BiS|触れてみる?さらけ出した心の内側

BiSが2月24日に新作音源「KiLLiNG IDOLS」を日本クラウン内のプライベートレーベル・ULTRA STUPiD RECORDSからリリースした。

2019年6月に始動した第3期BiS。コロナ禍の影響でツアー中止などを余儀なくされるも、彼女たちは5時間にわたって同じ曲を繰り返しパフォーマンスするミュージックビデオ撮影や、ライブ中のスクワット対決など体力と精神力が試される機会がありつつ、ゲームセンターでクレーンゲームの景品として新曲を発表するなど、斬新なプロモーションを展開してきた。

新作「KiLLiNG IDOLS」収録曲の作詞は渡辺淳之介(WACK代表、BiSマネージャー)やメンバーが手がけており、心の内側をさらけ出したかのようなメッセージがちりばめられている。音楽ナタリーではメンバー4人にインタビューを行い、歌詞のメッセージをヒントに、BiSHや豆柴の大群ら多数のアーティストを手がける渡辺が「もっとも大事」だと公言しているグループであるBiSの現状、そして進化を続ける彼女たちの心境に迫った。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 中野修也

BiSと研究員で作る新しいライブの楽しみ方

──取材時点(2月上旬)では「KiLLiNG IDOLS TOUR」の真っ最中ですね。コロナ禍の中での開催で大変な状況ではありますが、率直な感想は?

左からチャントモンキー、ネオ・トゥリーズ、トギー、イトー・ムセンシティ部。

左からチャントモンキー、ネオ・トゥリーズ、トギー、イトー・ムセンシティ部。

チャントモンキー 開催できてよかったというのが一番大きいですね。

トギー この状況でもライブができるのがうれしいし、来てくれてるお客さんがいるというのもすごくうれしいことだなって。

ネオ・トゥリーズ 本当にすごいことだと思う。

イトー・ムセンシティ部 去年は途中までお客さんのいるライブがどんなだったかわからなくなったことがありました。無観客もあったし、ライブの回数自体が少なかったので。今は「研究員(BiSファンの呼称)のみんなと作るライブは楽しいな。大好きだな」と改めて感じられているツアーができています。

──ファンは声出しができないわけですけど、ステージから見て、研究員なりの工夫を感じましたか?

ネオ 感じました。たくさん踊ってくれるし、みんなとよく目が合うんですよ。そういうふうに気持ちを伝えてくれる人が多くてうれしいです。

──今回のツアーでは新作「KiLLiNG IDOLS」からは「HiDE iN SEW」、「COLD CAKE」のみ披露していましたが、ほかの新曲の振り付けも順調ですか?

チャント 振り付けはほとんど終わっています!

──お客さんが声を出せないライブが続く中、振り付けを考えるにあたって変化したことはありますか?

チャント コロナ前までは、絶対にサビでお客さんと踊れるように、両手を上げる、初めて観た人でもマネできる振り付けにしてたんです。でもこういうご時世なので、AメロもBメロも1回観ただけですぐマネできる動きにして、なるべく手を上げて楽しめるような形にしています。あと流れをすごく気にするようになりました。

BiS

──流れ?

チャント はい。例えば「TRAP」(2020年2月発表のアルバム「LOOKiE」収録曲)という曲は、サビの前半と後半でドラムのビートが変わるんですよ。「♪うんたんうんたん」から「♪ズタズタズタズタ」って倍のテンポに。いきなり後半のビートに合わせた手の動きだと付いてこられないかもしれないけど、前半のゆっくりテンポを生かして、流れで後半の速い振りも一緒に楽しめるようにしていて。言葉で説明するのが難しいんですけど、Aメロ終わりの動きをBメロに生かすとかも意識するようになりました。前までは振り付けを考えて渡辺(淳之介 / WACK代表、BiSマネージャー)さんに動画を送っても、NGが来てやり直しになることが多かったんです。今回はすごくスムーズとまではいかないけど、渡辺さんが指摘してくれたことの意味を理解できたので、自分の中でも「あっ、ここがダメだったんだ!」みたいなことに気付けました。大変だったけど、ダメなところの理由がわかってきたうえで考えられたので、自信はあります(笑)。

イトー この状況にならなかったら気付かなかったこともあったんだろうなって思いました。「イミテーションセンセーション」(2020年8月発表の7曲入り音源「ANTi CONFORMiST SUPERSTAR」収録曲)のパフォーマンスを考えていくにあたって、「声を出せないお客さんにとっては、振り付けをマネするのも楽しいんじゃない?」というヒントを渡辺さんからもらって。

チャント 「イミテーションセンセーション」は最初、あんまりお客さんがマネできない動きがあったんですけど、「これじゃただの悲しい曲で終わっちゃうよ?」って言われて。あの曲はライブの定番曲にしたいくらい渡辺さんにとって大切な曲で、絶対にライブでやり続ける曲だなって感じていたのに、渡辺さんが言うその感覚が最初はわからなくて、振り付けは歌詞の思いを伝えることに特化しちゃってたから。気付けてよかったです。

──そういえば「COLD CAKE」では場内から自然と手拍子が起こってましたね。

チャント そうなんですよー!

ネオ めっちゃうれしかったです!

トギー 初披露のときにどうやったら盛り上がるのか、サビで手が上がるのか、どうすればもっとよくなるのかをいっぱい考えていたんですけど、そんな中で研究員の皆さんが手拍子をしてくれて。

ネオ うちらのことを考えて、研究員がやってくれたっていうのがすごいよね。

アイドルを殺す

──「KiLLiNG IDOLS」というタイトルには、どんな意味が込められているんでしょうか。

トギー もうそのまんまです。「アイドルを殺す」。アーティスト写真は口の周りが血だらけで、これは吸血鬼のイメージなんです。アイドルを食べ散らかすというか。BiSである以上、周りのアイドルは敵じゃないですか。だから物理的には食べないんですけど、「BiSが全部食ってやるぞ!」っていう気持ち。モンちゃんの解釈も面白かったよね?

チャント 私はアイドルをナメているとかそういうことじゃなくて、BiSってカテゴリー分けが難しいと思ってるんです。“新生アイドル研究会”だけど、曲に対しての思いとか……えーと。

トギー アーティストとしてカッコいい存在で見られたくて、「自分の中のアイドル像を殺す」「カッコいいBiSを確立する」みたいな?

チャント そう、それ!

トギー 自分の中のアイドル像を殺すことによって邪魔なものや余計な考えをなくしたら、新しいBiSになれるんじゃないかなって思います。