ナタリー PowerPush - BoA

オンリーワン歌姫が明かす“今の私”

振り付けが頭に残るような衣装

──「The Shadow」のMVはどんなコンセプトで撮ったんですか?

あれは歌詞の世界を映像化した感じ。テクノクレーンっていうカメラを使って、ステージ上の私と、それを観る私と、っていうふうにいろいろ変わる視線の変化を面白く見せてるんです。

──全部で6ポーズの衣装が楽しめるビデオに仕上がっていますね。女性としてはさまざまな衣装が着られて楽しかったんじゃないですか?

楽しいけど、その分踊らないといけないから。ダンス以外も入れると全部で7シーンあるんですよ。だから撮影も3日間かかったし大変でした。

──中には黒のタイトなミニスカートもあるし、メインの衣装も胸元がシースルーでパンツにはスリットが入ってて、セクシーでした。

確かに(笑)。けど、今の世の中だったらあれくらいの露出はOKなんじゃないですか? 安っぽい露出は嫌いなんですけど、衣装の完成度を高めるための露出はそんなに抵抗がないし、あのスリットも自分のアイデアだったんです。

──へー、そうだったんですか。

振り付けを考えたときに、それくらいポイントになる衣装がないとなって思って。この曲、ポイントを付けるのが難しかった曲なんですよ。すごくキャッチーなメロディやフレーズがある曲じゃないから、衣装と振り付けをポイントにしようと。で、振り付けが頭に残るような衣装で行こうと思ったんです。

──あの衣装は美しかったです。スリットの下に覗くヒールも高くて、踊るのは大変でしょうけど、足がきれいに見えるし。

ありがとうございます。以前、移動中の飛行機の機内で海外の雑誌を観てるときに、ああいうパンツをモデルさんが履いてて、それを携帯のカメラで撮っておいたんですよ。このデザインどっかで使えるなと思って。で、今回の振り付けを見て、その服を思い出して、こういうパンツを作りましょうってアイデアを出したんです。確かそのブランドはBALMAINだったと思うんですけど。

──なるほど。自分をプロデュースするために、普段からいろんなところでアイデアの引き出しを作ってるんですね。

作ってますよ、もちろん(笑)。

客観的にBoAを見る力が付いてきたように思います

──アルバム「IDENTITY」で初めてセルフプロデュースしてから約3年、BoAさんが思う自分らしさや、セルフプロデュースの姿勢に変化はありますか?

自分の好き嫌いも変化しているから、それはいつも変化していて。今は自分が好きなものをやるよりも、曲に合わせてどうやればBoAらしさが入った新しいチャレンジができるかっていうことを考えてますね。「今これが流行ってます」と言われても、私は流行ってることを理由にしてやりたくないというか。私は今こういう音楽をやってるからこの音楽に合ってるものはなんだろう?って考える。そして、それが見つかったら、それを一番BoAらしくマッチングできる方法をスタッフと見つけて作り上げていくっていう。

──「IDENTITY」の頃に考えてた“セルフプロデュース”とは?

あのときは、いい音、カッコいい音を作りたいっていう。自分がやりたいことをがんばって形にしようとしてた頃で、どういうふうにすれば自分らしさを出せるのかがまだわかってなかった。でも、あのアルバムの経験でプロデュースする力がより高まったと思います。あれをスタート地点にして、そこから「K-POP STAR」の経験もありながら、客観的にBoAを見る力が付いてきたように思います。

──「K-POP STAR」で経験したことというのは?

あの番組では、私以外の2人の審査員はプロデューサーという目線で見ていて、私はそういう目線もありつつ、アーティストとしてのアドバイスもしてるんですね。あと、唯一の女性審査員だから、男性が気付けないところをキャッチできたりするんです。で、自分が考えられなかったことを私以外の2人の審査員がコメントしてたりすると「あー、そういう目線もあるか」と思うし、もちろん自分の評価と彼らの評価が一致するときもあるし。だから、私にとっても勉強になることが多い番組でしたね。プロデューサーとして必要なことを学んだ気がします。

リスペクトは努力だと思う

──ところで、「Only One」という曲名にちなんだ質問を。男性にとってOnly One=かけがえのない女性になるために必要なものとはなんだと思いますか?

存在感? インパクト?(笑) けど、恋愛ってお互いに尊敬心がないと続かないと思うんですよね。尊敬できる相手になると愛される女性にもなるし、かけがえのない女性にもなるんじゃないかな。

──恋にはリスペクトが大事だと。でも、相手を心の底からリスペクトするのって、なかなか難しいものですよね。

でも、自分を尊敬してくれる相手のその考え方をリスペクトするっていう考え方もあるじゃないですか。そういう関係になれる場合はいくらでもあるし。それにリスペクトは努力だと思う。相手を思い続けることも大事ですけど、自分も彼からずっとリスペクトされる存在でありたいと思っていろんなことを伸ばしていく努力をやっていかないと。

──なるほど。常にそういう意識でいると、恋が長続きしそう。

そう。しかも、それを自然にね。それは相手のためでもあるけど、自分のためでもあるから。恋愛を長続きさせるっていうんじゃなく、自分の人生をアップグレードし続けるっていう意識。それができると結果的に恋愛が長続きするっていう。そして結果的にいい人間になれるっていう(笑)。

──そういうのは自分の恋愛経験上気付いたことなんですか?

いや、周りの失敗を見て「なるほどー」って気付いたんです(笑)。理想はこれだって(笑)。周りのカップルの話を聞いてると、前はこんなところが好きって言ってくれたのに最近無視されるようになったとか、それでケンカしたとか言ってて。お互いに慣れすぎて、相手に頼りすぎて、実は自分がわがままを言ってるっていうことすら忘れちゃうとか気付かないっていうパターンが多いなって。

──結果、「Only One」のような結末を迎えちゃうんだなって(笑)。

あはは。そういうことです(笑)。

ニューシングル「Only One」 / 2013年2月27日発売 avex trax
CD+DVD盤 [CD+DVD] 2100円 / AVCK-79085/B
CD盤 [CD] 1050円 / AVCK-79086
CD収録曲
  1. Only One
  2. The Shadow
  3. Only One(INST)
  4. The Shadow(INST)
DVD収録内容
  • Only One(ビデオクリップ)
  • The Shadow(ビデオクリップ)
  • Only One(メイキング映像)
  • The Shadow(メイキング映像)
BoA(ぼあ)

1986年生まれ、韓国出身の女性シンガー。2000年8月に韓国で歌手デビューを果たし、翌2001年5月にはシングル「ID; Peace B」で日本デビュー。2002年1月発売の4thシングル「LISTEN TO MY HEART」でブレイクして日本でもトップスターの仲間入りを果たす。その後も「VALENTI」「奇蹟 / NO.1」「JEWEL SONG」「Shine We Are!」「メリクリ」「Everlasting」など多くのヒット作を送り出し、2009年3月にはベストアルバムと全米デビューアルバムを1つにした“2in1”アルバム「BEST & USA」を発表。現在は韓国や日本のみならず、中国や台湾などのアジア諸国やアメリカなどでも積極的に活動を行っており、2013年2月に日本では約1年2カ月ぶりとなる新曲「Only One」をリリースする。