BAND-MAID「Unleash」インタビュー|世界征服第2章の幕開け、“解放”を掲げた新作EP完成 (3/3)

SAIKIが単独作詞に挑戦したワケ

──前作での経験が、そこにもしっかり反映されているんですね。その「I'll」から既発曲「Corallium」に続きますが、SAIKIさんはこの曲で初めて単独で作詞に挑戦したんですよね。

SAIKI そうなんです。今までも2人で作詞するといっても、一緒に書くという形ではなくて。

小鳩 例えば、この1行に対して3行の文章が送られてきて、それをがんばって1行にまとめていくという。

SAIKI この内容をどうにかそこにはめ込むみたいなやり方が多かったんですけど、自分だけで書いてみたくなって。自分がどう歌いたいか、どういう歌詞が気持ちいいのかがわかってきたタイミングでもありましたし、ちょうどコロナ禍で時間ができたのと、小鳩もちょっと忙しいタイミングであと1曲だけできていなかったので、「じゃあ私が書いてみる」と1人で書いてみました。

──「Corallium」での経験を踏まえて、今作に収録されている新曲「HATE?」でも再び単独作詞に挑戦しています。

小鳩 「Corallium」のあとから、デモをもらったらひとまず2人ともそれぞれ歌詞を書いてみて、いいほうを使っていこうということになったんですっぽ。なので、今作も「I'll」を含む何曲かは2人それぞれで歌詞を書いて、曲に合っているほうが使われているんですっぽ。

SAIKI 「HATE?」はもうデモの段階から“ザ・BAND-MAID”という攻撃的な楽曲だと感じたのと、ちょうどデモをもらった頃シンプルにムカついていたことがあったので(笑)、そのイライラを歌詞で表現しました。あと、単純に「I hate you」というフレーズを入れたかったんですよ。

KANAMI 歌いたくなるフレーズだよね(笑)。

小鳩 なかなかこれだけ「I hate you」と連呼できる曲もないっぽね。

BAND-MAID

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──この曲、エンディングの畳みかけが気持ちいいですよね。

SAIKI 一番おしりの「I hate you」にリバーブ感があったんですけど、ミックスのときにそこをバスっと切ってもらって。より「I hate you」感を強めてもらいました(笑)。

──7曲目の「influencer」はリズムに工夫が感じられて、今作の中でもっとも遊び心に満ちた曲だなと思いました。

AKANE この曲はガシャガシャした感じにはしたくなくて、シンプルかつ激しくしたいと考えたら3点(※バスドラ、スネア、ハイハット)に絞ってみようかなと思って。かつ、メリハリを付けたいからタムビートを使いつつ、Aメロはシンプルでタイトな感じにして、サビはシンバルビートでっていうこだわりがあります。ベースソロのところも今までのお給仕での経験を生かして、ベースを目立たせるために3点のアイデアというのが出てきました。だから、音的に聴きやすさがあるかもしれませんね。

──ダンサブルな印象も強いですよね。

AKANE そういう意味でも、やっぱり3点が重要なんだなと再確認できた1曲です。

決してマイナスではなかったコロナ禍の活動

──EP全体の統一感は非常に強いのに、1曲1曲はそれぞれ個性が異なる、バラエティに富んだ仕上がりになりましたね。

SAIKI やっぱりこの2年くらい制作を続けてきて、1曲1曲にかけられる時間が以前よりも増えたことが大きいのかな。「これもやりたい、あれもやりたい」という中で、それぞれの個性をしっかり入れ込むことができたことで、1曲1曲のキャラが濃くなったのかなと思います。

小鳩 曲によって作った期間がバラバラだったりするんですけど、それぞれブラッシュアップしていく過程で、それこそさっきの「HATE?」の後半のミックスを変えたりとか、そういうことに費やせる時間が今までそこまでなかったので、もう1回聴き直してということがあまりなかったんですっぽね。でも、今回のEPだとそれがしっかりできたので、曲ごとに異なる色を付けながらまとまりを保つことができたのかなって思いますっぽ。

──シンガー、プレイヤーとしてはもちろん、ソングライター、アレンジャーとしてもそれぞれの成長が伝わる内容だなと思いました。

小鳩 勉強熱心なKANAMI先生のおかげですっぽ。

SAIKI 最近はあんまりロックを聴かないようにしてるんだよね?

KANAMI そう。今まではいろんな楽曲を分析しながら聴いていて、気付いたことをノートに書いたりしていたんですけど、それをやっていると自分の曲がその分析したものと似てきちゃったりするので、ここ数年は流し聴きするくらいの感覚で。作曲面でのインプットはしないんだけど、上モノの勉強はしたいので、ロックでもグラミー賞にノミネートされたような曲は聴いたりして、BAND-MAIDというジャンルを確立させるためにがんばっております。

──小鳩さんはソロプロジェクト・cluppoを始動させましたが(参照:BAND-MAID小鳩ミクがソロプロジェクト始動、新ジャンル“HIPPIE-POPPO”を表現)、課外活動からのフィードバックはありますか?

小鳩 あると思いますっぽ。やっぱり歌い方ひとつとってもBAND-MAIDではできない歌唱をしたり、歌詞に関してもBAND-MAIDでは書けないような感じに差別化することによって、BAND-MAIDを改めて俯瞰で見られたので、SAIKIのマネがうまくなったのはそれもあると思うんですっぽ(笑)。違う歌い方を試したからこそ、「あ、こっちの歌い方にしたらBAND-MAIDの歌い方になるっぽ!」ということもcluppoをやったからこそわかったので、すごく大きかったと思いますっぽ。

BAND-MAID

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──そう考えると、この2年半は有観客でのお給仕はできなかったものの、制作以外にも収穫が大きかった期間だったんですね。

小鳩 そうですっぽ。初めてオンラインお給仕をやったときに、自分たちが思っている以上に反響が大きくて、普通のお給仕じゃなくてもこんなに世界中の人に伝わるんだと。それこそはじめましての国の方とか、最大で66カ国の方に観ていただけたので、そういう意味ではマイナスだったとは思っていなくて。むしろ、新しい自分たちの見せ方を発見できたっていうプラスの方向で受け取れていましたっぽ。

SAIKI いい経験もたくさんさせていただけた2年半でしたね。それにオンラインお給仕を通して、ご主人様・お嬢様がこんなにいたんだという気付きもありましたし。海外からも応援してくださっている方々がたくさんいるという話は聞いていても、やっぱり漠然としていて実感のわかない部分もあったんですね。でも、コメントで反応が見えることで「こんなに実在したんだ!」ってことがうれしくて。なので「止まっていられないな。突き進んで行って、みんなの期待に応えたいな」という思いがより強くなりました。

小鳩 たぶんコロナ禍の状況にならなかったら、私たちはオンラインお給仕をやらなかったと思いますっぽ。だって、それまでは「私たちはライブバンドだ! お給仕ありきだ!」と胸を張って言ってきたので。有観客でお給仕ができないことはつらかったけど、それでもプラスになる経験だったとは思いましたっぽ。

BAND-MAID

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もう止まりたくない

──この記事が公開される頃には、約2年半ぶりの有観客お給仕が再開して1カ月ほど経っているかと思います。そこでのリハビリを経て、10月からは13公演で約2万人を動員予定の全米ツアーもスタートします。

小鳩 スイッチをポン!と入れたら休む暇がないくらいのスピード感で今年は過ぎていくと思いますっぽ。

──全米ツアーはカリフォルニアでの「AFTERSHOCK FESTIVAL」で幕を開けます。BAND-MAIDが出演する10月9日はMuseやBring Me The Horizonなど、強力なラインナップとなっています。

SAIKI すごいですよね。最初は「本当かなあ?」と疑っていましたから(笑)。

小鳩 「全部コピーバンドじゃないっぽ?」って(笑)。

SAIKI でも、会場に到着するまで疑ってますけどね。

──そのほかの公演も大きい会場ばかりですし。

小鳩 しかも、こんなにソールドアウトするとは思っていなかったので、それこそちょっと疑っているというか。2万人動員ってパッとわからないじゃないですかっぽ。

SAIKI 3年前に回ったときとは会場も全然違って、どこもキャパが倍以上になっていて。最大規模で回るアメリカツアーなので、気合い十分です。

AKANE しかも、こんなに長く海外へ行くのも初めてなので体力的な不安もあります(笑)。

小鳩 3年ぶりの挑戦をしてきますっぽ!

SAIKI ここも「Unleash」ということで、解放していきたいと思います。

──このツアー経験がいい景気付けになって、2023年の結成10周年をよい形で迎えたいですよね。

小鳩 そうですっぽ! 来年は大切な10周年なのですっぽ。

SAIKI その10周年イヤーも1月9日の東京ガーデンシアターで幕を開けて、そこからさらに突き進みたいなと思います。

──気が早いですけど、2023年はどんな1年にしたいですか?

SAIKI もう止まりたくないね。

小鳩 もう足踏みするような時間はいらないっぽね。ちょっと長かったっぽね。

AKANE うん。

SAIKI このまま突き進んで行くので、もっと期待しておいてほしいかな。

小鳩 “初めて”を増やす1年にできたらいいですっぽ。

AKANE あと日本国内にもまだ行けてないところがいっぱいあるので、またしっかり全国ツアーをしたいですね。

SAIKI 日本も海外もたくさん回れるような2023年にしたいです。

BAND-MAID

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ライブ情報

BAND-MAID US TOUR 2022

  • 2022年10月9日(日)アメリカ カリフォルニア州サクラメント
    ※10月6~9日開催「AFTERSHOCK FESTIVAL」への出演。
  • 2022年10月12日(水)アメリカ ワシントン州シアトル Neptune
  • 2022年10月14日(金)アメリカ カリフォルニア州サンフランシスコ August Hall
  • 2022年10月15日(土)アメリカ カリフォルニア州ロサンゼルス Belasco
  • 2022年10月17日(月)アメリカ カリフォルニア州 サンディエゴ House Of Blues
  • 2022年10月19日(水)アメリカ アリゾナ州フェニックス Crescent Ballroom
  • 2022年10月21日(金)アメリカ テキサス州ダラス Echo Music Hall
  • 2022年10月22日(土)アメリカ テキサス州ヒューストン House of Blues
  • 2022年10月25日(火)アメリカ ワシントンD.C. The Fillmore
  • 2022年10月26日(水)アメリカ ペンシルベニア州フィラデルフィア Tla
  • 2022年10月28日(金)アメリカ ニューヨーク州ニューヨーク Irving Plaza
  • 2022年10月29日(土)アメリカ マサチューセッツ州ボストン Brighton Music Hall
  • 2022年10月30日(日)アメリカ ニュージャージー州イーストラザフォード American Dream ※追加公演
  • 2022年11月1日(火)アメリカ イリノイ州シカゴ House of Blues ※追加公演

BAND-MAID TOKYO GARDEN THEATER OKYUJI

2023年1月9日(月・祝)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

BAND-MAID(バンドメイド)

2013年7月に秋葉原のメイド喫茶で働いていた小鳩ミク(G, Vo)を中心に、SAIKI(Vo)、KANAMI(G)、AKANE(Dr)、MISA(B)の5人で結成されたガールズロックバンド。メイド服を身にまとい、ライブを“お給仕”、ファンを“ご主人様”、“お嬢様”と呼ぶスタイルで活動している。2016年3月にアメリカ・シアトルで実施された日本文化のコンベンションイベント「Sakura-Con」に出演し、約3000人の観客を前にパフォーマンスを披露。同年5月に3rdミニアルバム「Brand New MAID」を日本クラウンよりリリースしメジャーデビューした。2018年2月にメジャー2ndアルバム「WORLD DOMINATION」を、2019年12月にアルバム「CONQUEROR」を発売。2020年2月に全国ツアー「BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR」のファイナルとして東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演を2日間開催した。これ以降、コロナ禍の影響で海外公演を含むライブスケジュールが中止・延期となるも、7月、8月、12月にはオンラインお給仕を実施。国内外のファンから反響を得た。12月にメジャー6thシングル「Different」を発売。2021年1月にはポニーキャニオンに移籍し、メジャー4thアルバム「Unseen World」をリリースした。2022年9月には新作EP「Unleash」を発表。10月からは自身最大規模となる全米ツアーを開催する。