BRIAN SHINSEKAI特集 第3回|BRIAN SHINSEKAI×GLIM SPANKY 「閃光ライオット」から8年、共感し合う2組の同世代鼎談

僕らの世代の中にも、BPMが2桁台で成立する空気が感じられるようになった

──メジャーにおける継続的なキャリアという点においては、今のところBRIAN SHINSEKAIよりもGLIM SPANKYのほうが長く積んできているわけですが、互いにアーティストとしてデビューしたときから現時点までの間の状況についてはどのように捉えていますか?

亀本寛貴(G / GLIM SPANKY)

亀本 僕個人としては、年々居心地がよくなっている気がしますね。最近って、日本のバンドシーンにいろんな音楽があるじゃないですか。移り変わりもあるけれど、フェスに初めて出るようになった頃とかは、周りのバンドはみんな160BPM以上はあるぞ、みたいな状況だった(笑)。そこから僕らやSuchmosが出てきて、僕らの世代の中にも、BPMが2桁台で成立する空気が感じられるようになった。僕らよりも10や15も年齢やキャリアが上のバンドの方々は、その時代の盛り上げ方が確立されているでしょ? でもそれとは違うものが、ようやく自分らの世代、それこそ「閃光」に出ていた世代の子たちからも生まれてきたような気がするんです。みんな個性的だけど、その中にめっちゃ違うのがいくつかいる。その1つがGLIM SPANKYだと受け取ってもらえるようになってきたという手応えはあるので。どんどん演りやすくなってきた気がする。

松尾 私は私で、デビュー前から今まで「自分が好きなことをやるだけ! ほかの人がどうとかなんて知らんわ!」って思っていましたけど(笑)、確かに近年はうちらが昔からやっていた遅い曲をフェスでやると、まだノリ方がわからない感じはあるけど、ぽかーんとしながらも受け入れてくれているようなお客さんがたくさんいるという手応えがありますね。5年後あたりはもっと変わっているんじゃないかと思いながら歌っています。

BRIAN 僕もまったく同感ですね。確かにSuchmosが出てきたのは大きな転機だったし、個人的にはよりポップスとロックの境目がなくなってきた気がする。ポップスもちゃんと評価されると言うか、ポップス的なフォーマットへの評価に“カッコいい”が増えてきたと言うか、ロックが得てきた市民権に近付いてきたと思う。そういう意味で、僕としては数年前よりもいろんな表現を試しやすい状況だと思っています。

──なるほど。BRIAN SHNSEKAIさんは、何か将来的なビジョンと言うか、世代間を念頭に置いたうえでの目標などはありますか?

BRIAN 1つあるのは、それこそ僕にとってのGLIM SPANKYのような、音楽性に限らず、より深いところで共感のできる人たちと、将来的には自分主催でイベントを開きたいという思いはあります。フェスというカテゴライズでなくてもいいし、とにかく濃いイベントをやれたらいいなあと。

亀本 やろうよ、呼んで呼んで!

松尾 そういえば「閃光」以降、対バンってなかったもんね。いつか実現するといいなあ。それにしても最後の対バンが高3のときって、改めて思うと妙にウケるし、なんだかジワっとくるなあ(笑)。

左からBRIAN SHINSEKAI、松尾レミ(Vo, G / GLIM SPANKY)、亀本寛貴(G / GLIM SPANKY)。

「ルーシー・キャント・ダンス」のメタファーに込めた思い

──2組の対バンが実現することを楽しみにしています。最後に、BRIAN SHINSEKAIさんが来年1月24日にリリース予定のアルバム「Entrée」から先行配信した「ルーシー・キャント・ダンス」について聞かせてください。この曲はいつ頃書かれた曲でしょうか?

BRIAN 「Entrée」の制作の後半頃に、半日ぐらいの時間で作りました。かなりスルスルっと、感性のままに書けました。アルバムを作っていく実験的な過程でコンセプトが固まっていった曲であり、BRIAN SHINSEKAIとしてやりたいことのビジョンが明確に見えた曲でもあります。

──基本的にはトラックメイクをして、そこから歌詞が浮かぶということですが、この曲もそうでしたか?

BRIAN そうですね。今東京ってシティポップっぽいバンドが多いと思うんですけど、そこともシンクロするところがあって。特に僕の場合は、シンセを使ったダンスミュージック的なポップスの中に、いろんな思いを落とし込んでいくと言うか……自分で制限した枠を設けて、その中に思いを落とし込んでいくという作業が、今自分にとってすごく気持ちがいいんです。この曲は最初はピアノだけを打ち込んでいたんですが、途中から何となくThe Style Council的なストリングスが思いついて。そこからさらに頭の中で連鎖が起きて最近のシティポップの空気感につながっていきました。ある種のダンスミュージックであり、ラブソングでもある曲ですね。

──BRIANさんの中における代表的なシティポップというと?

BRIAN 小沢健二さん、ピチカート・ファイヴの小西康陽さんのイメージが強くありますね。あと、シティポップじゃないかもしれないけど、岡村靖幸さんやORIGINAL LOVEさんといった方々の音楽もあります。

──「ルーシー・キャント・ダンス」の“踊れないルーシー”というメタファーに込めた思いとは?

BRIAN SHINSEKAI

BRIAN 僕は常に明確なテーマ性を持って曲を書いているんですが「ルーシー・キャント・ダンス」の場合は、何かしらのトラウマやコンプレックスを抱えながら、それでも踊りたいんだけど、何かが引っかかって踊れない少女を主人公にして。そして僕自身が励まされてきたダンスミュージックという存在を描きました。この曲が収録されるアルバム「Entrée」は全体を通して、ある少女像ないしは女性像が浮かび上がってきます。踊るという身体的表現を、僕は1つの解放された状態だと捉えていて、つまりうまく踊れないということは苦痛の中にいる。でも最終的には前向きなポップスとして届くようにと心掛けました。今は踊れない人も、やがて踊り出したくなるような。

──ダンスミュージック、都市生活を描くという意味でのシティポップ、踊れない少女。今お話を伺っていて、小室哲哉さんを想起しました。

BRIAN 確かにTRFの頃の小室さんって、主人公が弱者で、朝焼けを見てなんとか勇気付けられるようなストーリーをよく書かれていましたよね。直接的な影響は受けていませんが、共感する部分がたくさんあります。リスナーにとってよりパーソナルなダンスミュージックとして届けたい。そんな願いを込めた1曲でもあります。

「ルーシー・キャント・ダンス」

先行配信中楽曲プレイリスト

BRIAN SHINSEKAI「Entrée」
BRIAN SHINSEKAI「Entrée」

2018年1月24日発売
Victor Entertainment / AndRec

Apple Music

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 首飾りとアースガルド
  2. TRUE/GLUE
  3. 東京ラビリンス ft. フルカワユタカ
  4. FAITH
  5. ゴヴィンダ
  6. バルバラ
  7. ルーシー・キャント・ダンス
  8. CICADA
  9. クリミアのリンゴ売り
  10. Loving the Alien
  11. 2045(Theme of SHINSEKAI)
  12. トゥナイト
BRIAN SHINSEKAI(ブライアンシンセカイ)
BRIAN SHINSEKAI
2009年、17歳のときにブライアン新世界名義で出場した「閃光ライオット」でファイナリストに。2011年に1stミニアルバム「LOW-HIGH-BOOTS」、2012年に2ndミニアルバム「NEW AGE REVOLUTION」を発売した。2013年にはバンドBryan Associates Clubを結成してライブ活動を展開。2016年11月に活動を休止したのち、2017年9月に新プロジェクトとしてBRIAN SHINSEKAIを始動させた。2018年1月にビクターエンタテインメントよりデビューアルバム「Entrée」をリリース。収録曲をアルバムの発売に先駆けてサブスクリプションサービスで順次先行配信するという試みで話題を集めている。
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)
GLIM SPANKY
松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに、松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「MOVE OVER」が使われ、松尾の歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリース。10月には東京・赤坂BLITZにてワンマンライブを実施した。7月20日に2ndアルバム「Next One」を発表。収録曲「怒りをくれよ」は映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌に起用された。2017年4月に3rdミニアルバム「I STAND ALONE」を、9月には3rdフルアルバム「BIZARRE CARNIVAL」をリリースした。
GLIM SPANKY「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018」
  • 2017年10月14日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2017年10月15日(日)長野県 ALECX
  • 2017年10月20日(金)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2017年10月22日(日)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2017年10月28日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2017年11月3日(金・祝)京都府 磔磔
  • 2017年11月5日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2017年11月11日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2017年11月12日(日)新潟県 NEXS Niigata
  • 2017年11月17日(金)宮城県 Rensa
  • 2017年11月18日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2017年11月23日(木・祝)大阪府 なんばHatch
  • 2017年11月25日(土)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2017年11月26日(日)島根県 LIVE&STUDIO 松江B1
  • 2017年12月2日(土)高知県 X-pt.
  • 2017年12月3日(日)香川県 DIME
  • 2017年12月9日(土)静岡県 SOUND SHOWER ark
  • 2017年12月10日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2018年1月5日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2018年1月6日(土)東京都 新木場STUDIO COAST
GLIM SPANKY「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018 in Hong Kong」

2018年1月13日(土)香港 Music Zone @ E-Max

GLIM SPANKY「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018 in Taipei」

2018年1月20日(土)台湾 台北 The Wall


2018年1月24日更新