世界、待っとれよ!CHAIの海外活動遍歴、そして日本人としての挑戦 (2/2)

メンバーが選ぶ思い出の写真

マナ

アメリカのロサンゼルスにて。(写真提供:CHAI)

アメリカのロサンゼルスにて。(写真提供:CHAI)

ロサンゼルスで「SURPRISE」のミュージックビデオを撮影したとき、たまたま近くにグラミー賞の授賞式会場があって。CHAIは長年グラミー賞を狙ってるから、これは行くしかないよね。そのとき撮ったのがこの写真で、レッドカーペットが敷かれる場所に立ってます。

カナ

CHAIとCSSのラヴフォックス。(写真提供:CHAI)

CHAIとCSSのラヴフォックス。(写真提供:CHAI)

CSSのラヴフォックス(Vo)と一緒に撮った1枚です。CSSはCHAIを結成する前から大好きで、Gorillazと並んで特に影響を受けたバンド。マナなんか「ラヴフォックスになりたい!」って言い続けてる(笑)。初めて会えたときは泣いちゃったし、「ミュージシャンをやっていてよかったな」と思えた瞬間でした。

ユウキ

CHAIとHinds。(写真提供:CHAI)

CHAIとHinds。(写真提供:CHAI)

2019年のヨーロッパツアー中、スペインでHindsと一緒にレコーディングとMV撮影をしました。女性のミュージシャンにはたくさん会ってきたけど、実はCHAIと同じ4人体制のバンドは珍しくて。Hindsのみんなはエネルギッシュで、肝が据わってるところが新鮮で刺激的だった。私たちとは全然違うところもあるけど、すごく仲良しになったよ。

ユナ

CHAIとアメリカツアーのスタッフ。(写真提供:CHAI)

CHAIとアメリカツアーのスタッフ。(写真提供:CHAI)

CHAIとアメリカツアーの海外チームだよ。真ん中のおじちゃんはツアーマネージャーのショーンで、アメリカのビッグダディ。楽曲「Driving22」の歌詞に出てくる「ショーン」はこのおじちゃんだね。彼の上にいるのはアメリカのビッグママ、なでしこさん。初めてアメリカに行ったときからお世話になってる。私の隣にいるのはメリッサで、PAを担当してくれました。9月のツアーでまた会えるから、すごく楽しみ。

アルバム「CHAI」インタビュー

新ジャンル開拓! “CHAI POP”ってこんなサウンド

──海外活動を振り返っていきましたが、ニューアルバム「CHAI」は去年のツアー中に制作していたとのことで。大枠はすでに完成していたんですね。

マナ 今回は海外でレコーディングしたかったからね。聴いてみて、どうでした?

──過去作と比較してみたのですが、前作「WINK」はSUB POPに所属して初のアルバムということもあり、コラボに挑戦したり、海外のトレンドを取り入れたりして実験的な作品だと感じたんです。続く日本限定でリリースされたEP「ジャジャーン」は、CHAIが日本で求められているコンセプトやサウンドを再確認するような作りで。

ユナ なるほどー。

──そして今回のアルバム「CHAI」は前2作で表現した作風を踏襲しつつ、歴代作品のCHAIらしさが改めて戻ってきたようでした。さらに近年海外で注目されている日本の音楽、具体的に言うと“シティポップ”と形容されるAORやフュージョンの要素も消化し、バランスよく仕上げた作品になったんじゃないかと。

マナ おお、もう正解!(笑) まさにそんな感じ。

CHAI

CHAI

──だけども決して難解ではなく、歌詞のキャッチーさもしっかり残っていて。先ほど特集用の写真を撮影していたとき、フォトグラファーさんが「アルバムを聴いていたら息子が『MATCHA CHA』(※楽曲『MATCHA』のワンフレーズ)と口ずさんでいた」とお話していましたが、まさにフレーズのよさを示すようなコメントでしたね。

マナ だよね!

カナ 子供が真似してくれるなんて、めっちゃうれしい。

──そういった意味では長年CHAIを追ってきた人、タイアップ曲でCHAIに興味を持った人、近年の海外活動でCHAIを知った人、いろんな方に対して刺さる要素が凝縮されたと言えます。制作時はこれまでの作品を聴き直しつつ、再構成した部分もあったんでしょうか?

マナ 特別振り返らなかったかな。過去に発表した曲を聴き直すことってほとんどなくて。ほかのミュージシャンの曲からインスピレーションを受けつつ、プロデューサーのRyu Takahashiさんと一緒に作っていきました。実はRyuさんからも「日本のシティポップみたいな要素を入れてほしい」と要望があったから、今指摘されてびっくりした(笑)。

──なんと(笑)。そのほか「GAME」「I Can't Organizeeee」のシンセ感は1980年代の歌謡曲、「From 1992」「LIKE, I NEED」の曲構成やコーラスの盛り込み方は1990年代のJ-POPを彷彿とさせて、シティポップとはまた違った日本らしさが表現されていたり。

マナ ドリカム(DREAMS COME TRUE)とかZARDが大ヒットしていた時代だよね。そこも意識したし、ほかにもユーミン(松任谷由実)とか松田聖子の曲もずっと好きだから、このあたりの影響は自然と出てきたかも。そこに海外ならではのアレンジを組み合わせたら、めっちゃ新しいサウンドになったんだよね。

──それがアルバムの告知でも使用されていたジャンル、“CHAI POP”になった。

マナ そうそう。もともと1stアルバム「PINK」の頃から特定のジャンルにこだわらないようにしてきたんだけど、今回のアルバムで最適解が出せたと思う。それが“CHAI POP”だね。

CHAI

CHAI

関係ない人はいない、誰もが持ってる“NEOかわいい”

──「MATCHA」「PARA PARA」といったミドルチューンでは穏やかな曲調に乗せ、テーマとなっている題材の魅力が歌われていますが、メッセージ性の強い「We The Female!」「NEO KAWAII, K?」ではビートを強調したパワフルなサウンドが展開されています。歌詞の内容によって音作りも明確に区別されていましたし、伝えたいメッセージがよりストレートになったのも、これまでとは大きく変わった部分じゃないかと。

マナ アルバムを聴いてくれたときに、自分の望む生き方に自信を持てるような作品にしたかったもんで。そのためにはCHAIがどういうふうに生きていくかを提示することが必要だったから「We The Female!」という曲を作ったんだよね。私たちは女性だけど、性別にとらわれない考え方や性格がある。そのうえで女性として生きていくことを選んだ、ということを宣言しとるよ。

──「We The Female!」はいわゆる女性らしさ、男性らしさに縛られないことだけでなく、「1人の人間として接してほしい」というニュアンスも込められていて。このメッセージはとても勇気付けられるものがありました。

ユウキ 男性性と女性性ってすごくあいまいなものだし、その線引きは繊細なグラデーションになっているはずで。だからこそ「私はこういう人だ」って自分が決めていいと思うんです。「誰かに決めてもらおう」「ほかの人に合わせなきゃ」と考えてしまいがちだけど、「私は私、あなたはあなた」と認め合うことが大切じゃないかな。最初は「どう思われるんだろう」と怖くなってしまうけど、「一緒に乗り超えよう」と言えたらなって。「私たちは女だよ」と宣言することから始めて、そこから「あなた自身が決めていいんだよ」とつなげていったのが「We The Female!」ですね。

──この考え方によって、特定の性別やセクシュアリティに限定せず、誰にでも当てはまる題材に押し広げていますね。

ユウキ うん。世界中がちょっとずつ変化しているけど、自分のことがわからなくなったり、迷ったりする人もいると思う。考え方はいろいろでいいけど、だからこそ受け入れる心が大事。自分を強く信じていたら、他人に悪口も言わなくなるはずだからね。

──一方、CHAIが長年活動コンセプトとして掲げてきた“NEOかわいい”について歌った「NEO KAWAII, K?」は「グレーゾーンばっか 生きてるフリすんな NO ONE CAN JUDGE YOU! (誰もあなたを裁けない!)」と呼びかけつつ「Everybody is little strange, right?(みんなちょっと変でしょ?)」「We all living our own life!(私たちは自分の人生を生きてる!)」と歌っていて、リスナーを引っ張っていく力強さがすごい。

マナ 過去には「N.E.O.」でも“NEOかわいい”を題材にしたけど、「NEO KAWAII, K?」では「あなたの“NEOかわいい”、準備できてますか?」と問いかけたかった。世界中を回って“NEOかわいい”が認識されてきたから、もう一度この言葉の意味を提示したかったもんで。

──あるインタビューでは、皆さんが「“NEOかわいい”は多くの人に周知されたけど、その枠組みに入る人たちをけなすようなニュアンスでも使われている」と語っていました。改めて“NEOかわいい”を題材にしたのは、その扱われ方に対してひと言申したい、という気持ちもあったんでしょうか?

マナ そうだね。一時期は勘違いされて自虐的な意味合いで使われたり、「最近“NEOかわいい”と思ったものってなんですか?」とか聞かれることもあったけど、そもそも“NEOかわいい”に当てはまるのはこれ、というルールはないから。「かわいい」「カッコいい」「面白い」とかいろんな要素が込められているし、誰でも持っているものだからね。

日本人の女性として、CHAIが挑戦していくこと

──今回のアルバムは「日本人の女性として生きていくこと」というテーマが掲げられましたが、これは今後の海外活動への向き合い方にもつながると思います。

カナ 今までは日本人として生まれ、日本の女性であることに対してコンプレックスを感じることもあったんです。例えば自分のことをあまりオープンにせず、謙虚になっちゃう部分とかね。でも最近は日本人の女性であることに自信を持てるようになって、それがアイデンティティにつながっている。このままの姿や気持ちを大事にしていきたいです。

ユウキ 音楽だけじゃなく、絵や服とかいろんな手段で世界に発信していきたいですね。そのためには限界を決めないよう気を付けたくて。新しいことを始めるとき、「日本人だから」「女性だから」とやらない理由を考えてしまうことがあるけど、それは言い訳にするようなことじゃないし、むしろ武器になるはずだからね。

ユナ 日本人であることはCHAIにとって、すごくいい形に作用していると思うんだよね。「アジア人の小柄な女性がステージに立っている」という印象を与えたうえで、気持ちのいい音楽を鳴らすことで、人種も性別も関係ないハッピーな空間が作れるから。だから最高な音楽を届けることは、CHAIがずっと掲げていく目標になるんじゃないかな。

マナ 私たちにとって、このまま無理に背伸びせず、ありのままの姿でステージに立つことが正解なんだと思う。それを続けていきたいね。

CHAI

CHAI

プロフィール

CHAI(チャイ)

双子のマナ(Vo, Key)とカナ(Vo, G, Key)、ユウキ(B, Cho)、ユナ(Dr, Cho)の4人による“ニュー・エキサイト・オンナバンド”。“NEOかわいい”や“コンプレックスはアートなり”といったコンセプトを掲げて活動を開始し、2016年12月には初の全国流通盤「ほったらかシリーズ」を発表した。2017年以降は海外での活動も積極的に展開し、2020年にアメリカのインディレーベル・SUB POP、2022年に国内ソニーの洋楽レーベル・Sony Music Japan Internationalと契約。2023年9月に4枚目のフルアルバム「CHAI」をリリースした。