Base Ball Bear|足踏みしない3人の新たなスタート

ロックバンドはフィジカルが大事

──新作の「ポラリス」は内容が濃くて、同時にバンドサウンドの強さも伝わる4曲になってますね。例えば「PARK」なら、「みんながつらい時代なんかに慣れたくない」ということを歌ってたりして、閉塞感のある時代に風穴を開けようとしている印象も受けました。

小出 タイプの違う4曲を入れられたかなと思います。「PARK」ではラップをしてるんですけど、もともとラップをやろうと思ってたわけじゃないんです。リズム主体で曲を作っていくうちにラップがハマる気がして、「自分の歌唱表現の中にラップがあったな」って感じで。

堀之内 「試される」と「PARK」はリズム隊主導で作った作品なんですよね。関根さんが作ったベースのフレーズが最初にあって、それを膨らませていって形にできたことはまた自信にもなりました。演奏面でも、以前はこいちゃんか関根さんのどちらかがリズムを取ってた感じだったのが、どっちもメロディを担うように変わって、ベースがリフを弾くときも出てくるようになった。自分もリズムやビートに重きを置いて叩けるようになったので新鮮ですね。

関根 さっき言ったエネルギーをイメージしつつ、リズム隊から「こういうのどう?」と提示して、「ああ、いいね!」ってバンドで盛り上がって曲ができていく。そうなると、もう人数とか関係なくなるくらいで(笑)。

──むしろ迫力が増した感じがするし、主体性が濃くなってるのが音でわかります。

小出 フィジカルの強さは僕らの中でやっぱり大事ですね。ほかのバンドを観てても、自分が「カッコいいな」って思うのは、音数どうこう以前にフィジカル面が強い人たちなんです。オーディオ的にいいものを作りたい気持ちも当然ありますけど、それよりもライブで演奏すること、お客さんの前に立つことが常に頭にある。

関根 そうだね。ライブで演奏してナンボだと思う。ライブをやって感じたことを作品に還元していくのがロックバンドじゃないかな。

──DISC 2には「日比谷ノンフィクションVII」のライブ音源も収録されてますね。

小出 3人での演奏が音源化されてなかったし、総決算の1つとして野音の模様を録りました。でも、そのあとの名古屋のライブ(11月11日の愛知・DIAMOND HALL公演)のほうがよかったんですけどね。

関根堀之内 あはははは!(笑)

小出 「試される」を初披露した日ですね。あの日のほうがよかった!

関根 えー!

堀之内 ライブがどんどんよくなってるってことです。

小出 これはドキュメント、記録物だから。

堀之内 そうだね。二度と同じ演奏はできない。テンポだって、僕らは同期を使ってたりもしないので。

小出 野音はクソ速い。2000倍速い!

関根 うふふふ(笑)。

Base Ball Bear

「みんなどうやって悲しい気持ちを乗り越えてるのかな」

──DISC 1の話に戻るのですが、「Flame」は大きく言うと、時間というものについて考えた曲なんですか?

小出 ストーリーがあるものではなく、自分がいつも持ってた感覚を漠然と歌詞にするような落とし込み方ですね。イニシエーションと言いますか、通過儀礼みたいなものをテーマにしてます。生きてるとつらいこと、悲しいことっていろいろあるじゃないですか。ときには10年も引きずってしまうような。

──はい。

小出 だけど自分に限った話じゃなくて、誰しも何かしらを乗り越えたりしているものですよね。僕の倍くらいの年齢の人にもなれば、倍くらいのそういう出来事をきっと経験してて、どこかで何かしらの折り合いをつけてる。適度に折り合いをつけて大人になっていくし、しかもそれがたぶん死ぬまで続く。一生通過儀礼って感じで人生は進むんだろうなと思ったんです。なので、そういうバースデーソングにしました。

──歌詞から漂う悩ましさはそういうことでしたか。

小出 「みんなどうやって悲しい気持ちを乗り越えてるのかな」とか、わざわざ誰にも相談しないけど、誰しも考えることだとは思うんですよ。ただ、たぶん考えても答えがないことだなとわかってもいて。

──そうでしょうね。

小出 物語にして書けば一番早いけど、それだと限定的になってしまって、考えていることの漠然さが伝えられない。なので漠然としたことを漠然としたまま言葉にして、歌いながら今後考えていく。そういう詩的さもいいなと。これまで僕は「詞」のほうを意識して歌を書いてきたんですが、前作「光源」あたりからポエムとしての「詩」も意識するようになってきて。大人になるにつれて、そういう詩心(うたごころ)みたいなものを、少し形にできたのが「Flame」ですね。

堀之内 全体的にサウンドの新しさがある一方で、「Flame」はこいちゃんの歌も際立ってるよね。僕は今作に「絶対入れたい!」ってずっと言ってました。バランスが絶妙なんですよ。リズムが特に派手だったりということはないけど、このテンポ感で、弾きまくるギターソロもあって。

関根 私はやっぱりギタリストにソロを弾いてほしいので、リズムギターがないのを踏まえてベースでコード感を出すようにしたりもして。すでにある曲に対してベースラインを付けるんじゃなくて、ベースのフレーズから曲を作っていくのも含めて、何かと考え方をガラッと変えてます。

小出 どの曲もリードにできるけど、「Flame」みたいな曲をピックアップして聴いてもらうほうがいいと思ったんですよね。今言ったみたいに、決してわかりやすい曲ではないからこそ。今までだったらリード曲は「試される」になってたはず。でも、「Base Ball Bearがどんなバンドになってきたか」を表現するのに「Flame」は最適というか。今だから伝えたいですね。

堀之内 ギター、ベース、ドラムの音を聴くと誰が何をやってるのかがすごく鮮明にわかるし、何よりも歌がしっかり前に出てる。「Flame」では今のBase Ball Bearの3ピースがいい塩梅で味わえるはずです。


2019年1月30日更新