音楽ナタリー Power Push - BILLIE IDLE
個性豊かな4人が紡ぐ“ゆるぎない”BILLIE IDLE
BILLIE IDLEが2ndアルバム「ROCK "N" ROLL IDLE」を完成させた。元BiSのファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミが新ユニット結成を発表して話題を呼び、モモセモモ、ヤスイユウヒを加えた4人体制で今年1月より活動をスタートさせた彼女たち。4月には1stアルバム「IDLE GOSSIP」で活動指針となる「ネオ80's」を表現し、NIGO、渡辺淳之介のプロデュースのもとセンセーショナルなデビューを飾った。
音楽ナタリーではメンバー4人に集まってもらい、ユニット初となるインタビューを実施。知られざるユニット結成秘話やいまだ謎の多いモモセ、ヤスイのパーソナルな部分、そしてユニットとしての今後についてなどを聞いた。
取材・文 / 古川朋久 撮影 / 塚原孝顕
BILLIE IDLE結成は神の啓示だった
──元BiSの2人とはおひさしぶりなんですけど、BiS時代のナタリーでのインタビューってプールイさんと日高央さんの対談(参照:BiS「BiSimulation」プー・ルイ×日高央対談)と初期メンバー4人の座談会(参照:BiS初期メンバー座談会)しかやってなくて、ウイカさんにインタビューするのって実は初めてで。
ファーストサマーウイカ え、ウソでしょ!? もうけっこうお話したことあるつもりでいた(笑)。
──まず最初にBiS解散後のウイカさんとヒラノさんのことから聞きたくて。そもそもどういった経緯で新しいユニットを始めることになったんですか?
ウイカ 私がのんちゃん(ヒラノ)とNIGOさんと渡辺(淳之介)さんの4人でバンドみたいなわけわかんないユニットを作ってる夢を見ちゃって。これは神の啓示だなと思って、その話を3人にしたのがきっかけというか。
──夢がきっかけだったんですか(笑)。その頃からすでにNIGOさんとはお知り合いだったんですね。
ウイカ はい。以前私たちがDDTプロレスに出演したことがあったんですけど、それをきっかけにプロレスファンのNIGOさんが私たちのことを知ってくださって。それからずっと追いかけてくれて、BiSの活動最後に行った車中泊ツアーっていうのにもわざわざ北海道まで来てくれて、毛布や寝袋などの応援グッズを差し入れしてくれたんですよ。横浜アリーナのラストライブは海外にいるから行けないってことで、そこでいろいろとお話しさせていただいて。
──そんなこともあって、NIGOさんと一緒に何か面白いことをやりたいと思ったと?
ウイカ おそらく(笑)。で、解散直前にそんなことがあっていろいろと相談した結果、NIGOさんから「じゃあ一緒にやろう」って話をいただいて。だから私とのんちゃんはBiSが解散する当日まで、ほかのメンバーにも黙っていて。「実は進路が決まってます」とは一切言いませんでした。
──ラストライブの最後に発表されてましたけど、メンバーにも完全にオフレコだったんですね。
ウイカ そうなんです。プールイなんかのんちゃんの行く末をずっと案じてたから「のんちゃん大丈夫? 何か決まってるの?」なんてずっと聞いてたもんね。そうしたらのんちゃんも「なんかオーディションとか開催してメンバーを集めようかな」とか、のらりくらりしてたんですけど、全部ウソで(笑)。
ヒラノノゾミ サプライズです。
ウイカ 敵を欺くにはまず味方から、ってことでしょうか。で、BiS解散後から具体的にどういう方向性のユニットを作っていくかの話になったんですけど、実際にNIGOさんや渡辺さんが前に出て、私たち2人と一緒にパフォーマーになるのはどうだろうってなって。まあ私たちと一緒にステージでわちゃわちゃするのも変だし、それもそうかと思いながら、だったら2人にはプロデューサーになってもらって、その代わりに新しいメンバーを2人くらい入れようかということになったんです。
──ウイカさんとヒラノさんの2人を中心に新たなユニットを作ろうということになって、そこからオーディションが始まったと。話がちょっと戻っちゃうんですけど、新しいユニットをやるかどうかの以前の問題として、2人はもうアーティスト活動を辞めて普通の女の子に戻ろうっていう気持ちはなかったんでしょうか?
ウイカ まあBiSが終わったあとのことは何も決まってなかったから正直どんなことをやっていこうとか具体的には考えてなかったんですけど、2人とも普通の女の子になるっていう考えがそもそもないっていうか。私はずっと芝居をやっていてBiSで音楽業界に入った人間だし、のんちゃんもBiSにいながら演技のお仕事とかやってたから女優業に挑戦してみたいって言ってたし、もしかしたら解散後はそっちの道もあったのかもしれないけど、やっぱり最終的にはBiSで慣れ親しんだ音楽活動に落ち着いたという感じで。
──この2人の組み合わせは当時のBiSファンにとっても意外だったんじゃないのかなって思ったんですけど。
ヤスイユウヒ あー、うんうん。
ウイカ ヤスイさんが今すごくうなずいたんですけど、彼女は富山の人間で、BiSがツアーで金沢に行ったときとか普通にチェキ列に並んでたくらいのBiSファンでしたから。
ヤスイ そうなんですよ。私、ウイカさんとのんさんが推しメンだったんです。だから2人のユニットは完全に俺得でした。でもやっぱり意外な組み合わせだとは思ってましたね。
ウイカ まあ我々もまさか、でしたから(笑)。BiSのときから仲悪くはないし普通にしゃべるけど、そんなにめちゃくちゃ仲がいいって感じでもなかったし、そんなに相手のことも知らなかったと思う。
ヒラノ そうだね。
ウイカ オフのときに2人でどこか行くとかもなかったし。それぞれの内側まで入り込んで話すことがなかったから、逆に一緒にいてラクはラクでしたね。のんちゃんはすごく柔軟な性格なので一緒にやろうって話になったときも普通だったら一瞬考えると思うんですけど「うんやろう」って即答でしたし(笑)。
ヒラノ 流れに身を任せました。
──まったく悩まないのがすごい(笑)。
ヒラノ 本当に何も決まってなかったし、こんな私を拾ってくださるならやるしかないだろうって。やれることはなんでもやろうって決めてたので。
ウイカ のんちゃんはBiSの初期メンバーで渡辺さんとも長い付き合いだし、私もまた渡辺さんとやるのかっていう部分では躊躇があったかもしれないですけど(笑)。今はほどよい関係でやれている気がします。一時本当に渡辺さんが苦手なときもありましたから(笑)。今は私ものんちゃんも、渡辺さんとすごくいい距離感になってて、バランスがいいと思います。
CDの薄利多売はもういい
──いわゆるアイドル活動みたいなことはもうしたくなかった?
ウイカ ユニットをどうするかっていう方向性の話し合いのときに、もうアイドルはいいかなっていうことにはなりました。できるだけアイドルっていう感じの売り方じゃないユニットにしたくて“NOT IDOL”を掲げていこうと。
──今のご時世、女の子が4人いて歌って踊るとそれはもうライブアイドルだろうっていう感じで見られちゃうと思うんですけど、今もモヤモヤした感情はあるんじゃないですか?
ウイカ そうなんですよね。外から見て我々のことをアイドルだって思ったなら、それはそれで仕方ないと思うんですけど、我々の心持ちとしてはそうではなくて。もうアイドルとしてCDを薄利多売するみたいなことはどうなんだろうね、っていうのはあって。ランキングで上位に入ることはうれしいし、テレビに出演することもうれしいですけど、もうそういうことをメインにしていくっていうものでもないのかなって。私とのんちゃんはこの前まではアイドルという立場を利用して「有名になりたい」って考えてた人間ですけど、アイドルじゃなきゃいけないっていうことでもなくて。BiSという時流に乗ってたってだけの話なんですよね。きっと。
──なるほど。2人はそこまでアイドルに固執してなかったので、新しいユニットも別にアイドルである必要がなかったと。
ウイカ はい。だからアイドルファンが聴いてくれてももちろんうれしいですし、「これはアイドルだ」って思ってくれてもいいんですけど、我々は若さとかかわいさとかキャピキャピ感を出して接触を売りにするとか、もうそういうのはしないって決めて。アイドルというカテゴリじゃなく女性アーティストというフィールドで勝負していきたいなと。
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- 2ndアルバム「ROCK "N" ROLL IDLE」2015年9月16日発売 / 3000円 / オツモレコード / DDCZ-2045 / Amazon.co.jp
- 「ROCK "N" ROLL IDLE」
収録曲
- ダーリンにはならない
- 彼方に…。
- HUMANOID
- be-bop tu-tu
- 時の旅人
- 気狂いピエロ
- 君にテレポーション
- LOCO☆MOCO
- 平成ロックスター
- 子供のように
BILLIE IDLE(ビリーアイドル)
ファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミ、モモセモモ、ヤスイユウヒの4人からなるガールズユニット。NIGOと元BiSマネージャーの渡辺淳之介のプロデュースにより「ネオ80's」をテーマにしたサウンドとビジュアルイメージで独自の世界観を追究している。2015年4月に1stアルバム「IDLE GOSSIP」でCDデビューを果たし、同年5月には大阪・ROCKTOWN、6月には東京・ラフォーレミュージアム原宿にて単独ライブを開催した。さらに9月には2ndアルバム「ROCK "N" ROLL IDLE」を完成させ、そのアルバムを引っさげたレコ発ワンマンライブを10月10日に東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催する。