音楽ナタリー PowerPush - bohemianvoodoo

メロディを追求する、歌えるインストバンド

ドラムってアートよりデザインに近い楽器

──では、新しく加入した山本さんの色が特に強く出ている曲を挙げるとすれば、どれになりますか?

山本拓矢(Dr)

木村 どの曲もそうなんですけど……あえて1曲挙げるなら、「Cleopatra's Dream」(バド・パウエルのカバー)かな。ドラムソロが間にあって、そこはすごく拓ちゃんらしいなって。

山本 ドラムって、ほかの楽器と比べると、アートよりデザインに近い楽器だと思うんです。ゼロからものを作るというよりも、好きなドラマーのリズムとか、いろいろ聴いて、それを自分なりにまとめる作業をしたときに自然と出てくるのが、自分らしいリズムってことなのかなって。

──曲を作る人のアーティスト性をサポートするようなイメージもありますか?

山本 そういう部分はあると思います。例えば、ジャズとロックをかけ合わせるにしても、リズムの部分が大きいと思います。

歌が入ってもインストバンド

──そして、今回初めてのボーカル曲が3曲入っています。インストバンドがボーカルを取り入れるにあたっては、いろいろと迷う部分もあったかと思うのですが、実際いかがでしたか?

木村 何を迷ったかって、インストバンドっていう軸はぶれたくなかったんですけど、「歌ものになったのか」って、マイナスな捉え方をされる可能性もなきにしもあらずっていうとこですよね。ただ、今回参加してくれた2人(Hiro-a-key、Aki Sawazaki)っていうのは、普段から一緒に飲んだりする仲のいいメンバーで、出す出さないは別として、自然と曲作りをしてたんです。そうやってできたものっていうのは、やっぱり世に出したいし、2人とも僕らのことをすごくよく理解してくれてるので、歌が入ってもボヘの曲であるっていうことはぶれないはずだってわかってたんですよね。

──どこかからゲストボーカルを連れてきて、乗っけてもらったっていうのとはまったく違うと。

Nassy そうですね。2人と曲を作ってるって聞いたときも、全然心配にはならなかったです。

木村 あの2人も童貞感あるしね(笑)。表記上はフィーチャリングですけど、彼らもバンドメンバーぐらいの感じでした。

bashiry 歌ものにしても、やっぱり「こいつに歌ってほしいから書く」っていうところから始まってるんで、最初からイメージがはっきりしてるぶん、bohemianvoodooらしさはむしろ際立ってるのかなって。

メロディを大事に、はずっと変わらないと思う

──最初にもおっしゃっていたように、「メロディが軸」っていうのがまずあるわけで、歌ものっていうのもあくまでその表現の中のひとつということですよね。

bashiry 歌えるインストバンドってことですね。

木村 まあ、これからもどんどん変化はしていきたいと思ってて、20年後にはbashiryの弾き語りになってるかもしれないですけど(笑)、メロディを大事にオリジナル曲を作っていくっていうのは、ずっと変わらないと思います。

bohemianvoodoo

山本 さすがにノイズバンドにはなってないでしょうね(笑)。

木村 うーん……わかんない。

bashiry メロディがあればいいんじゃない?(笑)

──メロディアスなノイズバンド(笑)。

木村 まあ、それぐらいの思考の幅は残しておきたくて、今回初めてがっつり7拍子の曲(「Seven Color Days」)をやったりもしたし、カバー曲にしても、昔だったら「そんなもんは入れん!」ぐらいの感じでやってたしね(笑)。

bashiry カバー曲にしても、ボーカル曲と同じで結果的にこうなったというか、1月にブルーノートに出させてもらったときに、オリジナルしかない僕らに「カバー曲をやってください」っていう指令があったわけなんです。でも、そのとき初めてやってみたら、すごい反応がよくて、今までやってこなかったぶん逆にすごく自信にもなったので、自然と「これ次のアルバムに入れよう」ってなって。

──自信がついて、それだけ自由度も高まったっていうことでしょうね。それによって、手駒も増えたというか。

bashiry 大人になってきた感じはしますね。

──童貞脱したんじゃないですか?(笑)

木村 いや、その心は忘れてないです(笑)。

──(笑)。では最後に、今後の展望を聞かせてください。2月にはキネマ倶楽部でのレコ発が予定されていますが、来年はどんな活動をしていきたいとお考えですか?

bashiry 今年1年はこの作品を作るのに集中してたので、ライブの本数は少なかったんですけど、来年はこの作品を引っさげて、いろんな人に会いに行きたいですね。やっぱり、作品ってそのときそのときの出会いによってできるもので、今回の作品もこの2年間の集大成だと思うんです。そうやってできたものが一番自然だし、肩ひじ張らずに、ずっと聴ける作品になるのかなって思うので、これからもそうやって作品を作っていきたいですね。

ニューアルバム「Aromatic」 / 2014年11月19日発売 / 2700円 / Playwright / PWT-013
「Aromatic」
収録曲
  1. Seven Color Days
  2. El Ron Zacapa
  3. Cardamom
  4. Mothertree feat. Aki Sawazaki
  5. Families
  6. Ferris Wheel
  7. Cleopatra's Dream
  8. Skyroad
  9. Relation Ship feat. Hiro-a-key
  10. Father And Bookshelf
  11. A Peacock
  12. Jet Setter feat. Hiro-a-key & Aki Sawazaki
  13. Flyaway
bohemianvoodoo(ボヘミアンブードゥー)
bohemianvoodoo

bashiry(G)、木村イオリ(Key)、Nassy(B)、山本拓矢(Dr)によるインストバンド。2008年に結成され、東京や神奈川を中心にライブ活動を開始する。2011年にはMotion Blue yokohama初登場にして同所歴代観客動員記録に名を連ねる。2012年12月、新鋭レーベル・Playwrightより2ndアルバム「SCENES」を発表し、近年の若手ジャズバンドとしては異例のセールスを記録。2013年、ドラマーが井上孝利から山本拓矢に交代。2014年1月にはブルーノート東京に出演するなど急成長を遂げている。同年11月、3rdアルバム「Aromatic」をリリース。