Bialystocksインタビュー|進化の2ndツアー振り返りと「何食べ」テーマ曲に込めた思い (2/2)

できるだけフラットに、最後はちょっとだけ幸福感を

──そして新曲「幸せのまわり道」は、ドラマ「きのう何食べた? Season2」のエンディングテーマです。作詞作曲は甫木元さんですが、曲を作る段階ではどんなイメージを持っていましたか?

甫木元 このドラマはいろんな側面や要素があるんだけど、“食”というテーマを含めて、いい意味で軽く描いている印象があったんですよね。ポップな内容でありつつ、観る人によっては、心の中で抱えてきたことを再認識したり、「こういうことも言っていいのか」と思うこともあるんじゃないかなと。その両方が違和感なく流れてくるし、役者陣のキャスティングを含めて、すごくいいバランスが成立しているドラマだと思います。その最後に流れる楽曲は軽い方向にも、重い方向にも、どっちにも振れると思うんですけど、できるだけフラットに聴ける曲にしたかったんです。いろいろな解釈ができる余地は残しつつ、最後はちょっとだけ幸福感を得られるというか。

──なるほど。菊池さんのアレンジについては?

菊池 甫木元の作ったメロディにはわかりやすさがあって。アイルランド民謡とかカントリー、1920年代くらいのアメリカの音楽の雰囲気もあるんですけど、それを生かしつつ、いわゆるJ-POP的なサウンドではなくて、自分たちがいいなと思えるものにしようと意識していました。デモ音源にも歌詞が付いてたんですけど、それを1回英語に変えてからアレンジしましたね。そうすることで違うサウンドが聴こえてくるので。

Bialystocks

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──海外のインディフォーク的な手触りもありますよね。甫木元さんはこのアレンジに対してどう感じましたか?

甫木元 まず、長い間奏がいいですよね(笑)。メロディだけを取り出すと、泣ける方向に持っていくこともできると思うんですけど、それはドラマのテンションとは違うのかなと。等身大な感じというか、誰もが自然に入っていける曲になったと思います。

ライブで歌うことと、映像で何かにフォーカスすることは同じ

──「幸せのまわり道」に対するお二人のコメントに「誰かと共に過ごす何の変哲もない一瞬を、永遠に引き延ばしながら、蜃気楼のような幸せにまわり道でもしながら気づけたら」という言葉がありました。これも楽曲のテーマにつながっているんですか?

甫木元 そうですね。「きのう何食べた?」では毎回、食事のシーンが丁寧に描かれていて。現実の生活の中では、食事はそこまでフォーカスされないし、なんとなく流れていくことも多いじゃないですか。でもこのドラマに関しては、一緒に生活している2人がごはんを食べている場面が一番幸せを感じるところで。それをできるだけ持続させることで、いろいろな困難を受け流している感じもあるのかなと思います。

甫木元空(Vo)

甫木元空(Vo)

──それは甫木元さん自身が共感している部分でもある?

甫木元 共感というより、映像的な表現だなと思いましたね。例えば会社が舞台のドラマだったら、会社を出る場面で物語を終えることができる。「きのう何食べた?」は料理をしている時間、食べている時間にフォーカスすることで、そこで1日が終わりという流れになっているんです。それは映像だからできる表現だと思うんですよね。

──映像作家だからこその捉え方ですね、それは。

甫木元 映像って、本当に嘘をつくことが得意なんですよ。順番をちょっと変えるだけで印象が大きく変わるし、何気ないシーンを長く撮ることによって、普段は見落としがちなところに意識を向けさせることもできる。それはライブで歌うときも同じかもしれないですね。マイクを使って発する言葉って、映像において何かにグッと寄る場面みたいに、1つのことにフォーカスすることなので。そのときにどう伝わるかは考えたりしますね。

──興味深いです。ちなみにお二人は、「きのう何食べた?」の食事のシーンみたいに、日常の中でほっこりと幸せを感じられる場面はありますか?

甫木元 うーん……ないかもしれない(笑)。(菊池に向かって)山登りですか?

菊池 山登りは日常って感じではないかな。地方のビジネスホテルで、ピザポテトとレモンサワーを買ってきて、テレビを観てるときはかなり幸せです(笑)。

菊池剛(Key)

菊池剛(Key)

甫木元 (笑)。僕はフラッと入った映画館で2、3本くらい続けて観られるといい感じですけどね。前から決めて観るのではなくて、「もう1本観れそうだな」みたいな時間が好きです。

甫木元に無理をさせてきた2人編成ライブ

──来年1月には2人編成ライブが開催されます。甫木元さんが歌とギター、菊池さんがピアノという編成ですか?

甫木元 基本的にはそういう感じになると思います。曲の解釈というか、菊池のピアノの弾き方もバンド編成のときとは違うだろうし、2人ならではの見せ方になるんじゃないかなと。

菊池 これまでの2人編成ライブは、ほとんどリハーサルをやらなかったんですよ。即興的な感じというか、いつもとは違うピアノを弾いて、甫木元に無理をさせながら奇跡が起きるのを待つという。

甫木元 ハハハハ。

菊池 そういうことをしないとタガを外せない気がするんですよ。今回はどうなるかわからないですけど。

甫木元 流れくらいは決めたほうがいいと思いますけどね(笑)。とは言え「ここは決まってない」という部分があるかもしれないし。まだ全然考えてないんですけど。

──期待してます! 制作作業も続いているんですか?

甫木元 曲を溜めていって、まとまった形で出せればいいなと思って少しずつやってますね。

菊池 まだまだですね(笑)。これからやります。

甫木元 はい(笑)。がんばります。

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ライブ情報

Bialystocks 二人編成ライブ 2024 冬

2024年1月18日(木)東京都 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

プロフィール

Bialystocks(ビアリストックス)

甫木元空(Vo)と菊池剛(Key)からなる2人組のバンド。映画監督でもある甫木元の初監督作品「はるねこ」の生演奏上映をきっかけに結成された。2021年1stアルバム「ビアリストックス」を発表。2022年11月にメジャー1stアルバム「Quicksand」をポニーキャニオン内のレーベルIRORI Recordsよりリリースした。2023年に初の全国ツアーを5都市で開催。10月にはドラマ「きのう何食べた? season2」のエンディングテーマ「幸せのまわり道」を発表した。