音楽ナタリー Power Push - BiSH
6人が生み出した“最エモ”アルバム「FAKE METAL JACKET」
最高傑作のアルバムができた
──そして2ndアルバム「FAKE METAL JACKET」が完成し、1月20日にリリースされます。タイトルの由来は映画「フルメタル・ジャケット」ですか?
渡辺 そうですね。「Full metal jacket」って弾丸の意味があるんですけど、フェイクにすることでまだ人は殺せない、みたいな心情を表現して名付けてみました。
──アルバム全体のテーマはなんでしょう?
渡辺 今回はとにかくエモーショナルです。感情を揺さぶるっていうのを意識して作ったので、曲のアレンジでもシンセの音はすごく少なくしてます。最近のアイドル楽曲だとシンセを多用する傾向なんですけど、今回は少なめにして効果音もBiSやBiSHの1stと比べても少ないです。だからかなり全体的にスッキリしてると思います。
──ボーカルも生に近い印象を受けました。
渡辺 あまり修正してないんですよ。なるべくそのままの状態を生かしてます。それはある意味で彼女たちが半年ですごく成長したってことでもありますね。モモコはとくに成長したと思いますよ。自分で言うのもなんですが、最高傑作のアルバムができちゃったと思います。
──アルバム冒頭の3曲「スパーク」「BiSH-星が瞬く夜に-」「MONSTERS」と「サラバかな」は1stアルバムの収録曲です。2ndアルバムでは新メンバーを加えた再録バージョンになってますね。
渡辺 2ndアルバムからBiSHを聴いてみようという人もいっぱいいると思うんですよ。それなら1stアルバムで盛り上がった曲を新メンバーを加えて再録しようって思って。この4曲は好きな人が多いし、新しく聴いてくれる人にも届けたいなと。
──パートも変わりましたしオリジナルと比べても少し違う印象を受けました。
渡辺 オケもちょっと変わってます。細かいところで松隈(ケンタ)さんがいろいろといじってて。
──アルバムの構成としては4曲目から新曲が続きます。まずはハシヤスメさんが作詞した「Primitive」ですね。
ハシヤスメ 今の私たちの置かれてる状況とかこれから先のことを考えてみて歌詞を作りました。
アイナ 振りは私が考えたんですけど、BiSとBiSHがそれぞれ作ったものを掛け合わせて過去から未来につながるものを作れたかなと思ってます。
僕らが何を思っていたのかを伝えたかった
──リンリンさんは「beautifulさ」を作詞しました。すごく前向きな歌詞ですね。
リンリン 自分が普段から思っていることをそのまま書いてみたんです。普段ちょっとしたことでイラついちゃったり逃げ出したくなったりする自分がいるんですけど、それを徐々に乗り越えていくというストーリーになってます。
──「身勝手あいにーじゅー」はミィさんが作詞を担当。1stアルバムでは「HUG ME」でちょっとメンヘラチックな女性の心情を歌詞にしてましたが、今回も若干重いですね(笑)。
ミィ 今まで自分が見てきた中で、一番異性に対して熱いラブコールを送っているのはアイドルにガチ恋してるオタクだなって思って。それをテーマに書きました。だから心当たりがある人は共感してもらえるんじゃないかと(笑)。
──「デパーチャーズ」「ウォント」「DEAR…」はモモコさんが歌詞を作ってます。
渡辺 僕はモモコが一番歌詞のセンスがあると思ってます。いいフレーズ選んでくるなって。
モモコ 「デパーチャーズ」はここじゃ輝けないのに仕方なくそこにいる人に向けて書きました。今までの自分もそうなんですけど、学校が嫌いな人とかに聴いてほしいですね。「ウォント」は失恋の曲です。バカな男っていっぱいいるじゃないですか。見た目ばっかりで女性を選んじゃう浅い男のことを歌詞にしてたら結果悪口になっちゃった(笑)。
一同 あはははは(笑)。
モモコ 「DEAR…」は挑発的な歌詞です。ネットで好き勝手書いてるヤツに向けてます。ストレスが溜まったときに書いたっていうのもあるんですけど(笑)。
──そして10曲目の「ALL YOU NEED IS LOVE」は、BiSの頃から奇抜なMVを作っていた渡辺さんにしては真面目すぎるとMVが話題になりました。曲自体はアルバムのテーマにぴったりのエモい楽曲ですね。
渡辺 今回のアルバムでは人の感情を揺さぶりたいと考えていたので、エモーショナルなこの曲は欠かせないものになってると思います。MVも僕が作ってきた中で一番きれいな感じになっているんですけど、それはおちゃらける要素がまったくないからで。あと「今、これを出しちゃうのは早すぎるんじゃないの?」って清掃員にも言われるんですけど、僕らはもっと先を見ていて。だいぶあとにBiSHのことを好きになってくれた人が過去の作品を掘ったときに「ALL YOU NEED IS LOVE」が出てきたら、より一層BiSHのことを好きになってくれるんじゃないかって。
──だから、あえて今なんですね。
渡辺 絶頂期にやったらそれはそれでいいと思うんですよ。でもそのときにはもっとエモい状況が生まれているはずだから。今の、このタイミングで僕らが何を思ってたのかっていうのをやっぱり伝えたかったんです。だからメンバーみんなで歌詞を考えました。
自分たちの力で道を切り開いていく
──ラストはチッチさんが書いた「BUDOKANか もしくはTAMANEGI」。これは文字通り日本武道館への思いが込められてますね。
渡辺 そうですね。あきらめてねえぞっていう思いをアルバムの最後で表明しておきたかったので。
チッチ テーマとしては「終わってほしくない最高の時間」。
渡辺 武道館でこの曲が流れた瞬間にみんな号泣する、みたいな曲にしたくて。
チッチ 私もこれを歌ってる風景を想像して、ちょっと泣きそうになりました。
──メンバーとしてこのアルバムはどんな作品になりましたか?
ミィ アイドルってことを抜きにして、いろんな人に聴いてもらいたいアルバムですね。
チッチ これがBiSHだっていう1枚になったと思います。きっとデビューアルバムよりも多くの人が手に取ってくれると思うので、大事な1枚です。
──最後に2016年の展望をお願いします。
チッチ まずはこのペースに追い付きたいです。そして自分たちで切り開いていく年にしたいですね。道を切り開くのは渡辺さんかもしれないけど、自分たちの力でここまで来たって思える年にしたいです。
ミィ 2年目が勝負の年ですよね。1年目はすごく順調でしたけど、2年目でボロが出るか、それを乗り越えていけるか。私たちは1年目で乗り越えられなかったものを自分たちで突破しないといけないと思ってます。だからZepp Tokyoも今度はソールドアウトを目指したい。
チッチ あとは誰も辞めないでほしい(笑)。
収録曲
- スパーク
[作詞:JxSxK / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ×田仲圭太]
- BiSH-星が瞬く夜に-
[作詞 BiSH×JxSxK×松隈ケンタ / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ]
- MONSTERS
[作詞:ユカコラブデラックス / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:井口イチロウ]
- Primitive
[作詞:ハシヤスメ・アツコ×JxSxK / 作曲:井口イチロウ / 編曲:井口イチロウ]
- beautifulさ
[作詞:リンリン / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:田仲圭太]
- OTNK
[作詞:竜宮寺育 / 作曲:松隈ケンタ]
- 身勝手あいにーじゅー
[作詞:ハグ・ミィ / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:田仲圭太]
- デパーチャーズ
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:井口イチロウ]
- ウォント
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:井口イチロウ]
- サラバかな
[作詞:竜宮寺育 / 作曲:慎乃介(蟲ふるう夜に) / 編曲:松隈ケンタ×田仲圭太]
- ALL YOU NEED IS LOVE
[作詞:BiSH×松隈ケンタ×JxSxK / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ]
- DEAR…
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ×田仲圭太]
- BUDOKANか もしくはTAMANEGI
[作詞:セントチヒロ・チッチ×松隈ケンタ×JxSxK / 作曲:松隈ケンタ / 編曲 松隈ケンタ×佐藤カズキ]
BiSH(ビッシュ)
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、ハグ・ミィ、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリンの6人からなるアイドルグループ。BiSを作り上げた渡辺淳之介と松隈ケンタが再びタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当する。自らを“新生クソアイドル”と称し、「ファンの総称は“清掃員”」「ライブの写真撮影は可能。なお録画、録音は禁止」「自由。ただしほかのお客さんの迷惑になる行為は禁止」という“クソアイドルの3箇条”を4月30日に東京・TSUTAYA O-nestで行ったライブで発表した。2015年5月27日に1stアルバム「Brand-new idol SHiT」をリリース。同年5月には東京・中野heavy sick ZEROにて初のワンマンライブ「THiS IS FOR BiS」を開催し、以降のライブは各所でソールドアウトを記録する。同年10月より初の全国ツアー「BiSH Eden of Sorrow Tour」を行っており、1月19日にツアーファイナルの東京・LIQUIDROOM、1月30日に追加公演の東京・ディファ有明に挑む。2016年1月に2ndアルバム「FAKE METAL JACKET」を発表する。