人は幸せになるために生まれてきたはずやのに
──「マスターピース」も自分たちのことを歌っているということですが、これはどんなテーマで作られた楽曲ですか?
Rover 2014年に出した「コンパス」という曲があるんですが、その曲を10年を経て今の僕らが歌うなら……という気持ちで作った曲です。「コンパス」を発表して、インディーズレーベルから声がかかって、今の事務所への所属が決まって……そういうふうに歩いてきた年月を振り返っての思いを詰め込んだ、魂を込めた曲という感じですね。
MOCA アルバムの中では最後に作った曲で、当時の僕がちょうど感じていたことをリアルに書きました。世の中はどんどん便利になっていくのに、不幸な人が増えているとか、時間はないのにやらなあかんことだけ増えていくみたいな矛盾がめっちゃ気になっていたんです。人は幸せになるために生まれてきたはずやのに。
──社会批判的な側面もあるんですね。
Rover あるかもしれないですね。一番大事なことはサビで歌っている「幸せになってこう」ということなんですよ。タイトルが「幸せになってこう」でもいいぐらい。これは47都道府県ツアーで初めて行く場所で、初めて会う人たちの前で歌いたい曲です。
──さっき僕は今作がMOCAさんの色が強いアルバムだと言いましたが、次の曲「もしもいつか」はHiDEXさんの色が強いですね。
Rover 「もしもいつか」は、もともとHiDEXのソロ曲なんですよ。3、4年前のツアーのソロコーナーでHiDEXが歌った曲なんですが、「今この曲をアルバムに入れるのがいいんじゃないか」と提案したんです。すっごく悲しい曲なんですよね、これ。
──そうですね。
Rover 「どんな人生送ってきたんや」と心配するくらい悲しい曲なんですけど、それがリアルというか。HiDEX本人も言ってましたけど、貧乏な家庭やったし、兄貴がプロミュージシャンだったから「お前なんか才能ない」とケチョンケチョンに言われていたみたいです。そこから這い上がってきてるから、たぶん恨みつらみがすごいんです(笑)。
──彼の声に宿るあの憂いは、そういうところから生まれたんですね。
Rover あれ、作った声じゃないんですよ。リハでも鼻歌でも、常に悲しいですから。でも僕らが仲よくさせてもらってる元阪神タイガース選手の岩田稔さんのトレーナーさんは「もしもいつか」のことを「めっちゃ好きな曲やねん」と昔からずっと言ってくれていたんです。誰しも「もしも耳が聞こえなくなったら」とか「もしも声が出なくなったらどうしよう」と考えることがありますよね。岩田さんは1型糖尿病を患っていて、ずっと啓発活動や同じ病気で苦しむ方の支援をされているんですけど、彼に「音楽を通して、そういう“もしも”を考える機会がちょっとでもあったら、もっと今を大切にできるのかな」と言われたことがきっかけで、アルバムに収録することにしました。
雨が嫌いなMOCA、雨が好きなRover、ナイフが胸を切りつけるHiDEX
──「Ame」はMOCAさんのアイデアをもとに作られた曲なんですね。
MOCA 僕、雨が嫌いなんですよ。雨が降ってたら、友達と飲みに行く約束があっても「ごめん、雨やから今日行かれへんわ」って断るぐらい。でも雨の日にちょっとだけ心が温かくなれる曲があったらいいなと発案して、あとはRoverに全部任せました。
Rover 逆に僕は雨が大好きなので、「Good rainy days」と歌わせてもらいました(笑)。あと、HiDEXのヴァースも好きなんですよ。「ナイフが胸を切りつける」とか、なんでこんなに悲しいことを歌うんやろ?と思いますけど、HiDEXの声だと不思議と説得力があるんですよね。それと「ただただ傘を待ってた 人が持つ温かさを待ってた」というフレーズで同じメロディを2回繰り返してるんですよ。最初は「え?」と違和感を感じたんですけど、完成したらめっちゃ耳に残るフレーズになっていました。
──しっとりとした曲が2曲続きましたが、続く「サウナ」で再びアッパーな曲調に戻りますね。
Rover これはYUTA(マエノミドリ)くんがお風呂っぽいトラックを作ってきてくれたから、それに身を任せた感じです。でも僕はサウナ苦手やし、なんの思い入れもないです(笑)。HiDEXとMOCAはめっちゃサウナ好きなんですけどね。
MOCA 僕はコロナ禍になってからサウナに行き始めたんですけど、3年くらい毎日通っているんです。行かない日はないし、2回行く日もある。
Rover 僕は暑いのもダメなうえに、閉所恐怖症なんですよ。もう身震いがする(笑)。
──(笑)。「Fave」にもYUTAさんが参加されています。“推し”という言葉を使ってファン心理を歌った楽しい曲ですね。
Rover このトラックをYUTAと大志の2人が作ってきてくれたときに、「かわいいな。TikTokで聴いてみたいな」と思ったんです。推しに「感謝してるよ」と伝える曲を作ったら、すごく平和になるんじゃないかって。
──ちなみに、お二人に推しはいますか?
Rover いっぱいいるんですけど、安藤サクラさん、仲野太賀さん、King & Princeの岸(優太)くん、サッカーの伊東純也選手。あとは、おぎやはぎの矢作(兼)さんです。
MOCA 僕は阪神タイガースの岡田(彰布)監督ですかね。あのしゃべり方がかわいいなと思います(笑)。勝手な想像ですけど、人にどう思われようが全然気にしてなさそうじゃないですか。そういう人に憧れるというか、自分もああなりたいっすね。
──そして最後の「サクラヒラリ」は春ソングですね。
Rover 卒業ソングであり、新生活に向かって一歩踏み出すきっかけになるような曲だと思います。けっこう昔に書いたので、言葉の使い方が若かったりしますけど、今も変わらない学生時代の思い出みたいに聞こえるのがいいですね。「さくら」とか「#みんなと作った卒業ソング」とか、卒業にまつわる曲はいろいろ作りましたけど、この曲が一番ベリーグッドマンのエッセンスが入ってるんじゃないかな。
MOCA 提供した楽曲のセルフカバーなんですけど、僕らとしては初めて提供させてもらった曲なので、思い入れが強いんですよ。
Rover この曲を作ったことで僕たちの音楽観も変わったし、多くの人が喜んでくれたことで自信にもなりました。「コンパス」に匹敵するぐらい大切な曲です。
元高校球児のMOCAがオカンと約束した甲子園
──ライブのお話も聞かせてください。甲子園でのワンマンライブはどういう経緯で決まったんですか?
Rover 僕らが以前から「甲子園でライブをやりたい」と訴えていたところ、今回、球場長代理の方が「コロナ禍に甲子園球場から初の無観客配信ライブを行ったり、高校球児たちへの応援歌『ライトスタンド ~すべての球児たちへ~』を発信したりと、野球に密接な活動をしていることが甲子園の100周年記念事業にふさわしい」と声をかけてくださいました。ただ阪神甲子園球場でライブをやるだけじゃなくて、100周年記念事業の一環として、しかも「アンバサダーとして」と言っていただいたので、最高のタイミングでがっちり手を組めた感じですね。甲子園の100周年記念事業と僕らの10周年が重なるなんて一生に一度しかないことなので。
──元高校球児のMOCAさんは、今回グラウンドに立てることには感慨ひとしおではないですか?
MOCA 不思議な人生だなーと思いますね。一生懸命がんばっていたから音楽の神様か野球の神様が微笑んでくれたのかなという感覚で、今のところ不安も緊張もまったくないです。「オカンとの約束果たせるわ」ぐらいですね。
──お母さんと約束されていたんですか?
MOCA 母校が甲子園に出場したとき、僕は3年生なのに練習補助員だったんですよ。母からは「あんたが甲子園に立つところ見たかったわ」「甲子園でライブをする人もいるんだからがんばりや」と言われていたんですけど、まさか本当に立てる日が来るとは思っていなかったです。念願だった大阪城ホールのワンマンライブが叶った2019年頃から「次は甲子園行くぞー!」と言ってはいましたけど、本気で思っていたというより、そこでそう言っておかないと自分たちが終わっちゃうような気がしたからなんですよね。僕ら以上に考えてがんばっていたスタッフの人たちが叶えてくれた、というところが大きいです。
──甲子園の前には47都道府県ツアー「Road to 甲子園」もあります。この規模の長期のツアーは初めてですよね。
Rover 初めてです。
MOCA 27公演ぐらいのツアーはあったんですけど、そのときは僕が初日で喉が潰れて、Roverは中盤ぐらいで潰れてました。
Rover 今回のツアーで楽しみなのは、3分の1が過ぎたあたりの疲労具合ですね(笑)。あとはセミファイナルの高知で「残すは最後の沖縄だけ」となったときのテンションがどんなんか気になります。
MOCA エグいよな。セットリスト通りにやってない可能性あるで(笑)。
Rover HiDEXのパートをMOCAが歌ったりとか?(笑) お客さんをステージに上げて歌わせたりとか、そんなんもやりたいですね。僕たちもまだ開拓できてない何かが出てくるかもしれないので、ぜひ遊びに来てください。
ツアー・ライブ情報
ベリーグッドマン結成10周年 × 阪神甲子園球場100周年記念事業 ベリーグッドマン 47都道府県 “ピース” TOUR2023 ~ Road to 甲子園 ~
- 2023年4月20日(木)京都府 KYOTO MUSE
- 2023年4月22日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2023年4月23日(日)福井県 福井CHOP
- 2023年4月25日(火)滋賀県 滋賀U★STONE
- 2023年4月29日(土・祝)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2023年4月30日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2023年5月3日(水・祝)群馬県 前橋DYVER
- 2023年5月4日(木・祝)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2023年5月6日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2023年5月7日(日)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
- 2023年5月13日(土)山梨県 甲府Conviction
- 2023年5月14日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2023年5月19日(金)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2023年5月20日(土)富山県 MAIRO
- 2023年5月27日(土)山形県 山形ミュージック昭和Session
- 2023年5月28日(日)秋田県 Club SWINDLE
- 2023年6月1日(木)兵庫県 Harbor Studio
- 2023年6月3日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2023年6月4日(日)山口県 周南RISING HALL
- 2023年6月8日(木)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2023年6月10日(土)鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2023年6月11日(日)島根県 アポロ
- 2023年6月17日(土)青森県 青森Quarter
- 2023年6月18日(日)岩手県 Club Change WAVE
- 2023年6月22日(木)和歌山県 和歌山CLUB GATE
- 2023年6月24日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2023年6月25日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2023年6月27日(火)奈良県 奈良NEVER LAND
- 2023年7月1日(土)北海道 cube garden
- 2023年7月2日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2023年7月8日(土)宮城県 darwin
- 2023年7月9日(日)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2023年7月11日(火)三重県 M'AXA
- 2023年7月16日(日)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2023年7月17日(月・祝)香川県 高松festhalle
- 2023年7月26日(水)佐賀県 SAGA GEILS
- 2023年7月27日(木)長崎県 DRUM Be-7
- 2023年7月29日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2023年7月30日(日)大分県 DRUM Be-0
- 2023年8月5日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2023年8月6日(日)岐阜県 岐阜club-G
- 2023年8月10日(木)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2023年8月12日(土)宮崎県 LAZARUS
- 2023年8月13日(日)熊本県 熊本B.9 V1
- 2023年8月27日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2023年9月2日(土)愛媛県 WStudioRED
- 2023年9月3日(日)高知県 CARAVAN SARY
- 2023年9月9日(土)沖縄県 桜坂セントラル
ベリーグッドマン結成10周年 × 阪神甲子園球場100周年記念事業 ベリーグッドマン ~甲子園 LIVE 2023~
- 2023年11月18日(土)兵庫県 阪神甲子園球場
プロフィール
ベリーグッドマン
Rover、MOCA、HiDEXの3人が2013年11月に大阪で結成したボーカルユニット。2014年3月に配信シングル「コンパス」でデビューし、同年4月に初のアルバム「SING SING SING」をリリースした。その後も精力的にライブや楽曲リリースを続け、2016年3月にシングル「ありがとう~旅立ちの声~」でメジャーデビューを果たす。2018年10月に結成5周年を記念した初のベストアルバム「BEST BEST BEST」を発表。2020年8月にはレーベル・TEPPAN MUSICを設立し、同年10月に第1弾作品となるアルバム「TEPPAN」をリリースした。2022年9月に通算10枚目のオリジナルアルバム「すごいかもしれん」、2023年4月に11枚目のアルバム「ピース」をリリース。全国47都道府県ツアーを経て、結成10周年を迎える11月に念願の兵庫・阪神甲子園球場でのワンマンライブを行う。
BERRY GOODMAN OFFICIAL WEBSITE
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