音楽ナタリー Power Push - BRADIO×「Peeping Life」監督 森りょういち

アニメを介して行われた痛快なキャッチボール

ラーメンで言えば「全部盛り」

──アニメのオープニングでは90秒しか流れませんが、フル尺で聴いたときにまた違った楽しみ方ができるのも「HOTELエイリアン」の魅力だと思いました。曲展開が複雑というか、いろいろ盛り込んでいますよね。

大山 サウンド面でのテーマが、ラーメン屋で言うところの「全部盛り」なんです。チャーシューも煮玉子もメンマも、余すところなく全部食え!っていう気持ちを込めていますから。

酒井 この曲はテレビサイズから作ったんです。まずは90秒だけで完結したものを作ったうえで、フルバージョンを考えていって。

大山聡一(G)

大山 すでに90秒で世界観は作れていたので、あとは何をトッピングしようかっていう発想だったんです。「こういう曲だからアレンジはこうだよね」みたいな制限を設けずに、ホントに自由にみんながやりたいことを提案して、それを同じ鍋に突っ込んでみて合うか合わないか判断する、みたいなやり方で曲が作れました。

 短い曲からフルに長くしていくために、どういう作業をするんですか?

大山 すごくシンプルです。4人でスタジオ入って「さあ、ここからどうしましょうか」って音を出しながら話し合う。

 スタジオで作っていくんですね。

大山 例えば亮輔が最初に音を出して提案してもらったら、それに合うサウンドをみんなで付けてみて。しっくりくるようなら次の展開どうしようかって、また音を出し合うみたいな感じですね。

 曲を作るときに流れを引っ張る人とかはいますか?

大山 実はそういう人間がいないんですよ。誰かが「これやりたい」って音を出して、だいたいダメになるときって誰かがジャッジするわけじゃなくて空気でわかるんです(笑)。なんとなく納得いってない感じになって……。

酒井 「やめよっか」みたいな雰囲気になります。

森りょういち

大山 採用されるものに対しては「それでいきましょう!」って流れに自然となる。だから3対1でも採用されないこともあったりします。1人がそれじゃない感を出してると「もう1回考え直しましょうか」ってなったり。

 バンドでの曲作りってメンバーの中に1人引っ張る役割の人がいるイメージがあるんですけど、BRADIOさんは違うんですね。

大山 そうなんです。しかも多数決でも決まらなくて、全会一致じゃないと話が進まないんです。不器用なバンドだなとは思ってるんですけど、今はそれが一番しっくりきてるんですよね。

新曲に込められた“岡村ちゃん節”

──ちなみにアニメのオープニングの最後に真行寺さんの「ポウ!」というシャウトが入りますが、これは何を意識して入れたものなんですか?

真行寺貴秋(Vo)

真行寺 僕は毎回、歌詞を考えるときとか、歌のレコーディングのときって役作りをしてから取りかかるんですよ。この曲はこういう人が歌うんじゃないか、みたいなイメージを持つようにしてて。それが今回は岡村靖幸さんだったから、曲全体にちょこちょこ“岡村ちゃん節”を入れてるんです。

──なぜ“岡村ちゃん節”を入れていこうと?

真行寺 けっこう破天荒な曲になったので、ハチャメチャなテンションで自分を盛り上げたほうが、聴き手も面白く思ってくれるんじゃないかと思いまして。今回はお茶の間に流れるアニメで一番ド頭のオープニングですから、少しでも耳に残るようなものを、と考えていたのでホントに違和感程度、軽いジャブを打つ感じで「ポウ!」と入れてみました。

 軽くはなかったと思いますが、いいアクセントになっていました。

田邊有希(Dr)

大山 貴秋はフェイクとかシャウトとかをその場のテンションとかで変えてくるんですけど、今回は突然「ポゥ!」っていうのが飛び出して来て。レコーディングのとき、「ポウ!ポウ!」うるさかったんですよ(笑)。

田邊 ずっと言ってましたから。

真行寺 テンションが上がってきちゃうと、ついいっぱいやりすぎちゃうこともあるんですよ。今回はアクセントにしたかったから、余計に言いすぎちゃった部分は全部カットして最後にだけ持ってくることにしています。

偶然の一致「組体操」

──「Peeping Life」のオープニングにはBRADIOのメンバーも登場していますよね。

 実はこっそり出てるんですよ。

大山 全然こっそりしてないですよね(笑)。

──オープニングではアニメのタッチで描かれたBRADIOのメンバーが組体操のピラミッドをしていますが、なぜ組体操をさせようと?

 福岡で一度BRADIOさんのライブを観させていただいて、メンバー同士の連帯感をすごく感じたんですよね。曲作りの話のときも出てきましたけど、1人が引っ張ってくとかじゃなくて、メンバー全員でバンドを動かしているんだっていう感じがして。だから運動会的なもの、組体操がピッタリかなと。

真行寺 すごい! 偶然だったんだ!

森りょういち(上段)、酒井亮輔(中段左)、田邊有希(中段右)、真行寺貴秋(下段中央)、大山聡一(下段右)。下段左はBRADIOのスタッフ。

 何がですか?

大山 実は僕ら、アルバム(6月発売の「POWER OF LIFE」)制作時に組体操をやってたんです。

 え!?

大山 Twitterとかで流すためだけに、やっただけなんですけど。アルバムのマスタリングってけっこう時間がかかるので、待ち時間ってちょっと間が空くんですよ。それで1曲できるごとに組体操して写真撮って……。

真行寺 サボテンとか、タワーとか。それで最後にやったのがピラミッド。

大山 それを見ていただいたから、オープニングでピラミッドをしているのかと思ったんですが……。

 見てなかったですね。ホントに知らなかったです(笑)。

大山 驚愕のキャッチボールですね、これは。

 コラボとかでご一緒する際って、僕はあえて意図的に情報を入れないようにしてるんです。だからその写真のことも全然知らなくて。ちょっと怖いくらいですね(笑)。

BRADIO

BRADIO一同 ははは(笑)。

 バンドのファンにとっては非常にうれしいリンクがオープニングにあったんですね。

真行寺 監督、さすがです!

 偶然なのでちょっと心苦しいですが……。

ニューシングル「HOTELエイリアン」 / 2015年11月11日発売 / HERO MUSIC ENTERTAINMENT
エイリアン盤 [CD] / 1080円 / HRME-1008
Peeping Life盤(店鋪限定)[CD+DVD] 1404円 / HRME-1007
CD収録曲
  1. HOTELエイリアン
  2. Super Wonderful
  3. HOTELエイリアン(Hidden AFRO ver.)
  4. Super Wonderful(Hidden AFRO ver.)
Pepping Life盤 DVD収録内容
  • TVアニメ「Peeping Life TV シーズン1 ??」オープニング映像収録
BRADIO(ブラディオ)

BRADIO

真行寺貴秋(Vo)、大山聡一(G)、酒井亮輔(B)、田邊有希(Dr)の4人からなる“日常に彩りを加えるエンターテインメント”をコンセプトに活動するロックバンド。多彩なビートを生み出すリズム隊を軸にしたサウンドや、シャウトやファルセットを使い分ける個性的なボーカルが話題を呼ぶ。2013年10月に1stミニアルバム「DIAMOND POPS」をリリース。2014年には「TREASURE05X」や「イナズマロック フェス」といったライブイベントにも出演した。2015年2月にはアニメ「デス・パレード」のオープニングテーマ「Flyers」を収録したシングルをリリース。同年6月には1stフルアルバム「POWER OF LIFE」を、11月にはアニメ「Peeping Life TV シーズン1 ??」のオープニングテーマとして書き下ろした新曲「HOTELエイリアン」を表題曲に据えたシングルを発表した。

森りょういち(モリリョウイチ)

アニメ監督、CGアニメーション作家。2006年に発表した作品「EACH LIFE」がNHKの番組「NHKデジタル・スタジアム」にてピエール瀧ベストセレクションを受賞し、2007年には同作品がデジタルクリエイターズコンペティションにて優秀賞に選ばれた。2008年に自身の監督作品である「Peeping Life」を発表。アドリブで収録した声優のやり取りに3DCGを組み合わせた同作品は“脱力系”アニメとして話題を呼び、DVDは累計60万本の売り上げを記録するなど大ヒット。2010年には株式会社FORESTHuntingOneを設立し、代表取締役社長を務めている。2015年10月には、日本テレビほかで「Peeping Life TV シーズン1 ??」のオンエアがスタートした。