ナタリー PowerPush - BoA

オンリーワン歌姫が明かす“今の私”

「これって自分の経験ですか?」って韓国でもうさんざん聞かれて(笑)

──歌詞では別れのどんな心境を描こうと思ったんですか?

別れるときってお互いなんとなくそれを感じてることのほうが多いと思うんです。いきなりフラれたっていうことももちろんあると思うんですけど、お互いちょっと冷めていって、別れようと決めて、別れを告げるために彼に会うっていうシーンをイメージして書いたんです。好きな気持ちはまだあるけど、このまま続いてもお互いにいいことはないと思うっていう。で、「これって自分の経験ですか?」って、韓国でもうさんざん聞かれて(笑)。

──それ、僕も今、聞こうと思ってました(笑)。

BoA

自分の本当の体験ではないんですけど、まあ、なんとなくこういうような経験があったからこの歌詞が書けたとは思うんですけど(笑)。

──この歌詞は、「♪いつの日か」から始まる最後のサビがポイントだと思ったんです。この歌詞があることで恋を重ねていく女性像が表現されているし、大人の恋の歌にもなってると思うんです。

私もそこの歌詞はすごく好きなんですよ。もともと韓国語の「Only One」を作ったとき、サビは全部違う歌詞にしてたんです。でも、(編曲家の)キムさんが「それだと歌うときにけっこう大変だよ」ってアドバイスしてくれて、サビはリピートすることにしたんですけど、最後のそこだけは変えるわけにはいかないっていうこだわりがあって。

──なるほど。そんな裏話があったんですか。

最後に別れた恋のその後を書いてあげないと、結果のないまま終わっちゃうんじゃないかって思ったんですね。みんな、ひとつの恋が思い出になって次の恋に行くっていうパターンじゃないですか。別れてすぐは大変かもしれないけど、いいことも悪いことも時間が経てばいい思い出になってると思うんですよ。そうして私も違う恋をするだろうし、あなたも私の記憶が薄まって思い出になっていくんだろうけど、この恋は素敵でしたねっていう終わり方にしようと。

──別れた女性にずっとそう思ってもらえているのは男性にとって喜びかも。というか、そう思っていてほしいという願望があると思う(笑)。

そうなんですよね。男性は初恋とか終わった恋の思い出をずーっとキープしてる。

──女性は恋を上書き保存していくといいますしね。

そう。終わったら「はい。次」って(笑)。でも、私は残るけどなあ。なんか20何年間生きてきて、悪い思い出もあったし、いい思い出もあったけど、悪い思い出って意外と笑える話になるんですよ。「あんなバカなことあったよなあ」みたいな。

──それはすごく共感できます。

あと、お酒を飲むときのつまみになる話も悪い思い出のほうが多い(笑)。失敗談とかバカやっちゃった話とか。「あの恋はあれで失敗したのかなー。あはは」みたいな(笑)。

リリカルヒップホップ+カップルダンス

──「Only One」のMVのダンスパートはナッピー・タブスによるものですね。

この曲を振り付けるんだったら、映画(「COBU 3D」)で一緒に仕事をした彼らにリリカルヒップホップをやってもらいたいっていうイメージがあって。彼らは夫婦なんですけど、そのとき奥さんが妊娠中だったんですよ。だから、やってもらえるかな?と思ったんですけど、ありがたいことに「BoAの仕事なんでぜひ受けます」って応えてくれて、振りもすごくカッコいいものに仕上がって。

──歌詞のストーリーや繊細な情感がダンスで表現されていますね。

歌詞の1個1個を踊りや動きで説明していくのがリリカルヒップホップっていうジャンルなんですけど、ナッピー・タブスってもともとカップルダンスがすごく上手な方たちで、カップルダンスをやりながらリリカルヒップホップをやる方たちなんです。で、マドンナとかジェニファー・ロペスの振り付けも手がけてるから振りを付けるのも上手だし、ストーリー性を作るのも彼らが初めてそういう手法を取り入れたんです。

──日本的にいうと組み体操っぽい要素がありますよね。あとバレエとかジャズダンス。

そうですね。ヒップホップがベースになってるんですけど、最後のほうではダンサーの手の動きと私の動きを合わせてカタチを作ってみたりとか。リリカルヒップホップは数年前から流行ってるからダンスをしてる人たちの間には知られたものだけど、それを発展させてひとつの作品を作るっていうのはまだあまりないと思うんです。

──特にこういうポップスのMVのダンスシーンで取り入れるのはね。それにカップルダンスも日本ではまだあまり見受けられない。

そう。別れの曲なので曲の途中でカップルダンスを入れたいと思って。今回のMVは自分が一番上手なことをナッピー・タブスに引き出してもらえた感じですね。でも、(リスナーは)そういうふうに踊る私を見たことがないだろうから新鮮じゃないかと思います。

アーティストBoAが感じるプレッシャーと喜び

──カップリングの「The Shadow」は、韓国でのアルバム「Only One」にも収録された楽曲で、それに日本語詞を付けたもの。これはどんな思いを書いたんですか?

これはアーティストBoAが感じるプレッシャーと喜びを歌っていて。簡単に説明すると、光の下にいると影ができるじゃないですか。私の場合、その影はファンとも例えられるし、リスナーとも例えられるし、パパラッチの場合もある。で、スポットライトを浴びるのはすごくうれしいけど、そのスポットライトで生まれる影がたまにすごくプレッシャーになったり、悲しくさせたり、つらくさせたりすることもある。でも、こうした活動を続けられるのはファンとか“shadow”にあたる人たちの応援や関心があるからで、その影がすごく幸せをくれる場合もあるし、私が音楽を続けられる力になる場合もあるっていう。そんな思いを書いたんです。

──加えて、この曲では「変わることは悪いことじゃない」っていう気持ちも歌っていますよね。

時間の経過や太陽の動きによって影の形も変わっていくじゃないですか。その部分の歌詞はそれをイメージしたんです。

──季節によって影の長さは違うし、1日の中でも変わるわけで。

そう。だから、私の立ってる場所だけが変わっていくわけじゃなくて、時間が経てば、それを見聞きしているあなたたちも年齢を重ねて変わっていくし、時代も変わっていくっていう。だから、私のアーティストイメージが変わることはそんな不自然なことじゃないんだよっていう。そういう変化を歌ってるんです。

ニューシングル「Only One」 / 2013年2月27日発売 avex trax
CD+DVD盤 [CD+DVD] 2100円 / AVCK-79085/B
CD盤 [CD] 1050円 / AVCK-79086
CD収録曲
  1. Only One
  2. The Shadow
  3. Only One(INST)
  4. The Shadow(INST)
DVD収録内容
  • Only One(ビデオクリップ)
  • The Shadow(ビデオクリップ)
  • Only One(メイキング映像)
  • The Shadow(メイキング映像)
BoA(ぼあ)

1986年生まれ、韓国出身の女性シンガー。2000年8月に韓国で歌手デビューを果たし、翌2001年5月にはシングル「ID; Peace B」で日本デビュー。2002年1月発売の4thシングル「LISTEN TO MY HEART」でブレイクして日本でもトップスターの仲間入りを果たす。その後も「VALENTI」「奇蹟 / NO.1」「JEWEL SONG」「Shine We Are!」「メリクリ」「Everlasting」など多くのヒット作を送り出し、2009年3月にはベストアルバムと全米デビューアルバムを1つにした“2in1”アルバム「BEST & USA」を発表。現在は韓国や日本のみならず、中国や台湾などのアジア諸国やアメリカなどでも積極的に活動を行っており、2013年2月に日本では約1年2カ月ぶりとなる新曲「Only One」をリリースする。