ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

王道ギターロックに挑んだ2011年第2弾シングル「short hair」

ギターロックのど真ん中を目指した

──それはアルバムに向かう一連のシングルの話ともつながってくると思うんですけど。前のシングル「yoakemae」はインタビューで語ってくれたとおり、バンドが3.5thアルバム以降に新しい局面に立ったことを示すハイブリッドな曲で。歌詞の筆致も「青春の記憶」から抜け出した、今の小出君のリアリズムが貫かれていた。で、この「short hair」は確実に進化したバンドの筋肉や方法論をもって、あえて王道のギターロックと向き合っている曲ですよね。

そうですね。

──今、王道のギターロックで何を表現できるのか、さらにはラブソングとしての独自の普遍性を小出君が追求したような印象がある。

この曲は「yoakemae」と同時期に作っていて。今年の初めくらいですね。「yoakemae」の次にどういうシングルを出そうかという話になったときに、今ある曲の中で僕が出したかったのが「short hair」だったんです。「short hair」でまず何をやりたかったかというフォーマット的な話をすると、実は今まで僕らってギターロックのど真ん中をいくような曲は一度も出したことがなくて。

──そうですね。曲の構造がどこかオルタナティブだったり。

うん。常に変化球を投げるというのが僕らのやり方で。ストレートなものをストレートに投げることは今までやってきてない。

──その理由というのは?

インタビュー風景

まず、ギターロックの基本的なフォーマットってかなり食い潰されてるじゃないですか。僕らは結成してからずっと下北沢を拠点にライブをやってきたんですけど、いわゆる下北沢のギターロックとか、ギターポップのムーブメントってありましたよね。

──「下北系」と言われていたものですね。

そう、その「下北系」がいちばん盛り上がっていたのが2000年初頭だと思うんですけど。そのムーブメントは僕が記憶している限り、2003年くらいまであったと思うんですね。僕らは2002年にライブハウスに出るようになったので、ムーブメントの終わりの匂いを感じながらライブをやっていて、自分たちはどんなことをやろうか模索していたんです。Base Ball Bearもギターポップな感じで始まったバンドですけど、自分を表現したいと思ったら、このムーブメントやフォーマットに乗っかるだけだったら埋もれるだけだなと思った。だったら、ギターロックとして変化球を投げながら自分たちを組み立てていこうと思ったんです。ギターロックがすごく好きだからこそフォーマットを崩したかったというか。

──なるほど。

そういう思いの先にできたのがインディーズから出した「夕方ジェネレーション」(2003年リリース)や「HIGH COLOR TIMES」(2005年リリース)というアルバムだったんです。でも、「yoakemae」を作っているタイミングで、ストレートなギターロックを作りたいと思ったんです。ただやるからにはフォーマットにのっとりながらも突出したもの、これならいけると自分で思えるカードを切らなければ意味がないなと思って。そこで最初にやったのが、コードを決めることだったんです。ギターロックのフォーマットってコード感が勝負だから。僕らは今まで普通にコードブックに載っているようなコードではなくて、自分で見つけたコードで曲を作ることをずっとやってきて。

──それは小出君が最もこだわり続けてきたところでもありますよね。

うん。で、この曲のコードを考えているときに、よくこれまでこれを使ってこなかったなっていう、完全に灯台下暗し的な(笑)。基本コードに指を1本付け足すくらいのコードに行き当たったんです。そしたら、案の定すごくハマって、曲の原形ができていって。

「yoakemae」のイメージを打ち消す曲を出してやろう

──歌の内容についてはどんなことを考えましたか。

やっぱりこの曲調だったら、恋愛モノになるなと思って。ただ、ストーリーテリングみたいなものをこの曲調にハメると気持ち悪いなと思ったんですよね。

──王道すぎて?

インタビュー風景

そうそう。じゃあ、今までやってないことをやろうと。ちょっと技術的な話になるけど、恋愛モノの歌詞って、相手の顔が見えるとより感情移入しやすいんですよね。でも、相手のことを説明的に描写するのはイヤだなと。そこで、タイトルに「short hair」というフレーズをポンと置いちゃえば、あとは自然に書けるんじゃないかと思って。相手の説明をしなくても、タイトルと場面設定で僕と女性がどういう関係なのかなんとなくわかるみたいな。だから、相手の気持ちを全く描写していなくて。この曲の歌詞を要約すると「会わなければよかった2人」っていうことになるんですけど、相手に責任を転嫁しないで、全部自分が負うというか。そういう歌詞のもっていき方はあんまりないと思って。実は結構楽しんで書いてます(笑)。

──「yoakemae」の次にこれを出すという戦略性も含めて、バンドの充実感や強固な自信を感じさせる曲になっていると思う。

「yoakemae」がかなりトリッキーな曲だったので、あれでBase Ball Bearがこういう方向にいくんだとは思われたくなかったんですよね。だったら、あれを打ち消すくらいの曲をもってきてやろうと思って。この曲に関しては、良いコードと良いサビと良い歌詞があるという当たり前のことをクリアした上で、それをバンドで良い演奏をするだけっていう。これも常々言ってることですけど、Base Ball Bearってギターバンドということだけがワン&オンリーのルールで。言ってしまえば無形のバンドなんですよ。

ニューシングル「short hair」 / 2011年8月31日発売 / 1000円(税込) / TOCT-40355 / EMI Music Japan

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CD収録曲
  1. short hair PVを観る
  2. ido feat. 呂布
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Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。「GIRL FRIEND」「ELECTRIC SUMMER」「STAND BY ME」などミニアルバム、シングルを連発し、同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2010年9月、3.5thアルバムと位置付けたコンセプトアルバム「CYPRESS GIRLS」「DETECTIVE BOYS」を発表。2011年6月にバンド結成10周年のアニバーサリーイヤーの幕開けを飾るシングル「yoakemae」をリリースした。