Base Ball Bearが、自主レーベルDrum Gorilla Park Records(DGP RECORDS)から新作「ポラリス」を1月30日にリリースする。
2017年4月発表の7thアルバム「光源」以来、実に約1年9カ月ぶりのリリースとなる本作は、先日ライブ映像が公開された「試される」、新味を感じさせるミディアムナンバー「Flame」、自主レーベルのスタンスを感じさせる力強い「PARK」、メンバーのソロ回しが光る「ポラリス」という充実の4曲入り。付属のディスクには2018年10月21日にRHYMESTERとペトロールズを迎えて行ったライブ「日比谷ノンフィクションVII」からのライブ音源と代表曲「17才」の新録音源が収められている。
3人での演奏を追求したという本作で、Base Ball Bearはどのようにバンドを見つめ直したのか? メンバー全員にインタビューを行い彼らの現状に迫った。
取材・文 / 田山雄士 撮影 / 福本和洋
3ピースバンドとして本当のスタート
──音源のリリース自体がかなりひさしぶりですね。
小出祐介(Vo, G) そうみたいなんですよね(笑)。1年9カ月ぶりということで。でも、ずっとツアーをやってたので制作自体はひさびさだったけど、活動が止まってた感覚はないんですよ。
関根史織(B, Cho) ライブをかなり精力的にやってたもんね。2017年、2018年は多かった。
──ちなみに2018年はどんな年でしたか?
小出 やっぱり絶えず動いてた感じです。あまり意識してなかったものの、転換期だったんじゃないかな。弓木英梨乃(KIRINJI)さんをサポートギターに迎えて回った一昨年のツアー(Base Ball Bear「Tour『光源』」)の続きから2018年は始まってて。
堀之内大介(Dr, Cho) そうそう。2018年の動き出し、早かったよね。「もう始まるのか!」みたいな(笑)。でもって、5月からはいよいよ3人体制にシフトするっていう(参照:Base Ball Bear「LIVE IN LIVE」シリーズ第3弾で全国8カ所回る)。
小出 そこまではずっと「ライブは4人編成でやるもの」という考え方だったんです。4引く1的な意味での3ピースでなく、純然たる3ピースに本格的に転換していって。バンドの体質が変わってきた。
関根 シンプルに言えば、2018年は3ピースで活動し始めた年。それが一番大きいですね。3人編成でたくさんライブを重ねられて、その中で次の作品がイメージできて、今回の「ポラリス」につながっていった気がします。
堀之内 去年はこいちゃん(小出)のソロユニット・マテリアルクラブがあったり、関根さんがチャップマンスティックを弾いて1人でフェスに出たり、僕もいろいろサポートをやらせてもらったり。個々の活動を経たことで、各々がバンドをより見つめ直せたところもありますね。「Base Ball Bearを今後どうしていきたいのか?」ということを3人でツアーをやりながらつかんでいって。
小出 演奏ひとつとっても考え方が変わりました。自分で言えば、今まではリードギターがいて、バッキングギターを弾きながら歌ってたのが、両方やることになる。単純に音数は減るから「どうカバーしていくか」「どうすれば減ってるように聞こえないのか」。最初のうちはそこを考えてましたね。でも、実際にライブをやっていったら「足りない」とはあまり感じなかったんですよ。
──というのは?
小出 4人でやってたことの1人分をやらないだけなら、そりゃあ「足りない」になるんだけど、ギターはリードとバッキングの必要なパーツを持ってきて再構築しつつ、ドラムとベースにはよりリズムのボトム感が出るように工夫してもらって。2人のリズムが太くなったら、そもそもギターを弾きすぎなくてもいいんだなと思えてきて。今は隙間ができるのが心地いいというか。その感じがつかめてからは、ライブを通して音の積み立て方を大胆に更新できました。従来の曲はリードとバッキングが完全に分かれてたんで、一緒には演奏できないと思い込んでたんですよね。あとは「バッキングなしじゃ、このリードは絶対に成立しない」とか。
──なるほど。
小出 ただ、前作のアルバム「光源」については後々ちょっと反省点がありました。3ピースになって初の音源なんですけど、それまではやっていなかった同期などで音を盛る方向の作品だったので、やっぱり3人だけで同期なしでライブをやると物足りなさを感じてしまって。そういう意味で今回の「ポラリス」は、3ピースバンドとして本当のスタートだなと。
手元にある材料でおいしいものを作る
──本作に収録されているのは、ライブの経験を踏まえて改善したうえでの4曲になってると。
小出 はい。ダビングも全然してないし、ライブで再現できないような3人以上のことをやってない。アレンジが最小公倍数であることを意識しました。盛る方向は2017年秋の日比谷野音ライブが1つのピークでしたね。弓木さんを含めて、鍵盤やブラスも入れて最大10人くらいで演奏したときは、「これでなんでもやれるぞ」なんて思ったりもしてたんです。そのことが、バンド以外の形で音楽を作るマテリアルクラブにつながるんです。最初は「ソロをやりませんか?」って話をスタッフからもらって。
──そうだったんですね。
小出 僕はあくまでバンドマンだと思ってるし、もともとソロ志向はなくて。野音のライブにも手応えを感じたし、断ろうとしてたんですよ。でも、チーフマネージャーと話してるときに「じゃあ、Base Ball Bearはもうなんでもやるバンドになるってことでいいんだね?」みたいに言われて。そこで「いや、やっぱり違うな」とハッとしました。むしろ、自分の好きなバンド像というのは「手元にある材料でおいしいものを作る」「最小公倍数で最大限のサウンドを作る」ことだったなと。だからこそ、4人編成のときは4人の中で演奏できることにこだわってやってきてたので。3人でその部分を改めて突き詰めていきたい気持ちになったんです。
堀之内 わりと早い段階で「3人でもいけるな!」って思えたのがよかったですね。いけそうな感じがしたからアレンジの考え方とかライブでの立ち位置とか試行錯誤しながら見出せたし、ポジティブに考えることができました。
関根 3人でライブをするうちに「ロックバンドって完成度よりもエネルギーのほうが大事だな」と思ったりもしました。手応えを肌で感じた瞬間も実際あって。そういうエネルギーが渦巻くような曲をこれから書いていきたいって気持ちになりましたね。
小出 逆にソロの形はマテリアルクラブというプロジェクトにして、そっちでいろいろ膨らむアイデアを形にすればよくなったので、住み分けがはっきりできました。
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ロックバンドはフィジカルが大事
2019年1月30日更新