ベリーグッドマン「すごいかもしれん」ニューアルバムを語る (2/3)

合宿で生まれた渾身の1曲

──「雑草」は3人でグラウンドに立って歌っているミュージックビデオが印象的ですが、あの野球場はどこなんですか?

Rover 大阪・能勢町の豊中リトルリーグというチームが土日だけ練習する球場なんです。それ以外の日はドローンフィールドになってて、ドローンを飛ばせるところを探してて見つけました。選手のお父さんたちが「ベリーグッドマンが撮影に来る」とすごく喜んでくださって、色紙も用意してくれて。いい感じの関係になりましたね。

HiDEX ほぼ山の中ですね。

Rover 「ド田舎やなー!」って担当の人の目の前で言っちゃって、最低でした(笑)。貸してもらってるのに。この曲は合宿でできたんですよ。3人で6月の頭ぐらいに「とにかく1曲生み出そう」ということで、淡路島の一軒家みたいなところを2泊3日で借りて、リビングにスピーカーとかマイクとかピアノをセッティングして。まあ、それ以外はほとんど飲んでたんですけど(笑)。

HiDEX 僕とMOCAは3、4曲作るつもりで行ってたんですけど、Roverが「渾身の1曲できたから」と言ったのでみんなでスナックに……(笑)。

Rover 僕も3、4曲作るつもりだったんですけど、全部70%で終わるのは嫌だなとも思っていたので、1曲入魂で(笑)。MOCAが「泥臭い曲がいい」と言って「雑草」という曲名を提案してくれたときにビビビッときましたね。

MOCA いつも早く進めたいからタイトル案を出すんですけど、Roverが「MOCAのタイトル、今回はいらんから」と言ってきたんです。「うわ、これは長なるぞ。ヘタしたら2日ではできないわ」と思ってたんですけど、ふとRoverの後ろを見たら、めちゃめちゃ雑草が生えてたんですよ。

──(笑)。

MOCA ヒデがトラックを作りながら弾いているピアノが聞こえてくる中、「『雑草』ってどう?」と言ったら「うん。『雑草』やな」とすんなり決まって。

Rover なんでタイトルを先に決めたくないと言ったかというと、それでめちゃめちゃ悩むんですよ。愚痴っぽくなりますけど、誰が決めたわけでもないのになぜかサビを考えるのは僕なんです(笑)。例えば「いい気分」と言われたら、そのお題に沿っていわゆる大喜利をしていかないといけないじゃないですか。かつて「ナツノオモイデ」問題っていうのがあって。「ナツノオモイデ」っていう曲を出したときに「そのタイトルなんやねん」と思って、最初ラブソングやったんですけど歌詞を全部変えて。それがトラウマになってるんです。

MOCA  Roverが「これ、どうかな?」って聞いてくるんですけど、「ちゃう」とか言うんすよ、僕。

──お題を出した人ですからね(笑)。

HiDEX でも、このサビはけっこう3人で作ったんですよ。いろいろ出し合って「あ、それいいやん」ってなったことをつないでいきました。

Rover そうそう。「雑草」は素晴らしい出来なので、今後も3人で考えたほうがいいと思いますよ。

MOCA ひさびさにホワイトボードを持ち込んで、ワードを書き出していったもんな。

Rover 全曲3人で考えたら大変ですけど、だから面白い曲がとめどなく出るのかな、と思いますね。僕とMOCAとか、僕とヒデとか、ヒデとMOCAとか組み合わせもいろいろあるし、困ったら3人でやればいいし。

「歩くメロディメイカー」と「歩く歌詞変えおせっかい野郎」

──昨年末にアップされていたYouTubeの「こちらベリグ放送局」を観て、それぞれの得意不得意をそのときどきで上手に補い合えているチームなんじゃないかなと思いました。

Rover 絶対そうだと思います。だからいつも新鮮というか、張りのある感じで作業ができるんですよね。自分のヴァースは自分で考えるわけなんですけど、メンバーの目を気にして「これ、どう思われるかな」とか「『またこれ出してきやがったな』って思われたら嫌やな」とか(笑)。

HiDEX あと、「うわー、先にMOCAに言われてるやん」みたいなことがあると、違うもん出さないとダメですしね(笑)。

Rover そういうプチバトルがすごく刺激になってますね。1人で全部作ってたらそんなことにはならないので、面白いなとは毎回思いますけど、やっぱりアルバム制作前になると1回落ち込みます。

──「もう言葉が出ない」みたいになるんですか?

HiDEX 僕は出ないというより、毎回「どうやって作ったっけな」となります。過去の曲を聴いても思い出せないんですよ。前はそこで悩んでいましたけど、今はもう「前は前、今は今。どうせ出る」と思いながら毎回挑んでいます。

──「Mic」に「天才的メロディは出るまで出す」というラインがありましたね。

Rover 僕はそっちタイプなんです。「天才的メロディ」は自分で言ってるだけですけど、いいメロディとか節は降りてくるわけではなくて、何百回も考えて絞り出すんですよ。しかも僕はすごく臆病なので、「これでよかったんかな」とか、リリースしたあとでも考えてしまうくらい。とにかく出なくなるまで出し続けるんですけど、「これは無理かもしれん」と何回も思うくらい追い詰められますね。

──“サビ考え係”ですもんね。

Rover そう言われると次の作品で変な空気感になるから嫌なんですけど(笑)。MOCAは「はよ出して」と心ないことを言ってくるんですよ。

MOCA Roverは自分のことを「歩くメロディメイカー」と言っちゃってるんで(笑)。

Rover 僕がメロディと歌詞をセットで考えても、MOCAは歌詞だけめっちゃ変えてくるんです。彼も「歩く歌詞変えおせっかい野郎」という異名を持ってるかもしれないですね(笑)。

ベリーグッドマン

ベリーグッドマン

ベリーグッドマン

ベリーグッドマン

マシュマロは喉にいい

──6曲目の「トリトマ」でちょっとスローダウンしますね。

Rover 「花束」とか「それ以外の人生なんてありえないや」みたいに、自然体なカップルのちょっと青春ドラマっぽいラブバラードは僕たちの得意な曲ではあるんですけど、この「トリトマ」は悲しみを帯びてますよね。でも、HiDEXの声はこういう曲が合うんですよ。ちょっと傷を負っている感じというか、笑顔で「愛してるよ」というタイプの声じゃないから。

──確かに悲しみや切なさが似合う気がします。

Rover トリトマは花の名前なんですけど、花言葉が「恋するつらさ」とか「あなたを思うと胸が痛む」なんです。悲しい感じでまっすぐに気持ちを伝えるという日本的な雰囲気が出ていると思っています。

HiDEX 「トリトマ」はレコーディングに一番時間がかかりました。何回挑戦してもあかんくて、最終日まで残った曲やったんですよ。何回歌ってもサビがうまいこといかなくて、「Rover歌ってくれへんかなあ」って(笑)。

Rover これは確かにめちゃめちゃ難しい。

HiDEX ずっと喉の調子が悪かったんですけど、もうこの日に録らないと間に合わないというところまで追い込まれて。あきらめそうになったので気晴らしにスーパーに行ったとき、「そういえば喉にはマシュマロがいいって聞いたな」と思い出して買ってみたんです。

MOCA 蜂蜜とかじゃないの?

HiDEX 蜂蜜とか、のど飴とか、オリーブオイルとか、ひと通り試したんですけど全然よくならなくて。それでマシュマロを作業の合間に食べていたらなんとか録れたんですよ。

Rover 「マシュマロ」っていう曲名にしたらよかったのに(笑)。僕もちょっと食べてみようかな。このあとテレビの収録があるんで。

HiDEX ただ、効果がめっちゃ短いねん。1回歌ったら切れた(笑)。

けっこう乙女なMOCA

──次の「君がいない帰り道は」で面白かったのは「愛及屋烏(あいきゅうおくう)」という歌詞でした。

MOCA これはRoverがめっちゃ昔にサビを作った曲で、自分が歌うイメージがまったくなかったんです。でもある日、カラオケで友人が歌った椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」の歌詞を見て、あの世界観に自分が入ったらどんな感じかなと思い付いて書いてみました。

MOCA

MOCA

──椎名林檎さんは確かに言葉遣いが独特ですね。

MOCA 「愛及屋烏」って、好きな人の家に止まっているカラスさえかわいく見えてくるっていう、めちゃめちゃ変態的な精神状態を表した四字熟語なんですよね。面白いから使ってみようと思って。ただ2番は普通に歌ってるから、ギャップがあって恥ずかしいんですけど(笑)。

Rover 2番は「愛及屋烏」的な言葉が出てこなかったんやな。

MOCA 辞書でめっちゃ調べたけど、使えるフレーズが出てこなかったんです。

Rover しまいには「Lonely night」って歌ってますからね(笑)。

MOCA はい。めっちゃ普通です。

──ヒデさんは珍しくラップを披露していますね。

HiDEX 「チョベリグ」のときに「いいね」で3人ラップすることになって、やってみたら楽だったんです。今までは2人のメロディがそこまで高音じゃないから、自分は高いところにいかんとあかんのかなと思って高音パートを歌っていたんですけど、ラップで「低いの楽!」と気付いて。もういい歳になってきたのもあって、落ち着いて歌うのがしっくりきたというか。それでまたやってみました。

Rover MOCAが最初に作ってきたメロがレゲエっぽい感じやったんですよ。それはそれで面白かったんですけど、秋の作品だから「ちょっと切ない感じが欲しいね」ということでテコ入れさせていただきました。それでとびきり切なくなった感じがあるんですけど、僕の中ではこの「君がいない帰り道は」のメロディはレゲエなんですよ。それはMOCAから受け継いだもので、オートチューンをかけてロボットみたいな声でやってもカッコいい研ぎ澄まされたメロディだと思っていて。「必ず何かの天才」に入っている「Distance」のパート2みたいな感じで、MOCAの歌声にはそういう哀愁を含んだ部分があると思うんですよね。

MOCA 僕、けっこう乙女なんですよ。飲んでベロベロで1人になったときにめちゃめちゃ寂しくなって。

RoverHiDEX (笑)。

MOCA 友達と飲んでて「タクシー全然止まらんし」みたいなときに作ったデモなんです。

Rover でもレゲエなんですよね(笑)。僕が悲しい気持ちになったらまた違うメロができるんですけど。