ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

ブレない僕らの初ベスト

ブレるのが気持ち悪い

──全22曲を聴いてまず思ったのは、このバンド、ぜんぜんブレてねえなっていうことで。追求する音楽性も、歌詞の筆致や物語性もね。

小出 ありがとうございます。

──足かけ7年、よくここまでブレなかったなと思ってちょっと感動したんですけど。当事者としては曲を並べてみてどう思った?

小出 やっぱり完全には客観的に聴くことはできないんだけど。ブレてないと思っていただけるのはすごくうれしいし、自分でもそう思うところがあります。僕らとしては一本道なんですよ。道筋がちゃんとあって、そこを一歩ずつ進んでいるから、すべての曲が地続きになっているんですよね。

──きれいな一本道だよね。

小出 と思うんですよね、この22曲。

──よく寄り道しなかったね。

小出 うん(笑)。だから、ひとつ特筆すべき点があるとすれば、魂を売ってない感じじゃないですかね。

──だね。

小出 あるいは、最初から売っているというか。

──音楽にね。

小出 うん。そのニュアンスはこのベストを聴いてもらえればわかると思う。

──でもなんでここまでブレなかったの?

小出 なんだろうね? 真面目だからじゃないですか。たぶん気持ち悪いんですよ、ブレるのが。ブレかけた瞬間はおそらく何度かあったんです。ブレかけたというか……いつもと違うことをやろうとしたことが。でも、道筋を逸れるとやっぱり気持ち悪いと思ってしまう。そうやって肌で気持ち悪いと思った感覚を覚えたら、メンバー4人全員で省いてきたんですよね。実際ね、俺たちが制作で時間をかけている部分ってそこの検証だと思うんです。そうじゃない?

関根 うん。そうだと思う。

堀之内大介(Dr, Cho)

堀之内 あとこっちも「これはこいちゃんがいいと思うかもしれない」って、スタジオで音を鳴らしながらわかるんだよね。空気でわかる。これはいい、これは違うというのが。

小出 かといって毎回同じことをやってるわけではまったくないから。

──そうですね。毎回高みを更新している。

小出 それが僕らの基本的な目標だから。常に更新を繰り返していくことが。

変な曲を作りながらここまで来た

──20代前半から今に至るまで、ここまでまっすぐな道を歩きながら更新してこれたのはすごく希有だと思う。例えば“時代の旬”という誘惑もあるわけじゃない?

小出 うん、そうだね。

──それでもこのバンドは、シンセや同期モノを一切使わないという美学を死守してきたわけで。

小出 うん。まあ、そこは意地もあるしね(笑)。

──曲を聴いていろいろ思うことがあったでしょう?

堀之内 ありましたね。ブレてないって言ってくれましたけど、今回リマスタリングを終えてメンバーとスタッフで聴き直したときに「わー、やっぱりおもしれえバンドだな」って思えた。例えば「祭りのあと」なんかはすごくライブで化けた曲だし。音源を聴くのがひさびさだったりすると、「あれ? こんなテンポ速かったっけ?」って思ったり(笑)。聴き直す作業がめっちゃ楽しかったです。

──湯浅くんはどう?

湯浅将平(G)

湯浅 なんか変な曲が多いなって(笑)。

──表面的にはすごくポップだけど、中を覗けば覗くほど一筋縄ではいかない曲ばかりですよね。

湯浅 そうですね。シングルや代表曲のはずなのに変だなと思って(笑)。ライブでやっているときはわかりやすい曲だと思っているんですけど、改めて冷静に聴くと変だなって(笑)。

小出 僕らね、シンプルな曲ほどカップリングに回るんです(笑)。シングルの表題曲は、だいだい複雑ですよね。

──でも構造が複雑な曲にどれだけシンプルな聴き応えだったり、強いポピュラリティを持たせるか。ベボベにとって、そのチャレンジがシングル制作の醍醐味でしょう。

小出 それはありますね。シングルの表題曲って独特の考え方があるわけですよ。その1曲でいろいろ決まっちゃう怖さもあるし。だからこそ、いろいろ込めたくなる。シンプルでいい曲って確かに作れるんだけど、僕らが思うバンドの面白さって、今言ってもらったように、複雑なものをどうやってポップにしていくかということだから。シングルでは毎回それをやってきました。

──シングルでいい曲を作れることの立証は、ボーナストラックの「若者のゆくえ(Original Version)」でできている。

小出 そうそう。だから、全体的には「変な曲が多いな」みたいなベストになっていると思う。

関根 そういう面でもブレてないなって私も思ったんです。このバンドって、柔軟な部分もあるし、頑な部分もあって、そういうバランスを取りながら、変な曲を作りながら(笑)、ここまで来たんだなって。

ベストアルバム「バンドBのベスト」/ 2013年2月13日発売 / 2980円 / EMI Music Japan / TOCT-29119~20
DISC 1収録曲
  1. CRAZY FOR YOU の季節
  2. GIRL FRIEND
  3. ELECTRIC SUMMER
  4. STAND BY ME
  5. 祭りのあと
  6. 抱きしめたい
  7. ドラマチック
  8. 真夏の条件
  9. 愛してる
  10. 17才
  11. changes
DISC 2収録曲
  1. LOVE MATHEMATICS
  2. 神々LOOKS YOU
  3. BREEEEZE GIRL
  4. Stairway Generation
  5. kimino-me
  6. クチビル・ディテクティヴ
  7. yoakemae (hontou_no_yoakemae ver.)
  8. short hair
  9. Tabibito In The Dark
  10. 初恋
  11. 若者のゆくえ(Original Version)※ボーナストラック
Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

小出祐介(Vo, G)、関根史織(B, Cho)、湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr, Cho)からなるロックバンド。2001年、同じ高校に通っていたメンバーによって、学園祭に出演するために結成された。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」をリリース。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビューする。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催した。バンド結成10周年を迎えた2011年には、シングル3枚とアルバム「新呼吸」を発表。2012年は2度目の日本武道館公演を皮切りに活発なライブ活動を展開。2013年2月に初のベストアルバム「バンドBのベスト」とシングル「PERFECT BLUE」を発表した。