「ケンガンアシュラ」ファーストサマーウイカインタビュー|「好きなものしか入ってないお弁当か!もっとお漬物的な要素も欲しいわ(笑)」

サンドロビッチ・ヤバ子原作によるだろめおんの格闘マンガ「ケンガンアシュラ」。企業間でさまざまな権利を賭け、雇った闘技者同士を戦わせる“拳願仕合(ケンガンジアイ)”の模様を描く本作は、全27巻に加え、闘技者の過去を描いた0巻が発売中だ。またアニメ「ケンガンアシュラ」Part 1、Part 2がNetflixにて全世界独占配信中。さらに2020年1月10日からはTOKYO MXほかにてテレビ放送も決定している。

盛り上がりを見せる「ケンガンアシュラ」の魅力を掘り下げるため、コミックナタリーではファーストサマーウイカ(BILLIE IDLE)に作品を読んでもらい、感想を聞いた。明るいキャラクターと毒舌でいまやバラエティ番組に引っ張りだこの彼女は、昨年からプロレスにハマっており、過去にはK-1やPRIDEなどの格闘技も観ていたという。そんなウイカに「ケンガンアシュラ」の見どころを聞くと「格闘シーンは飛ばしてもいい」というとんでもない意見が飛び出したが、その真意とは。また作中に登場する「拳願絶命トーナメント」1回戦の中から、3仕合の感想も聞いている。インタビューには仕合結果などのネタバレを含むので未読の人は気を付けてほしい。

取材・文 / 松本真一 撮影 / 笹井タカマサ

「ケンガンアシュラ」キャラ集合カット

江戸中期から現在まで続く「拳願仕合」。それは工事の施工権や高価な美術品などを巡る企業間の争いを、雇った闘技者同士による仕合の勝敗で決するという日本経済界の裏の姿。拳願仕合を仕切る拳願会会長を決定するトーナメントに、謎の武術・二虎流を操る十鬼蛇王馬と、その雇い主である普通のサラリーマン・山下一夫が挑む。

お得な「SPECIAL プライスパック」登場!

アニメのテレビ放送を前に、原作マンガをお得に読めるセットが登場。「『ケンガンアシュラ』SPECIAL プライスパック」は、1~3巻パック、4~6巻パックの2種類が用意され、3冊合わせて税込各770円。

サンドロビッチ・ヤバ子原作、だろめおん作画「『ケンガンアシュラ』1~3巻 SPECIALプライスパック」
サンドロビッチ・ヤバ子原作、だろめおん作画「『ケンガンアシュラ』1~3巻 SPECIALプライスパック」
発売中 / 小学館

コミックス 税込770円

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サンドロビッチ・ヤバ子原作、だろめおん作画「『ケンガンアシュラ』4~6巻 SPECIALプライスパック」
サンドロビッチ・ヤバ子原作、だろめおん作画「『ケンガンアシュラ』4~6巻 SPECIALプライスパック」
発売中 / 小学館

コミックス 税込770円

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ファーストサマーウイカ インタビュー

「ケンガンアシュラ」は好きなものしか入ってないお弁当

──「ケンガンアシュラ」はアニメ化もされている人気作で、特に格闘マンガ好きには知られているんですが、意外にも女性ファンも多い作品です。今回は格闘技がお好きな女性ということで、ウイカさんに読んでもらいました。最近、プロレスがお好きなんですよね。

ファーストサマーウイカ

プロレスを観るようになったのは去年からなので、にわかなんですけどね。格闘技ってことで言うと、父親と弟がずっと空手や剣道をやってたんですよ。だから家族の影響で、K-1やPRIDEはテレビで観てました。それに家には格闘技マンガが並んでたんです。小林まことさんの「柔道部物語」とか「1・2の三四郎」で育ってきたみたいなところがあって。

──いきなり意外なタイトルが。ではプロレスファンになる前から、格闘技全般に割と抵抗がない?

そうですね。マンガなら「グラップラー刃牙」とか、格闘技とはちょっと違うかもしれないけど「ドラゴンボール」とか「北斗の拳」とかのバトルものも読んでました。

──格闘もの、バトルもの以外のマンガは読みますか?

ドラマに出させていただいた「凪のお暇」も好きですけど、でも基本は「SLAM DUNK」とかのスポーツものと格闘もの、あとはレディースコミック……エロマンガですわ(笑)。

──(笑)。そんなウイカさんに、格闘マンガ「ケンガンアシュラ」を読んでもらったわけですけど、いかがでしたか。

暗殺集団・呉一族のモデルは、ブラジルで「グレイシー柔術」の体系を築き上げ、1990年代後半から2000年代前半の格闘技界を席巻したグレイシー一族。トーナメントに出場した呉雷庵のモデルは、ハイアン・グレイシーだ。

設定やキャラを見るだけでアガります。にわかの私でも見たことのあるぐらいの、プロレス・格闘技のいろんな要素が盛り込まれてるんですよ。「見たことのある」というのは悪い意味ではなくて、(アントニオ)猪木さんっぽい人が出てきたりとか、“呉(くれ)一族”っていう完全にグレイシー一族が元ネタなんだろうなっていう人たちが出てくるから、そういう現実の格闘技の歴史がこのマンガの下地になってるんだろうなと。

──PRIDEとかK-1を観ていた人なら、「なんか見たことある」っていうキャラが多いですよね。

もうオマージュとかじゃなくて、はっきりそのまんまやん!みたいなキャラもいますし(笑)。私にはモデルがわからないキャラにも、なんかしら元ネタがあったりするんだろう、と思いながら読みました。そういういろんな選手が無差別級で、ノールールで戦うってのは「クーッ!」ってなりますよね。好きなものしか入ってないお弁当みたいな感じ。

女子は戦っているシーンより、キャラクターの部分で心が動く

──ほかにも「ケンガンアシュラ」の大きな特徴としては、「闘技者が企業に雇われている」という設定があります。企業同士がビジネスの権利などを賭けた「拳願仕合」で戦うという、この点についてはいかがでしたか。

代理戦争ってことですよね。こういう格闘マンガって、格闘家は夢のためとかお金のために戦うみたいなことが多かったと思うんです。でも「ケンガンアシュラ」では、あくまで彼らは企業の駒。あるいは格闘家の戦いにお金を賭けるみたいなマンガもあるけど、賭けるのはモブじゃないですか。でも「ケンガンアシュラ」では賭けたり雇ったりする企業側がストーリーを動かしてるのが新しいなと思いました。

──主人公の闘技者である王馬ではなく、王馬を雇っている山下一夫側の視点でストーリーが動きますからね。

「ケンガンアシュラ」27巻表紙用カラーカット。大きく描かれているのが十鬼蛇王馬、小さく描かれているのがその雇い主である山下一夫。

タイトルは「ドラえもん」だけどドラえもん視点では話が進まなくて、主役はのび太、っていうのと同じ構造ですよね。山下一夫の人生の中の一部分を描いているっていうか。読者としても、王馬と出会うまでは普通のサラリーマンだった山下一夫の視点で仕合を観られるじゃないですか。常に観客でいられるので、そこは現実の格闘技を観ているのと近いものがあるかもしれないです。

──格闘技を知らない人が読んでも、山下一夫と同じく「あいつはなんて強いんだ」「なんだあの技は」と驚けるということですね。

そうそう。彼が知らないでいてくれたから。山下一夫が格闘技に興味を持っていくのに比例して読者の自分も興味が出ていくし、「賭けとけばよかった!」「だから勝つって言うたやん!」みたいに言いたくなる(笑)。

──格闘技に詳しくなくても読みやすいということですが、例えば格闘技に興味がない、若い女性でもこの作品を楽しめると思いますか?

こういう言い方をしていいのかわからないんですけど……格闘シーンを飛ばして読んだらいいんじゃないですか?

──格闘マンガなのに(笑)。

このマンガ、とにかく登場人物が多いじゃないですか。かわいいイケメンもいるし、ごついのもいるし、バリエーションが多い。だから1人は推しキャラが見つかると思うんです。だけど女子には正直、戦闘シーンでキャラクターに惚れろというのはハードル高いんですよ。

──ウイカさんみたいな格闘技好きは格闘シーンも読むけど。

いやー、私も正直、興味ないキャラだとパパパパッって秒で読んでしまうこともあります。こういう作画ってすごく時間かかると思うので、作画のだろめおん先生には大っ変申し訳ないですけど……。女子は戦っているシーンより、キャラクターの部分で心が動くと思うんですよね。なぜこの場所で戦っているか、とか。だからキャラクターが掴みやすいシーンに注目して読んだほうが楽しいかなと。「ケンガンアシュラ」は巻末のオマケ4コマで、キャラクターの日常だったり、おっちょこちょいな一面が描かれたりしてますから、そういうところとかで。

──あるいは戦いの合間の、キャラとキャラのやり取りとかで関係性が知れると、そいつのことが気になりますよね。

因幡良と、その雇い主であるペナソニック社長・瓜田数寄造。ここに西品治警備保障の西品治明を加えた3人は幼児園時代からの幼なじみで、因幡は2人を「瓜やん」「あきらん」と呼ぶ。

そう、因幡くんとかいいですよね。(雇い主の)ペナソニック社長と幼なじみなんだ、とか、もう1人幼なじみ(西品治明)がいて3人は幼稚園から一緒なんだ、とわかると興味が湧いてくる。だからもし戦闘シーンとか血に抵抗がある女子がいたら……本当に作者さんとファンに申し訳ないけど、「なるほどなるほど」ぐらいで飛ばしてもいいのではないかと(笑)。そしたら絶対、誰かを好きになれると思います。

──好きなキャラだと格闘シーンにも興味が出ますしね。因幡は特に、戦闘シーンだけ読むとちょっと異様ですから。

そうですね。1回、バトルはなんとなく読んでもらって、キャラとストーリーだけでも追ってもらって。そのうえでもう1回読んで戦いを見れば、一挙手一投足に感動できると思います。ちゃんと見れば、すごくこだわりが伝わってくるバトルシーンなので。