ナタリー PowerPush - bomi
自己流ポップを濃縮! 想像力を刺激する「ビューティフォーEP」
2012年のメジャーデビューイヤーをカラフルな色彩とともに駆け抜けたbomi。昨年10月リリースの1stアルバム「メニー・ア・マール」以来となる5曲入りの「ビューティフォーEP」では、インディーロックとダンスミュージック、そして歌詞のストーリーテリングとポップな言語感覚をぎゅっと濃縮。彼女の個性を高らかに鳴らす本作を前に、2013年の音楽モードについて語ってもらった。
取材・文 / 小野田雄 撮影 / 福本和洋
シビアな基準を持つことを肝に銘じた
──メジャーデビューから1stフルアルバム「メニー・ア・マール」のリリース、そして年末のワンマンライブと、怒濤の勢いで駆け抜けていった2012年はbomiさんにとってどんな年でしたか?
フルアルバムは曲数が多いのでゆるさや遊びも盛り込むことができたし、bomiの音楽観や「1cmPOP!(1センチメートルポップ)」と呼んでいたポップ感の概要が自分でもようやくつかめた年だったと思いますね。ワンマンライブは集まってくれた人がみんな自分のことを観に来てくれた人たちだったことに関して、自分の中で戸惑いもあったんですよ。だって、私が何を言っても「イエーイ!」って返ってくるわけじゃないですか。だから、途中で面白くなってきて「ごはん食べた?」「イエーイ!」みたいな、よくわからないやり取りをしちゃったり(笑)。もちろん楽しかったですし、ありがたいなとも思ったんですけど、一方で「ここでワーッとなりすぎちゃいけない」という気持ちもあったんですよね。というのも、その日のライブがいいパフォーマンスだったかどうか、自分の中にシビアな基準を持っていないと今後成長できないなって。だからワンマンが終わって、まずはそのことを肝に銘じましたね。
──そして年が明けて、2013年。Twitterを拝見しましたが、bomiさんは音楽だけじゃなく、ファッションやアート、カルチャー全般にアンテナを張って、いろんなことをツイートするようになりましたよね。
何か面白いことないかな?って、自分にとって刺激になりそうなことは常に探しているんですけど、私はひねくれた人間なので(笑)。今まではそういうことを曖昧なままにしておきたいという気持ちがあったし、熱が失われてしまうような気もして、実際に言葉にすることが難しかったんです。でも今年に入ってから、好きなものを好きといえる強さやイヤなものをイヤといえる強さを持って、好きなものをもっと自覚的に言葉にしていきたいなと思うようになって。今年の目標として「好きなものをたくさん見つける」っていうメッセージをパソコンのデスクトップ上に書いたんです。
──ツイートの中には「レコードプレイヤーを買いました」というものもありましたよね。
OKAMOTO'Sのレイジ(Dr)くんやその周りの友達とたまに遊んだりするんですけど、私より年下なのにみんな高校生の頃からレコードの貸し借りをしてて、すごい音楽に詳しいんですよ。そのことをうらやましがっているときにTWEE GRRRLS CLUB っていう女の子のDJチームが出した「INDIE POP LESSON」っていうディスクガイドの存在を知ったんです。私はインディーロックが好きなので、自分が知らないアルバムもいっぱい載ってるんだろうなと思って買ってみたら、レコードでしか売ってないアルバムばかりが載ってたんですよ。私はたまにDJをやったりもするので、これはそろそろレコードを買うタイミングなのかなということで、レコードプレイヤーを手に入れたんです。
──DJではどんな音楽をかけているんですか?
VIVIAN GIRLSやLE TIGREみたいなガールズロック、最近だとフランスのTHE NARCOLEPTIC DANCERSみたいなインディーロックが多いですね。自分が音楽活動していることもあって、自分の音楽制作を刺激するものを無意識のうちにチョイスしちゃうんだと思います。私が好きなのは、YEAH YEAH YEAHSだったりCAT POWERだったり、ボーカルの女子が「とがってるけどどこか傷つきやすそうな人」が多いかもしれない。それかCSSみたいにエキセントリックで元気な女の子。CSSはこの間DAFT PUNKのカバーをYouTubeで公開したんですけど、歌詞を見ながらテキトーに歌ってて。そういう彼女たちを見ると安心するんですよ。インディーロック好きの私としては、たとえテキトーだったとしても、ニュアンスや雰囲気さえ伝われば勢いでオッケーというところに憧れがあります。
1stで確立した音楽性の強度を高めた
──そうやっていろんなものを吸収しつつ、今作の制作のための曲作りは今年に入ってから始めたんですか?
そうですね。今回、ホントは6月くらいにリリースしたかったんですけど、曲作りに意外と時間がかかってしまって。3月の終わりにまだ1曲も録れてなかったので、リリースを7月にズラしたんです。どうして時間がかかってしまったかというと、今までは「これをレコーディングしたい」という曲を決め打ちで録音していたのに対して、今回はまずワンコーラスくらいの曲の断片を10曲くらい作って、そこに歌詞を乗せた上でいい曲を選んでレコーディングしたんです。よりよい作品をじっくり作るためにはそのやり方がよかったんですけど、作業量が今まで以上になってしまったのでなかなか大変でした。
──2012年の活動を踏まえて、今回の作品で自分の中に設定したテーマは?
新しい価値観を入れてまったく別のものに進化させるか、それとも1stで確立した音楽性の強度を高めるか。そのどちらかにしたいなと思ったんですけど、今回は音楽性の骨の部分を強くする方向を選びました。
──その象徴がタイトル曲の「ビューティフォー」ですね。この曲では王道のロックとダンスミュージックが融合、凝縮されています。
そう、いわゆるbomi節が色濃い曲ですよね。もし私がいわゆる日本のポップスをやるとしたら、言葉や歌心を届けるために、アレンジはそこまで必要ないと思うんですよ。でも私は洋楽がそうであるように、遊びやふざけた感じ、音感を意識した歌詞で表現したくて。洋楽テイストの曲を英語で歌うんじゃなく、日本で音楽をやる意味も考えた上で、洋楽っぽいマナーやグルーヴを日本語に置き換えたらどんな音楽になるのか。そこに普通の言葉を乗せると曲全体がいなたくなってしまうので、語感を生かした言葉と歌メロのバランスを探りながら、独自の変化を遂げていくのが今のbomiのポップ感覚なんじゃないかなって。今回は「メニー・ア・マール」での試行錯誤を経て、その旨味の部分を凝縮して、はちみつでいうところのローヤルゼリーのキャンディを作った感じですね。
──この曲の歌詞はポップな語感を生かしながら、上京して気持ちの上で東京という街で迷子になっている女の子の心境が歌われていますけど、bomiさんも大阪からの上京女子ですよね。
そうですね。この歌詞には自分の感情が色濃く反映されていますね。よくあるモチーフだと思うんですけど、実際に私は地元大阪での生活が息苦しく感じていたので、上京する際は「私は東京でもっとうまくやっていける!」と思っていたんです。でも東京に出てみたら、自分よりスゴい人は山ほどいるから、ガクンと落ち込む経験が何度もあって。そのたびに「なんで自分は東京にいるんだろう?」って考えるんですけど、「私は自分が輝いていたいから音楽をやっていたいな」って思うし、今のこの私だって、ほかの誰かから見たらまぶしく見えるかもしれないじゃないですか。そう考えたとき、自分に満足せずにいつまでもないものねだりをして悔しがっていたら、ずっと「何かが足りない!」って思い続けることになってしまうんだろうなって。だから、そういう心境をポジティブに転換するような歌詞が書きたかったんです。
収録曲
- イチゴのタルト
- Midnight Station
- ビューティフォー
- 歌え!猿のミリンダ
- CARNIVAL
ライブ情報
ふらげ祭。
- 2013年7月2日(火)
東京都 KATA(LIQUIDROOM ebisu 2階)
START 19:30 / END 22:00
※入場無料
ワンダフォーに踊れ2013
- 2013年7月14日(日)
東京都 代官山UNIT - 2013年7月17日(水)
愛知県 名古屋ell.SIZE - 2013年7月19日(金)
大阪府 心斎橋Music Club JANUS
bomi(ぼーみ)
2011年に新鋭プロデューサーwtfと出会ったことをきっかけに活動を開始。同年7月にタワーレコード限定で初のミニアルバム「Gyao!Gyappy!!Gyapping!!!」をリリースし、耳の早い音楽ファンの間で話題を集める。2012年6月にミニアルバム「キーゼルバッファ」でメジャーデビューし、同年10月に初のフルアルバム「メニー・ア・マール」を発表。11月には初のワンマンライブを東京・代官山UNITで開催し成功に収めた。2013年7月3日、5曲入りのミニアルバム「ビューティフォーEP」をリリースする。7月14日からは東京・代官山UNITを皮切りに初の東名阪リリースツアーがスタート。