Buzz72+|松隈ケンタ率いる福岡発ロックバンド、空白の13年を経てリスタート

松隈ケンタと行く!
スクランブルズ新スタジオ見学ツアー

スクランブルズ代沢スタジオは2019年12月、東京・下北沢駅から徒歩10分の茶沢通り沿いにオープンしたSCRAMBLESの新スタジオ。SCRAMBLESのクリエイターが日々ここで楽曲制作を行っているほか、WACK所属グループをはじめ、さまざまなアーティストのボーカルレコーディングにも使用されている。このページでは内装や機材面で松隈のこだわりが感じられるスタジオの各ブースや機材を松隈の解説と共に紹介する。

エントランス

スクランブルズ代沢スタジオ入り口。エントランスに面した壁はガラス張りになっている。

グリーティングスペース&クリエイターゾーン

松隈ケンタ ここはロビー感覚で使えるようになっているグリーティングスペースです。レコーディングをしていると息詰まる人も出てくるので、レーベルの方やアーティストがくつろげる憩いの場のような設計になっています。あとミニライブができるように普通のフロアより一段高くしてありまして、アンプやミキサーなどもあるので、YouTubeでライブを配信したり、トークショーもできるようにしました。

松隈 オフィススペースは現状10人分ですね。在籍しているクリエイターはだいたい15人くらい。ここで作曲からミックスまでのマスタリング手前までの作業が完結できます。SCRAMBLESは個人事業主の集まりなので、みんな好きな時間に来て作業をしてますよ。

クリエイターゾーンにある自身のデスクで美顔ローラーを使う松隈ケンタ。

楽器保管庫

楽器保管庫。ギター、ベース、マイク、ケーブル、ミキサーなどが保管されている。写真手前のギターはBiSHとFenderのコラボギター「Fender Telecaster Thinline "BiSH"」。

松隈 ここは武器庫をイメージしてるんですよ。映画「ジョン・ウィック」に出てくるようなのがあったらいいなと。やっぱり楽器は僕らSCRAMBLESの武器ですからね。SCRAMBLESではお互いのギターやベースをシェアしているので、ここから必要な機材を持っていくと。室内の右半分がクリエイターゾーン、左半分がスタジオ所有ゾーンになっていて、SCRAMBLESのメンバーが場所取りでケンカしとるみたいです(笑)。

Bスタジオ

松隈 ここは普段SCRAMBLESメンバーだけが入る部屋です。デモを作るときに常駐ドラマーがエレドラを叩くこともあるし、クリエイターゾーンはヘッドフォンでしか音出しができないので、ここにパソコンを持ってきて仮歌やギターなどの録音をしています。

Bスタジオ。必要最低限の機材を設置し、ここでSCRAMBLESのクリエイターがデモ制作や仮歌の録音などを行っている。

コントロールルーム

松隈 席としてはアシスタント用とエンジニア用が前にあって、その後ろに僕の机があって、後ろはソファですね。前方の画面にはボーカルブースが映るようになっていますので、僕はここから指示を出しています。機材面のこだわりはメインスピーカーとアユニ・D(BiSH、PEDRO)の指ですね。メインのスピーカーはREY AUDIO製で、BiSHの作品などでマスタリングしてもらっているエンジニアの宮本茂男さんに紹介していただいたんです。箱根の山奥で木下正三さんという職人さんが作っているマスタリンググレードの高級スピーカーですね。スタジオを作るにあたって、REY AUDIOのパワーアンプも導入しました。買うために箱根まで木下さんに会いに行ったんですけど、仙人のような方で。設置にあたっては木下さんに来ていただきました。このパワーアンプは日本のミキシングスタジオでは1台目だと聞いています。REY AUDIOは解像度が非常に高いんですよ。横に並んでいるFOCALのスピーカーも気に入っているんですけど、最近のスピーカーってローとハイがくっきり出るんですね。これはどちらかというとミックス用というかスタジオ向け。REY AUDIOはフラット寄りなんだけどピュアオーディオでもあるので音の解像度が高いんです。つまりよく聴こえるということですね。SCRAMBLESにしか出せない音があったらいいし、ここでしか聴けない音があるというのも個性につながると思って導入しました。

松隈 コンソール周りはいたってシンプルです。もうほぼないに等しいくらい(笑)。現代的なレコーディング環境に特化しているので、卓もないし、マイクプリとかEQとか本当に必要最低限しか置いてないです。ドカーンと大きな卓を置くのが昔はカッコよかったですけど、今はシンプルなほうがカッコいいかなと思って。いろいろ置かずに耳と技術で勝負ですね。あとメインスピーカーとは別にPHONONのモニタースピーカーMUSICLIFE ML-1もありまして、ミックスの最後、一般の方が聴くスピーカーに近いものでもチェックするんです。

ボーカルブース

松隈 ここでWACKのみんなのボーカルレコーディングをしています。マイクの前にカメラが設置してあるので、コントロールルームにここの映像が映ります。システム的には一般的なボーカルブースと同じ。大岡山にもスクランブルスタジオがあって、以前はそこのドラムのレコーディングにも使える広いブースをボーカル録りで使用してました。逆にここはコンパクトにしてあって、ボーカリストが歌に集中できるようにしています。もう何組か使ってるんですけど、大岡山に慣れ親しんでいた人たちはまだ緊張してますね(笑)。で、ここのカメラの映像は隣のコントロールルームだけじゃなくて福岡のオフィスともつながってるんですよ。なので僕が福岡にいても東京にいても、歌録りする人にとっては全然変わらない状況で指示を受けられるというのもポイントです。若干のレイテンシーはありますけど、音質は専用のレコーディングソフトを使っているので距離が離れていてもクリアです。アメリカだとメンバーがサンフランシスコとニューヨークにいるなんてことがよくあるからリモートセッションは普及していて、システムもソフトウェアもかなり充実してるんですよ。逆に全員が東京に住んでいる日本のような国って珍しいみたいです。

待機スペース

松隈 ここは前室的なスペースですね。出番待ちのアーティストがいることもあるし、打ち合わせに使うこともあります。ここにもディスプレイを置いているのでコントロールルームの様子が見られるようになっています。音も流せるので、例えばBiSHのアイナ・ジ・エンドが歌録りをしているときにセントチヒロ・チッチがここでその様子を眺めるなんてこともあるわけです。このスタジオは僕が壁の色から材木の素材まで選んでいて、大工さんと一緒に材木店で木を選ぶところからこだわりました。棚の木は米軍関係の古材で朽ちた感じがいいんですね。ここの机は福岡で見つけまして、運んできました。クリエイターゾーンとグリーティングスペースと雰囲気を変えたかったので、各ブースがあるこのエリアは“夢の国感”をイメージして作りました。トンネルをくぐるとアーティストたちのテンションが上がるような意図で。やっぱり遊び心が必要だなと思って、機材だらけの無機質な感じをできるだけ出さないようにしています。プレイや歌に影響すると思うので雰囲気は大事ですね。

松隈 このスタジオはレコーディングしたい人にも、ミックスをSCRAMBLESに頼みたいといった人にも開放しています。意外と知られてないんですけど、もし興味のある人がいたらオファーしてください。ミックスも歌録りもできますし、僕が曲を作ってなくても指名してディレクションを頼んでくれてもいいですし。まあホームページになんにもそういうこと書いてないから知られてないのも当たり前なんですけどね(笑)。僕自身は作曲家というイメージが強いと思いますけど、レコーディングも携わってますので、いい音だなと思ってくれている方がいたら協力したいと思います。SCRAMBLESは総合音楽制作チームなので。あと下北沢にLITTLE BY TECH.という楽器店も構えていまして、そこではいろんなスクールもやっているので、もし楽器や歌がうまくなりたいという方がいたらそちらにも足を運んでみてください。

ライブ情報

「サウンドスクランブル天神2020」

2020年4月19日(日) 福岡県 DRUM Be-1 / DRUM SON <出演者> Buzz72+ / BiSH / PEDRO / 豆柴の大群 / and more

※特集公開時に商品情報および関連リンク先の一部に誤りがありました。訂正してお詫びします。


2020年2月25日更新