BiS|触れてみる?さらけ出した心の内側

うちらはプリキュア

──「どっきゅんばっきゅん」はヘビーなサウンドに強い言葉が並んでいます。トギーさん作詞ですが、どんなことを歌詞にしたんでしょうか?

トギー

トギー 「うちらはプリキュアだぞ!」っていう気持ちで書きました! 「どっきゅんばっきゅん」が何かと言われたら、私の中ではプリキュアなんです。プリキュアは全国民の味方です。

──プリキュアですか? 詳しく聞かせてください。

トギー これは学生時代のつらかった頃の自分に向けて書いた曲で、当時の自分がなんて言われたら救われるかな?って思いながら歌詞を考えました。あの頃の自分は「学校がすべて」だと思ってたんですね、そんなわけないのに。振り返るとすごく居心地が悪いし、こんなところ嫌だって思ってるのに何もしようとしなくて、同じ場所にいるしかないって思い込んで、何もしなかった過去の自分がいた。その自分に対して、「君はなんでもできるから、そんなところでくすぶってるんじゃないぞ」と言いたい。BiSがみんなを虜にしちゃいたい気持ちも込められてますし、今すごくつらいのに一歩踏み出せない、変われない子に向けて、自分がプリキュアになったような気持ちで「どっきゅんハートしちゃうぞ!」と歌ってます。

チャント 私は最初、ブラック企業で働いている人に向けた歌なのかなって思ったんですけど、実際はトギーが過去の自分に向けた言葉でした。学生から大人まで「自分の居場所はここしかない」って感じているすべての人に刺さるだろうなって思った。

トギー ブラック企業で働いてる人にも刺さってほしいと思ったんだけど、実際に自分が体験してないとわからないことが多いから難しいなって。一番身近なつらい人間を思い浮かべたら、それが学生時代の自分だったっていう。私自身が自分を一番よくわかってるからこそ、なんて言われたいかがわかるし。渡辺さんが前に「過去の自分が言われたい言葉を歌詞にしてる」と言ってたこともあって、そういうほうが人の心に響く言葉が出てくると思って、ちょっとマネしてみました。

イトー この曲、超好きです。このEPの中だと曲調も一番好き(笑)。

チャントモンキー

チャント 好きそう(笑)。

イトー ヘビーだし、メロディも気持ちよくて。レコーディングの前からどんな歌い方するんだろうってウキウキしてました。トギーの歌詞は全部歌ってて気持ちいいんですよ。メロディに合った発音ができる歌詞だし、ドッキュン!もバッキュン!もすごく歌いやすい。レコーディングも超楽しかったです。

トギー うれしい。確かに破裂音は意識した、滑舌が悪いから聞こえやすいほうがいいと思って(笑)。歌ってて気持ちいい音があると思うので、それをできるだけ詰め込むのは意識してました。

イトー FPSゲームで無心になって敵を撃ち殺してるみたいな気分で歌ってました。何も考えないで「殺す殺す殺す」みたいな気持ちになるような音の入れ方が多かったので本当に楽しかったです(笑)。

チャント わかるかも、その感覚(笑)。渡辺さんと真逆だよね。渡辺さんの歌詞は1音に2つ3つ言葉を入れるから、最後の「つよがりさん」だって元々はこんな早口じゃなかったんですよ(笑)。トギーの歌詞は逆で、1音1音を強く歌える言葉のはめ方だなって。

イトー トギーの歌詞は常に誰かを恨んでいるというか、大人嫌いっぽい(笑)。それを言葉に出せるのはカッコいい。

トギー 根本に「大人が嫌い」っていうのはあったから。信用してるフリをすれば優しくしてくれるから、信用しているフリをしてました。学生時代は評価のためにいい子ぶってたけど、今は心から信用できる人に出会えたので……あっ、結婚するみたい(笑)。

チャント 誰も思ってないよ(笑)。

トギー (笑)。渡辺さんと出会ったときに初めて「こんなわたしのこと考えて発言してくれる大人がいるんだ!」って感動したんです。今は本当に優しい大人に囲まれて幸せです。ホントですよ?(笑)

BiS

武道館、Twitterでやり合う、つよがりさん

──最後の曲「つよがりさん」の話もちらりと出てきましたが、この曲ではBiSのエモーショナルな一面が強く出ていますね。

ネオ 私は最初に聴いたとき、武道館のことが思い浮かびました。あと渡辺さんがTwitterでファンとバトルしてる状況が同時に頭をよぎって。私が歌詞を書いたわけじゃないから、あんまり変なことは言えないんですけど。

トギー でも思った。「あ、武道館だ」って。

──ピアノの旋律が綺麗なこの曲は、松隈さんではなく、田仲圭太(SCRAMBLES)さんが作曲者なんですね。

トギー 田仲さんの曲はBiSでは初めてですね。

──同じSCRAMBLESではありますけど、作家さんの違いは感じるものですか?

ネオ 感じます。松隈さんはあまりピアノをメインで使わないから。

イトー・ムセンシティ部

イトー 軽快な曲調なんですけど、歌詞がズドンと来るんです。

トギー サビが特に心に響いた。私はどうにもできない状況のとき、私は諦めないで擦り切れるまでがんばり続ける選択をいっぱいしてきたんです。これまではがんばり続けるか、諦めちゃうかの2択だと思ってたんですけど、この曲でそうじゃないことに気付いたんです。諦めないために1回進むのを止めるとか、別の方向に逃げてみるとか、そういう選択肢があってもいいんだってことに初めて気付きました。人生観が変わったというか、BiSとしてもトギーとしてもこの曲で考え方がちょっと変わった。すごくいい曲ですし、いろんな人が共感できるメッセージでもあると思います。

──前後してしまうんですが、最後に質問です。ネオさん作詞の「I ain't weak maybe..」の登場人物は自己肯定感が低めな印象を受けました。皆さんは他人の評価や人の目が気になるほうですか?

ネオ 気になることは気になるし、気にならないところは全然気にならないです(笑)。その状況にならないと線引きがわからないですけど、性格上ものすごく極端なので。

イトー ネオが気にならないところで言うと「口が悪い」「冷たい」みたいなことを言われても「別によくない?」って感じ(笑)。

ネオ それは気にならない。BiSでいるときはグループに関わることだから、やっぱり自分がどう見られてるか気にしちゃうな。

──ほかの皆さんは?

トギー 気になります。道を歩いていて「あの子、雪だるまみたいな恰好してんだけど(笑)」とか思われてるんじゃないかとか。地元にいた頃がそうでしたね。でも東京は無関心な街という感じなのであまり気にならないけど。

ネオ・トゥリーズ

ネオ 無関心というか、いろんな人たちを認めてあげてる街って感じもするな。

トギー ああ、優しい街。

──トギーさんの普段の明るい雰囲気からすると、意外かも?と思いました。

トギー 本当ですか? 心を強く持ってがんばってます……強いフリをしています。私は“つよがりさん”なので。

イトー 私は周りの目をめっちゃ気にするタイプかもしれません。BiSでいるときのほうがより気になります。BiSでの活動内容は、自分たちがそれまでまったくやってこなかったことだらけで、怒られたり、注意されたりするときも初めて指摘されるような内容ばかり。自分が知らなかった悪い部分に気付かされることが多いです(笑)。なので振り返ることも多いです。

チャント 私も人の意見を気にするタイプですね。例えばライブで初披露の曲があったら、その曲名でエゴサして、どう思われてるのか調べるとか。もともとそういう性格ではあるんですよ。中学生ぐらいから人の目を気にするようになって。逆に東京に来てから普段はまったく気にならなくなりました。パジャマとかジャージでも渋谷行けちゃうくらいだし(笑)。

ネオ そういう人がいっぱいいるもんね(笑)。

トギー 「BiSである自分が人の目を気にしてる」ってことは、相手を決め付けることでもあると思っていて。他人が自分に対してどういう感情を抱いてるかなんてわからないのに、「こう思ってそう」と決め付けちゃうと、人の目を気にしちゃうと思うんです。例えば私の場合「あの人は私のこと嫌いだろうな」と思ったらうまく話せなくなっちゃうことがあるので、「この人は私のことが好き」って思って、笑顔で明るく話せるようにしてる。だから私は人の目を気にしてないかもしれないです。

チャント すごくいいことだね。今の話、ツイートしてたら絶対いいね押してた(笑)。

ネオ なりたいよね、そういう人に。

BiS