ナタリー PowerPush - bomi
自己流ポップを濃縮! 想像力を刺激する「ビューティフォーEP」
別人が歌っていてもおかしくない5曲
──1曲目の「イチゴのタルト」は少女マンガのようなファンタジックな世界が展開されています。
この曲はメロディと合わせたとき、「タルト タルト イチゴのタルト」っていうフレーズの響きがいいねっていう発想から、タルトをプレゼントしようとして空回る女の子を主人公にラブソングを書くことにしたんです。この曲はボコーダーで歌っているんですけど、今回のミニアルバムは5曲とも別人が歌っていてもおかしくないくらい振り幅があるけれど、ちゃんとどの曲にも自分の色を残すことができたんじゃないかと思います。
──歌い方は意識して変えているんですか?
歌っているときにその曲に一番合う歌い方を考えて試した結果かなあ。例えば、2曲目の「Midnight Station」は最初に聴いたときに夢みたいな曲だなと思ったので、現実にない世界というか、映画「マトリックス」に出てくる仮想世界を思い浮かべながら歌詞を書いて。この曲はウィスパーで裏に抜ける歌い方が合いそうだなと思って、CAT POWERを意識して歌ってみたんです。3曲目の「ビューティフォー」はロックボーカルが合う歌だから、ハイトーンボイスをまっすぐに出すイメージで歌って。ディスコなベースラインとラテンリズムをフィーチャーした4曲目の「歌え!猿のミリンダ」は言葉遊びに徹した曲なんですけど、ここではP.i.L.(PUBLIC IMAGE LIMITED)のジョン・ライドンの歌い方を研究して、彼のピッチをズラしながら同時に声を揺らす歌い方に挑戦してみました。私は昔からずっとそういう声色遊びをやってきているので、今回も楽しみながら歌えましたね。
──ラストの「CARNIVAL」はギターサウンドに気持ちをぐんぐんアゲられる曲ですけど、この曲もbomiさんの心情が濃く反映されていますよね。
心情というより自分の人生観に近いかな。社会のはみ出し者が目的地のあてもなく流浪していくイメージなんですけど、私は昔からそういうモチーフの映画や物語がすごく好きで、この曲を聴いたときにも似たような絵が思い浮かんだんです。大きく捉えると人生も答えがないし、あてどないものですよね。私、19歳くらいのとき「私はなんで生きてるんだろう?」と真剣に悩んだ時期があって。「嘘でも適当でもいいから誰か答えを教えてくれたら楽なのに」って思いつつ、答えが見つけられなかったんです。というか、そもそも、人生に意味を求めること自体間違っているということに気付いて(笑)。おそらくは自分がこの世を去るときも「私、今から死ぬんだ」と認識することなく、気付いたら死んでたっていう感じだろうし、終わりがない旅を続けていく感じが人生なんだろうなって。そういう思いがこの曲の歌詞には込められていますね。
人生で大事なのは想像力を持ち続けること
──今回の5曲はどれも強烈な個性が際立っているので、「ビューティフォーEP」はリスナーを退屈させない作品になりましたね。
そうですね。毎日生きてて、飽き飽きする瞬間は誰しもあると思うんですよ。私、今25歳なんですけど、自分が25歳になるとは想像してなかったし。子供の頃に思い描いていた25歳はありえないくらい大人だったはずなのに、今の私はどうなんだろうとか(笑)。そして、25歳になった今の私は胸が締め付けられる映画のような素敵な世界で生きていたいという気持ちもあるけど、じゃあ映画のように旅に出ればすべてが変わるのかといったら、それも違うと思うんですよ。だから、日々の繰り返しの中で生きていきながら、想像力を持ち続けることがやっぱり大事だなって。もしその想像力がなくなってしまったら、自分にとって人生はつまらないものになってしまうと思うし、私にとってはその想像力を刺激するのが音楽だったり、映画やアート、あるいはホントにきれいな自然の景色を見に行ったりすることだったりして。
──だからこそbomiさんはアンテナを張って、日々面白いものを探すんでしょうし。今回も前回に引き続き写真を川島小鳥さん、アートワークをKiiiiiiiのLakin'(多田玲子)、ビデオクリップを伊藤ガビンさんという方々にお願いして、楽しいことをやろうと試行錯誤しているんですね。
みんな応援してくれてるし、自分が面白いなと思った人たちと一緒にものを作れるのがこの仕事の醍醐味、活動していて楽しいなと思える瞬間です。
──では最後に、本作リリース後の2013年後半の活動について教えてください。
最初にお話したように、私には2つの選択肢があって、今回は音楽性の骨の部分を強くする方向を選びました。だから、次は新しい価値観のもとで独自の進化を遂げて、新しい風を呼び込んだ作品を作りたいですね。今その作業に少しずつ着手しはじめているので、私としても今後の展開が楽しみだし、皆さんにも楽しみにしていてほしいです。
収録曲
- イチゴのタルト
- Midnight Station
- ビューティフォー
- 歌え!猿のミリンダ
- CARNIVAL
ライブ情報
ふらげ祭。
- 2013年7月2日(火)
東京都 KATA(LIQUIDROOM ebisu 2階)
START 19:30 / END 22:00
※入場無料
ワンダフォーに踊れ2013
- 2013年7月14日(日)
東京都 代官山UNIT - 2013年7月17日(水)
愛知県 名古屋ell.SIZE - 2013年7月19日(金)
大阪府 心斎橋Music Club JANUS
bomi(ぼーみ)
2011年に新鋭プロデューサーwtfと出会ったことをきっかけに活動を開始。同年7月にタワーレコード限定で初のミニアルバム「Gyao!Gyappy!!Gyapping!!!」をリリースし、耳の早い音楽ファンの間で話題を集める。2012年6月にミニアルバム「キーゼルバッファ」でメジャーデビューし、同年10月に初のフルアルバム「メニー・ア・マール」を発表。11月には初のワンマンライブを東京・代官山UNITで開催し成功に収めた。2013年7月3日、5曲入りのミニアルバム「ビューティフォーEP」をリリースする。7月14日からは東京・代官山UNITを皮切りに初の東名阪リリースツアーがスタート。