BRAHMAN「viraha」TOSHI-LOWソロインタビュー|結成30周年、手に入れたのは“開き直った強さ” (3/3)

「隠したり伏せたい心境じゃない」チバユウスケへの思い

──アルバムの2曲目「恒星天」はどう作ったんですか?

初めはシンプルに「転調の妙」がある曲をみんなで作りたくなってね。ただ、もうあまりにもパンクだし、キラキラしてるから、面白えなと思って。

──それで言うと、「charon」の歌詞は、どういうプロセスで?

自分でコード進行を作って、メロディを作ってる段階で「あの人みてえだな」と思って。こういう曲、作りそうだなと思って。

──それは、やっぱりチバ(ユウスケ)さん?

うん。「charon」っていう言葉も、何か言いそうじゃん?

──実際、近い響きだとROSSOに「シャロン」という曲がありましたね。

あの人の真似をするんじゃなくて、自分があの人の思いに対して作るとしたらどんな曲になるのかな?と思って書いていったから、手紙みたいな歌詞だし。

──そう。そして、なんか繰り返し聴いてしまう曲ですね。

そう、繰り返し聴けるの。“チバ縛り”じゃないけど、ずっと1つのコード進行を繰り返すやり方もあの人みたいだなって。

──今、改めて、TOSHI-LOWさんの中でチバさんってどんな“仲良し”でしたか?

仲良しかどうかはイタコに呼んでもらわないとわかんないけどね。向こうは「あんなやつ」とか思ってるかもしれないし。

──あの、先日のチバさんの命日、自分のXのタイムラインには、あなたたち2人がチューしてる動画がけっこうな頻度で回ってきちゃってたんですけど……。

(笑)。初めから仲良しだったわけじゃないんだよ。言っても向こうが年上だし。とは言え、すごく開きがあるわけでもないから、リスペクトがないわけじゃないんだけど、昔はこっちも「知らねえよミッシェルなんて」って勢いでやってたからさ。でもあるときウエノコウジが話しかけてきて、キューちゃん(クハラカズユキ)もいい人で、仲よくなって。中でもチバが圧倒的に愛嬌があって面白くてね(笑)。ベロベロに酔っ払ったチバのケンカに巻き込まれる事故みたいなのもけっこうあったんだけど、「もう許せねえ」には絶対にならない。必ず、「面白かったな~」って思っちゃうの(笑)。若い頃はサングラスかけて仏頂面でいなきゃいけなかったのかもしれないけど、あれだけわがままに生きて誰かに潰されたりもしなかったのは、やっぱりあの幼稚園児みたいな天性の愛嬌があったからだと思うし、それが年々増していったんだよ。

──自分は交流こそありませんでしたが、わかるような気がします。

あと、チバに関してはイマイアキノブの存在もデカかったと思う。あの人といるとき、本当に楽しそうだったもん。キャッキャしてるんだよ。だって、The Birthday辞めた人間とまた一緒にやるとかなくない?(笑) いてほしかったんだと思うんだよ。チバがベロベロの横でイマイもベロベロでケツとか出してさ(笑)。「イマイくんがいると、俺は新幹線に乗れるんだよね」って、1人じゃ乗れねえのかよ!?みたいな(笑)。

──あまりにもかわいすぎるダメさ加減ですね。

そうなの! 最高なのよ、もう、キュンキュンきちゃうのよ(笑)。そういう愛すべき部分が、特に近年はむちゃむちゃ出ていたんだよね。俺だけが仲よかったとかではなくてさ。チバのそういう姿を見ていて、「年を取るのも悪くないんだな」と思えたし、そういうのをもっといっぱい見られるのかなと思っていたんだけどね。コロナ禍のときとか、部屋飲みしてじっくり話せたこととかよかったなと思うし。

──不在に気付くと、寂しい気持ちになりますか?

寂しいというより「こんなに好きだったのか」って気付くほうがデカいね。言ったら、俺にはチバよりもよく遊ぶミュージシャン、いっぱいいるんだよ? だから自分でもびっくりした。「ああ、こんなに好きだったのか」と。今はそれを隠したり伏せたい心境じゃないというか、「好きなもんを好きって言って悪いことあるか?」みたいな気分でさ。俺の中では「憧れのロックスターが逝ってしまって、悲しいんです」とかじゃないから。

──自分が言うのも僭越だけど、この曲を聴いたら喜んでくれるんじゃないですか?

文句も言いそうだけどね(笑)。「もっとこうしたほうがいいよ~」とか(笑)。コロナ禍のときに「BRAHMANに曲を書きたい」って言ってくれてさ。飲んでてなんだかビートの話題になって「俺ら、意外と8ビートの曲がないんだよね」って話したら、「曲書きたいんだけど、いい?」って。もし実現したら、たぶん俺ら全員「チバなら」となっただろうし。ちょっと楽しみだったんだけどね。

──大切な話を聞かせてもらいました。

別に心に秘めておいてもしょうがないからさ(笑)。俺が今話した思い出が俺とチバのすべてじゃないし、「そうじゃないよ」という人もいるかもしれないけど。このぐらいの話ができる権利があるぐらいは仲よくなったと思ってる。

スタジオ内の風景。

「このライブで終わってもいい」を、より長く続けたい

──ほかの曲にも触れていきたいんですが。

別に全曲触れなくてもいいじゃん?(笑)

──いや、時間の許す限り、もう少し。今回、全曲のリリックを読んで思ったんですが、文語で書く詩と口語というか歌で歌う詩、つまり歌詞がある前提で考えたとき、その両者の境界線が自然と心地よく融解しているなと感じられました。文語で書く詩をものすごくきれいに歌えているロックアルバムというか。韻の踏み方もとてもきれいだし。

韻はほとんど気にしたことがないけど、確かに歌詞の文字面を見なくても歌詞がわかるようにしたいっていう思いはすごくあったね。やっぱり歌っていて気持ちのいい言葉選びってあるし。柔らかい言葉には極力濁点を入れない、とかね。強い曲だと「ガッ」とか「ゴッ」とか言いたくなるけど、発音に対する言葉の選び方はすごく考えたかもしれない。その一方で、俺、紙に書かれた詩も好きだから、読むとカッコいいのに聴くと何言ってんだかわからない、みたくなるのは避けたくてね。どっちも両立するようにしたのは自分の中でのチャレンジだったね。あと、今までと大きく違うのは、酒飲まないで作ったこと。だから「少年」とか、恥ずかしさの極致みたいな歌詞もあってさ(笑)。でも一晩考えに考え抜いても、それに代わる言葉がなかったんだよ。自分では最高の言葉を選んだと思ってるし。

──恥ずかしさの極致でも、そこにGOを出せる年齢とキャリアと年齢になったのかもしれないですね。

そうかもね。やっぱり「これはパンクかな? パンクじゃねえかな」みたいな判断基準もあるし、「ライブで歌ってどう見えるか?」というビジョンも考えはするけど、改めて自分は単刀直入なジャパニーズハードコアが好きなんだと思った。自分の恥ずかしさなんかよりも「言いたいことがどう伝わるか」のほうが大事だなって。

──ちなみに、Motörheadのカバー「Ace Of Spades」はどうして入れたんですか?

去年、フジロックで池畑潤二に歌わされたり、過去にフジロックでレミー(・キルミスター)の最期のステージを見てキャッキャしてたりしてたのもあったけど、この歌詞を読んで改めて「こんな生き方したいな」って。しばらくレミーのことしか考えれないぐらい染められたの(笑)。俺が大きな意味ではロックなりパンクに恋焦がれたのって、やっぱりレミーみたいなイカれた生き方だったから。勝ち負けや損得じゃなくて、自分がいかにやりたいように生きるか、という生き方を提示してくれる曲だなって。まあルールも大事なんだけど、細かくコンプライアンスがどうこう言い出したら、もうロックなんてつまらんし、やっぱり俺はそういうものをやりたいわけじゃないんだよね。でも、周りの先輩にMotörhead好きって多いから、怒られたらどうしようってちょっと心配(笑)。

──いや、自分もMotörhead好きだけど、これは最高のカバーでしょう。

大丈夫? よかった(笑)。

──だって「Ace Of Spades」からの「知らぬ存ぜぬ」の展開なんて、めちゃくちゃ快感じゃないですか。

やったー!

──ラストの「WASTE」のリリックについても聞かせてください。

この歌詞は細美武士(ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYES、the LOW-ATUS)との共作。BRAHMAN初の歌詞の共作。今回「WASTE」で細美、「最期の少年」で茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)がコーラスで参加しているんだけど、その2曲は作っている段階から2人にコーラスしてもらいたかったの。で、「WASTE」に関しては、細美が歌うんだから彼が歌いやすいように作ってもらえばいいじゃん、と思って。テーマとかを伝えて、一緒に英詞を作らせてもらって。で、対訳は自分がやると2人でやった面白さが半減しちゃうなと思って、全部細美に任せた。面白い共作になったし、みーちゃんもすごく気に入ってくれて歌ってくれた。

──さて、これまでのインタビューでも「先のビジョンなんて考えたこともない」と語ってきたTOSHI-LOWさんですが、30周年の今年も同じ思いですか?

ビジョンという言葉が何を指すのか相変わらず俺にはよくわからないけれど、みんな計画通りにいかないから、あとから改ざんして「こういうビジョンだった」って言ってるだけじゃないの? でも、嘘偽りなく、あと何回ライブができるかなんて誰にもわからないし、4人とも、ネガティブな意味じゃなく、常に「このライブで終わってもいい」と思って全力でやってるよ。でも、今はそれを1回でも多く経験したい。より長く続けたい……これ、今まで、言ったことないんじゃない?

──あっ、そうかもしれませんね。

そのために、1回ごとに“終わる”ライブを重ねていくんだろうし。ライブっていうか、俺、もっといろんな人に会いたいんだよ。そのためには長さも必要じゃん? 俺は人間が強くないから、絵に描いた餅とか手に入らないような夢を語ってがっくりするのが嫌だし、バンドの美しい散り際に憧れたりもする。そこは同等にあるんだけど、今は最悪も考えつつ最高を……つまり「もっともっとライブをしたい」と口にすることのほうが、俺にとっては“強さ”なんだよ。

TOSHI-LOW(Vo)

公演情報

BRAHMAN tour viraha

  • 2025年3月18日(火)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2025年3月23日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2025年3月25日(火)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2025年3月29日(土)青森県 青森Quarter
  • 2025年3月30日(日)岩手県 Club Change WAVE
  • 2025年4月5日(土)宮城県 Rensa
  • 2025年4月11日(金)京都府 磔磔
  • 2025年4月13日(日)兵庫県 Harbor Studio
  • 2025年4月15日(火)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2025年4月17日(木)島根県 アポロ
  • 2025年4月19日(土)香川県 高松MONSTER
  • 2025年4月20日(日)愛媛県 WStudioRED
  • 2025年4月22日(火)岐阜県 yanagase ants
  • 2025年5月22日(木)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2025年5月24日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2025年5月25日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2025年5月28日(水)北海道 CASINO DRIVE
  • 2025年5月30日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2025年5月31日(土)北海道 小樽GOLDSTONE
  • 2025年6月5日(木)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2025年6月7日(土)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2025年6月8日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2025年6月12日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2025年6月19日(木)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2025年6月21日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2025年6月27日(金)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2025年7月4日(金)山梨県 甲府Conviction
  • 2025年7月12日(土)沖縄県 桜坂セントラル

プロフィール

BRAHMAN(ブラフマン)

1995年に東京で結成された4人組ロック / パンクバンド。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドを特徴とする。1996年に初めての作品として「grope our way」をリリース。1998年に発表した1stアルバム「A MAN OF THE WORLD」はトータル60万枚以上のセールスを誇り、90年代後半に1つの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集める。2011年3月11日の東日本大震災以降よりライブ中にMCを行うようになり、震災の復興支援を目的とした活動を積極的に展開。2015年にはベストアルバム「尽未来際」のリリース、千葉・幕張メッセで開催したライブイベント「尽未来祭」を含むライブシリーズ「尽未来際」の開催、初のドキュメンタリー映画「ブラフマン」公開などの活動を展開した。結成30周年を目前に控えた2024年11月、神奈川・横浜BUNTAIで過去のアルバム6作品の収録曲72曲+αの75曲を披露したライブ「六梵全書 Six full albums of all songs」を開催。2025年2月に約7年ぶりのアルバム「viraha」をリリースし、3月からは全国ツアー「BRAHMAN tour viraha」、11月には千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールでの3DAYSライブイベント「尽未来祭2025」を開催する。