタファ(Music Video)
- 戦う女(Show Movie)
- さよなら遊園地(Show Movie)
- Oppai Boggie(Show Movie)
- チャラン・ポ・ランタン ニューヨークへ行く[Road Movie]
チャラン・ポ・ランタン
1993年生まれのもも(Vo)と1988年生まれの小春(Accordion)による姉妹ユニット。2009年に結成。2010年8月に「チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン」名義でアルバム「ただ、それだけ。」をリリースする。2012年6月にはZAZEN BOYS、group_inouらとのカナダツアーを大盛況に収めるなど海外での活動も多数。2012年9月に約2年ぶりの新作アルバム「つがいの歯車」を発表すると同時に、ももが20歳の誕生日を迎える2013年4月9日までに3枚のアルバムをリリースすることを公約し、それを達成。2014年7月にシングル「忘れかけてた物語」でエイベックスからメジャーデビューを果たして以降も精力的にリリースやライブを重ね、2016年1月に2ndアルバム「女の46分」をリリースした。