2023年をもって解散するBiSHは、2022年1月から12カ月連続で新曲をリリースしている。始まった当初は長く感じられたこの企画も残すところあとわずか。11月23日には12カ月連続リリース第11弾にあたるニューシングル「脱・既成概念」が発売されるが、これに先駆けて11月7日に同曲の配信がスタートした。
BiSHの躍進は解散発表後もとどまることを知らず、リリースする楽曲でも新たな試みにチャレンジ。4月に一般公募によるBiSH初の楽曲コンペの開催がアナウンスされた。そのコンペで選ばれたのは、なんと白濱亜嵐による提供曲「脱・既成概念」。多くの人が知る通り、白濱はGENERATIONS from EXILE TRIBEのリーダーとして活動するのみならず、EXILE、PKCZ®にも在籍する人気アーティストである。
音楽ナタリーでは「なぜ白濱亜嵐の楽曲が選ばれたのか?」という疑問を解決するべく、WACK代表・渡辺淳之介と白濱の対談を企画。コンペにまつわる渡辺の開催動機と白濱の応募動機をはじめ、国内の音楽シーンにおいて存在感を放つWACKとLDHそれぞれの印象、BiSHが歌う「脱・既成概念」に込めた思いなどについて話を聞いた。
取材・文 / 田中和宏撮影 / 塚原孝顕
なぜ白濱亜嵐?
──BiSHの12カ月連続リリース企画も残すところあと2作品となりました。まだ終わっていませんが、まず現段階でのこの企画について振り返っていただけますか?
渡辺淳之介 この企画はBiSHの解散が決まってからやることが決まりました。レコード会社とも一緒に話をして、とにかく話題を常に作るためにどんどん出していこうと。しかしですね、大変なのでもうやりたくないです(笑)。
白濱亜嵐(GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE、PKCZ®) そうですよね。想像するだけでヤバいです。
渡辺 11月のシングルは、亜嵐くんが歌詞を書いてくれたので楽です(笑)。
──BiSH楽曲のコンペを行うと告知されたのが4月末ですが、亜嵐さんは一般の方と同じように応募したんですか?
白濱 普通に応募しました。実は僕、けっこういろんなコンペに応募してるんです。これまでは事務所を通して送るという感じでしたけど、BiSHのコンペは自分で見つけてSLAY HIROKIと一緒に応募しました。Googleの応募フォームに住所とか電話番号も全部書いて(笑)。音源のリンクを載せる項目があったんですけど、Dropboxがいいのかギガファイル便がいいのかとか悩んだので、あらゆるプラットフォームのリンクを載せて4曲送りました。
渡辺 このコンペは応募総数が約600で、1クリエイターあたり複数曲の場合もあったので1000曲を超えてました。ちょっとずつ聴いていくのも無理そうだったので、エイベックスのスタッフと一緒に丸1日かけて一気に聴きました。それでもフル尺を聴くのは無理だったのでサビまでで。あまり細かい基準は設けてなかったんですけど、イントロが長い曲は「早く始まれよ!」ってだんだんムカついてくるんですよ(笑)。だからコンペに応募するならイントロは長くないほうがいいかもしれないです。
白濱 確かに(笑)。僕が送った4曲のうちの1曲が、シングルになる「脱・既成概念」のデモで。普段から一緒に楽曲を制作しているトラックメイカーのSLAY HIROKIと、生のギターはKENJI03(BACK-ON / 「脱・既成概念にはHi-yunk名義で参加)に弾いてもらいました。PKCZ®の「GLAMOROUS(DubRock REMIX)」の布陣と同じこの3人で作ることが多いので。「脱・既成概念」のデモ自体は過去に作ったものをブラッシュアップしたもので、応募してしばらく経ったあとにレコード会社の方から連絡があったんです、「本人ですか?」って(笑)。
渡辺 はははは。普段プライベートで使ってるようなメールアドレスでしたもんね。これはちゃんと載せてほしいんですけど、このコンペで亜嵐くんの曲が本当に一番よかったんですよ。もともと接点もなかったので、“白濱亜嵐と名乗る別人”からの応募なのかなと思ったくらいだったけど、デモを聴いたら確かに本人っぽいし、本人かどうか疑心暗鬼ではあった。だけど曲としてはこれが一番よかった。
白濱 僕はコンペ探しが日課になってるんですよ。松隈ケンタさんがBiSHの曲を作っているということはもともと知っていたから、解散を発表したタイミングでコンペをやる意味をすごく考えました。で、解散が控えている状況でも新しい可能性を探していて、きっと「今まで通りじゃない曲調、サウンドの曲」を探しているんだろうなって。僕のほうでロック系のBiSHっぽい曲のストックもあったんですが、きっと求めているのはそういう曲じゃないだろうと思って、どのデモを送るか決めました。過去のコンペ経験からいろいろ見えるんですよね(笑)。作家として本気の勝負をしているから、募集者の意図を汲み取って、勝ちを狙っていかないと。もし僕が何かのつてを使って選ばれたら、ほかの応募者に失礼だと思いますし。
渡辺 確かに、こちらとしてもつてでお願いされたら跳ね除けてたかもしれないですね。このコンペには有名な作家さんとかバンドマンにも応募いただいている中、繰り返しになりますけど(白濱の曲が)一番よかったんです。
白濱 そう言っていただけるとめちゃくちゃうれしいです。
──BiSHサウンド=松隈ケンタという図式がグループ結成以来ずっとありましたよね。8月のシングル「サヨナラサラバ」も外部クリエイターからの提供曲となっていましたが、この一連の動きにはどういった意図があるんでしょう?
渡辺 12カ月連続リリースということもあるし、僕が疲れてきたということもあるかも知れないですけど……大きくなったBiSHが今、解散に向かっている。そこに何か新しい風を入れたいという気持ちがすごくあったんです。実は第1期BiSでも外部から楽曲を提供してもらったことがあるので初めてではないんですけど、今回せっかくなのでひさびさに外部の方にお願いしたら面白いかなということでやらせてもらいました。だからこそ、こうして出会えたわけです。
白濱 感謝ですよ。出会えてうれしいです。初めてご挨拶できたのはレコーディングのときですよね。でも僕は渡辺さんのことは一方的に見かけたことあるんですよ、「紅白」の現場とかで(笑)。
渡辺 ええー!
白濱 「あっ、本物の渡辺さんだ!」って(笑)。SNSも覗いてましたし、著書も拝読していて、考え方が好きでめちゃくちゃ面白い人だと思ってたんです。BiSHに関してはすごく面白いアーティストが出てきたなって知ったときに思いました。NHKの番組で一緒になったことがあるんですけど、紹介VTRで「DEADMAN」のライブ映像が流れて、客席に乗り込んでダイブしてるし、めっちゃ叫んでるし、ヤバい女の子たちという印象でした(笑)。僕の先輩がやってた音楽番組にBiSHさんが出演していて「BiSHっていうめちゃめちゃ面白いアーティストが出てきたの知ってる?」ってメンバーで話題になったこともすごく覚えてます。
渡辺 「DEADMAN」(2016年5月発表のBiSHメジャーデビューシングル)のときかな?
白濱 番組で一緒になったのは「シブヤノオト」で、歌っていたのは「プロミスザスター」と「DEADMAN」でしたね。楽器を持たないアーティストなのに、ロックフェスでものすごく盛り上がるという光景も新鮮でした。僕はフェスにあまり行かないので情報としてチェックしてるんですけど、どのフェスにもラインナップされていて。そういうところはうらやましいと思いました。
次のページ »
亜嵐こだわりの歌割り