ナタリー PowerPush - bómi

過激派ガールズロックの新鋭 自身のルーツと変化を語る

もっとポップでキャッチーなものを作りたい

──これから構築していくbómiサウンドについて、wtf氏とはどんな話をしたんですか?

インタビュー写真

wtfと初めて会ったときに、「日本にはあんまりいない感じの、とにかく力が抜けててカッコいいことやりたいね」って話したんです。それがなんだか、すごくピン!と来て。私はこれまでストーンズやレッチリみたいな、いわゆる“ロック”を全く通ってこなかったので、ゴリゴリな感じって正直よくわかんないし。もし私がロックをやるんだったら、なんかちょっとユルい感じのが逆に面白いんじゃないかと思って、そんなことをwtfに伝えました。全く知らないことをやるほうが、余計な知識がない分、感覚で物申せるじゃないですか。ちょっとでもかじっていると「恥ずかしくてこんなこと言えない」ってなる局面もあると思うんですけど。感覚的に話せるってクリエイティブではとても大切なことだと思います。

──プライベートで聴く音楽も変わりましたか?

変わったというか、増えましたね。この1年で海外のインディロックをたくさん聴くようになって。フジロックデビューもしたし(笑)。

──曲を作っていく中で、自分が求めていたポップ感がどんどん解放されている実感があった?

うん、特に今作にはすごくあります。前作(ミニアルバム「Gyao! Gyappy! Gyapping!!!」)は初めての共同作業だし、「どこまで突っ込んでいいんだろう?」って、様子を見ながら制作していたところがあったんですけど、それを経て得たものがお互いにすごくあって。自分の殻を破るためにも、もっと強烈なインパクトのある曲が必要だと思ったんです。それでwtfと話して、「サウンドはある意味もっとわかりやすく、アルバム全体にキラキラしたポップネスがあって、フレーズやフックのメロディはよりキャッチーで耳に残るものを作りたい」ということを伝えました。その話し合いを経て最初にラフがあがってきたのが、「麹町のスネーク」でした。

──それは興味深いですね。

でしょ!(笑) でも、ポップであることって、否定されがちだけど、私の場合は自分のそういう部分を受け入れたことによって、すごくいいアイディアがぽんぽん浮かぶようになって。まぁ、性格がひねてるんで、最終的に、どうしてもちょっとひねくれたポップにはなってしまうのだけれど、スネークちゃんみたいに(笑)。

これだけエッジィにしてやっと人の耳に止まるんだ

──1曲目の「iYo-Yo」はポップだけどどこか切なさも漂うラブソングになっている。

そうですね。いいバランスにある曲だと思います。「iYo-Yo」は既にライブで何回かやっていて、評判がいいんですよ。全曲聴かせる感じの曲だと疲れるけど、テンション高い曲たちの中にこういうのも1曲あると、グッと引き立つんじゃないかなって。ライブでのこの曲の立ち位置も想像しながら作りました。(奥歯を噛みしめながら)でもこの曲は、私の恋愛事情をさらけだしてるんですけどね。

──なんで奥歯を噛んでるんですか(笑)。

いや、なんか、私ホントに根がひねくれすぎていて、帰ってほしくないのに「帰っていいよ」とか普通に言っちゃうんですよ、バカみたいに(笑)。それで相手が帰っていく姿を窓から見てたら急に寂しくなってきて、結局あとから電話して「帰ってきてよ」って言っちゃったりとか。もうグダグダですね。その恋愛が完全に過去のものになったから書けたんですけど(笑)。

──そのほかの歌詞は、独特の言葉遊びをもって不可思議な中毒性のあるポップサウンドを際立たせている。

wtfのサウンドの中には既に言葉の響きが潜んでいて。それを私がどう引っ張っていけるかだと思います。今は何も考えないで歌詞を書くことが多いですね。「考えないようにしよう」とも考えないというか。それでも曲の中に残るべきものは残る、と思うし。

──そういう意味でも「麹町のスネーク」はbómiさんにとっての最初のキラーチューンだと思う。

ありがとうございます。この曲、すごく評判が良くて自分では驚いているんですけど(笑)。友達とごはんを食べていたときにすごくきれいな30代半ばくらいの女性がいて。その人が日本酒を飲みながら「若いっていいよね、それだけで武器じゃん。ホント、人生楽しみな!」って言ってて。その感じにすごくグッときちゃって(笑)。それがこの曲のイメージにつながりました。最初は、サウンド的にも、歌詞的にも、エッジィすぎるかなと思ったんですけど。でも今はこれだけエッジィにしてやっと人の耳に止まるんだなって感じてます。

──ラストの「Willy Wonka」はトリッキーなラップ曲で。この曲で終わるあたりにも、これからどう転がっていくかわからない面白いスリリングさを感じる。

私自身、「どうなるかわからない」ってよく言われるんですよ。「明日にも音楽を辞めて書道家とかになりそう」とか意味のわかんないことを言われたり(笑)。それは冗談だとしても、そのときどきに自分が楽しいと思ったところに向かっていきたいですね。がんばっても必ず報われる時代じゃないけど、だからこそ常に自分の感覚に素直でいたいし、そういう姿勢で音楽をやっていけたらと思います。

インタビュー写真

タワーレコード限定ミニアルバム「OH MY POOKY!!!」 / 2012年8月8日発売 / 1050円(税込) / TWCP-17 / Amazon.co.jpへ

  • 「OH MY POOKY!!!」ジャケット画像
CD収録曲
  1. iYo-Yo
  2. 麹町のスネーク
  3. PPP…
  4. Mu・Zi・Q
  5. Willy Wonka
bómi(ぼーみ)

1987年生まれ。韓国人の両親を持つアメリカ出身の“ユル系ロックガール”。大阪で育ち、大学入学を機に上京。2007年より楽曲制作を開始し「宝美」名義でライブやCDリリースなどを行う。2011年に新鋭プロデューサーwtf(ダブリューティーエフ)と出会ったことをきっかけに「bómi」としての活動を開始。同年7月に初のミニアルバム「Gyao! Gyappy!! Gyapping!!!」をリリースし、耳の早い音楽ファンの間で話題を集める。2012年2月に2ndミニアルバム「OH MY POOKY!!!」を発表。また、2月10日にはリリースパーティを渋谷CHELSEA HOTELで開催することが決定している。