ベリーグッドマン Rover MOCA|丁寧に考え抜いた言葉で届ける 身近な人への愛とメッセージ

友人・ケケ丸くんに向けた曲

──「散々」は、最初のRoverさんのフロウが入り組んでいて楽しいですね。

Rover 入り組んだことをやりがちですね。この曲は33歳アニバーサリーの曲で、“33”を「散々」という言葉や野球の「33年プレイヤー」とかけてるんですけど、歌詞にもある「3バントアウト」って僕、草野球でけっこうやるんですよ(笑)。それがすごくダサいことだって最近知ったんですけど。

MOCA 野球界で一番ダサい(笑)。まずやらないことやから。

Rover 笑いも起きないというか、「おいおいおいおい、何してんねん……」という空気の中ベンチに戻っていくときのあの情けなさは完全に「散々」やなって(笑)。

──「baby you」はまっすぐなラブソングですね。トラックがさりげなくカッコいいです。

Rover これは僕とHiDEXが20歳ぐらいのときにユニットでやってた曲なんです。13年ぶりにリメイクしました。今までやらなかったのは、たぶん歌い飽きたのと、照れ臭さもあったと思います。こういう曲ってもう書けないし、MOCAも「だからいい」って言ってくれたので「10年以上経ったしまあいいかな」みたいな。ド頭のAメロとか当時のまんまです。

MOCA

MOCA 2人のことは当時から知ってて、僕も好きな曲だったんですけど、自分が絡むようになった頃にはもう歌わなくなってたんです。でも大阪のインディーズシーンではこの曲を知らない人はいないと思います。……ウソです(笑)。

Rover 知らない人いっぱいいると思います。

MOCA よく行く歯医者がインディーズ時代から応援してくれてるんですけど、その人へのサプライズプレゼントですね。誰かのためにやったことが多くの人の心を打つはずだと信じていて、「誰に宛てたのかわからないものより、1人の人にめっちゃ刺さるほうがいい」というようなことをふんわり思いました。

──そういう曲、ベリーグッドマンには多そうですね。

Rover 誰かをイメージして作った曲はけっこう多いですね。

MOCA 「必ず何かの天才」は、ケケ丸くんっていう3人の共通の友達が作らせてくれた曲でもあるんですよ。小学生のときから蝶野正洋さんに顔が似てるっていじられてて、彼女は全然できへんし、月初めにパチンコで勝ってみんなにおごって、月末には金がなくなって家を一歩も出ない、みたいなやつなんです。そいつがいつも「ほんま俺あかんわ!」って赤ちゃんのような笑顔で言うてて、めちゃめちゃまぶしいんですよ。「こいつすげえ才能あるな」って思うし、本人にも伝えるんですけど、「いやいや、お前みたいなんとは全然ちゃうから」って言うてて。

あえて60点ぐらいの文章に

MOCA 「それ以外の人生なんてありえないや」も、最近音楽をやめた仲間が結婚するって聞いて「じゃあ、結婚式にサプライズで歌いに行くか」というところから作り出したんですよ。作ってる間にRoverの義理のお兄さんが亡くなって、鎮魂の気持ちも込めました。

──そういう歌がウエディングソングとして広く聴かれているのは素敵なことですね。この曲はMVが2パターンあります。

MOCA ワンちゃんバージョンは「カメラを止めるな!」(2017年公開の映画)のチームが作ってくれて、3月に公開したんですけど、僕は暖かくなってからも聴いてもらえる曲にしたくて、勝手にもう1個、夏向けのMVを作っちゃいました。寒くなるとまたワンちゃんバージョンに戻ってくるし、多いほうがいいかなと。僕は動物アレルギーなんでペットは飼ってないんですけど、Roverは猫と暮らしてるし、スタッフにもワンちゃんを飼ってる人がいっぱいいて、「お母さんがどんどん猫を保護してくる」みたいな話も聞くんですよ。それって産む以上の愛やなと思って。そういう動物と人間の愛情も描けたらいいな、というのはありました。

Rover

Rover この曲自体は、TEPPAN MUSICを設立するにあたって5曲ぐらい作ったデモのうちの1曲ですね。リード曲って作るのが大変なんで、「先にアイデアだけ持っておこう」と思って作ったんですけど、そのうち4曲はまだ発表もしてないです。今思ったら「それ以外の人生なんてありえないや」のためだけに書いた4曲なんかなと思います。

──なるほど。それぐらい厳選した10曲ということですね。

MOCA 自分たちで「最高の1枚」とか「名曲」とかはあんまり言わないようにしてるんですけど、僕の中では誇らしい曲ばかりです。多くの人に届けたいですね。

Rover 「こういう言い回しをしたらどう思われるか」というような届け方、伝え方の計算はめちゃくちゃ訓練してきたと思います。だから考えたくなくても考えてしまうんですよ。例えば「ナツノオモイデ」の2番の大サビの「どこまでもいけると思って 歩き出したはずだけど」の2行、それも最後の「だけど」の3文字をめちゃくちゃ考えたんですよ、実は。本来「なのに」のほうがハマりはいいんですけど、「だけど」にするとそれだけで一気に身近になるんですよね。「なのに」だとナレーターが入ってるような気がするけど、「だけど」にすることによって本人が本音で言ってる感じが出るんです。そういう“日本語としては60点ぐらいの文章”にあえてするために、かなり考えてますね。

──「GroovyでDancingなParty」の「カーネギーにいるような 大音声(だいおんじょう)」という言葉もそうして考えた表現ですか?

Rover これはパッと出てきたかもしれないですね。ただ「new era」でも「いつか大声で分かち合う今を」って歌ってるし、「大声」や「叫ぶ」というのがけっこう今回のテーマになってます。「カーネギーにいるような 大音声」だから、カーネギーホールで大合唱するみたいなイメージがずっとあったんでしょうね、僕の中で。

「幸せなほうがええよな」

──今作のジャケットはHiDEXさんが描いたそうですね。

ベリーグッドマン「必ず何かの天才」通常盤ジャケット

Rover 「お願いします」って言って一発目に120%で上がってきたんで、次からはずっとHiDEXにお願いしようかなと思いました(笑)。ジャケットを描いてくれた人史上、一番メンバーの気持ちを汲み取ってくれてるんで。The Beatlesっぽくもあって、新鮮ですね。

──さっき「Alarm」が初めてのパターンだというお話がありましたが、ベリーグッドマンはラブソングも基本的にチャラチャラはしていませんよね。身近な人に感謝と愛を伝える情愛ソングっぽいものが多いような。

MOCA 自分たちが聴いてきた恋愛ソングの流れとかもあるんでしょうね。僕は、ラブソングはほとんどJ-POPしか聴いてこなかったんで。そういう意味ではHiDEXが一番シリアスというか切なさを持ってますけど……。

Rover でもミスチルめっちゃ聴いてたしな。王道っちゃ王道というか。

MOCA あとは、そうなっていきたいという気持ちが3人の中にあるんでしょうね。幸せなほうがええよなって。失恋ソングはほぼなくて、作ろうと思って作る感じですし。

Rover この歳で失恋ソングを歌われても……というのもあるじゃないですか(笑)。もうちょいシャキッとしてくれと。それで王道ラブソングしかできないのかもしれないですね。

MOCA 「Distance」も失恋ソングの形はとってますけど、僕の中ではベリーグッドマンとファンが会えなくなったことを恋愛で表現した曲なんですよ。「あぁ、楽しかった思い出が急にFlash back」って歌ったら大阪城ホールのことを思い出すし、「ケンカとかもあったのにな」っていうのはファンに指摘を受けたことやったりするし。でもファンじゃない人には失恋ソングとして聴いてもらえたらいいなと。このあとツアーがありますけど、ファンの方への思いを込めて歌いたいと思います。お客さんには「会えたね!」という感じで、ほっこりしてほしいですね。

左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。 左からRoverとMOCA。

公演情報

ベリーグッドマン “必ず何かの天才” TOUR 2021-2022
  • 2021年10月16日(土)大阪府 フェスティバルホール
  • 2021年10月17日(日)大阪府 フェスティバルホール
  • 2021年10月29日(金)静岡県 三島市民文化会館
  • 2021年10月30日(土)千葉県 君津市民文化ホール
  • 2021年11月13日(土)岡山県 岡山市民会館
  • 2021年11月14日(日)広島県 上野学園ホール
  • 2021年11月21日(日)長野県 カノラホール 岡谷市文化会館
  • 2021年11月23日(火・祝)北海道 札幌市教育文化会館
  • 2021年12月3日(金)岐阜県 バロー文化ホール
  • 2021年12月5日(日)福岡県 福岡サンパレス
  • 2021年12月11日(土)滋賀県 大津市民会館
  • 2021年12月12日(日)奈良県 なら100年会館
  • 2021年12月25日(土)宮城県 トークネットホール仙台 大ホール
  • 2022年1月8日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2022年1月16日(日)東京都 中野サンプラザホール
ベリーグッドマン
ベリーグッドマン
Rover、MOCA、HiDEXの3人が2013年11月に大阪で結成したボーカルユニット。2014年3月に配信シングル「コンパス」でデビューし、同年4月に初のアルバム「SING SING SING」をリリースした。その後も精力的にライブや楽曲リリースを続け、2016年3月にシングル「ありがとう~旅立ちの声~」でメジャーデビューを果たす。2018年10月に結成5周年を記念した初のベストアルバム「BEST BEST BEST」を発表。2019年1月には念願の地元・大阪城ホールでのワンマンライブを開催した。2020年8月には新レーベル・TEPPAN MUSICを設立し、同年10月にアルバム「TEPPAN」、翌2021年の10月にアルバム第2弾「必ず何かの天才」をリリース。またグループとしての活動と並行して、APOLLO、関ジャニ∞、Kis-My-Ft2、CODE-V、Softlyなどほかのアーティストへの楽曲提供も行っている。