ナタリー PowerPush - ボールズ

犬を愛でながら「街と人」を歌う

7曲入りのアルバムのつもりだった

──今回アルバムの最後、8曲目に収録されている曲「スポットライト」がアルバムタイトルにもなっています。曲が先にできたんですか?

左から谷口修(Dr)、池田健(G)、山本剛義(Vo, G)、阪口晋作(B)、星野隼一(G)。

普通そう思いますよね? でも実は、7曲目までできてて7曲入りのアルバムにしようと思ってたんですよ。で、タイトルどうする?ってなって、「スポットライト」っていう言葉が浮かんだんですね。ジャケットのイラストみたいに深夜の高速道路を走ってて、工場とかの夜景が見えて、物寂しい感じやけど、どこかに向かってしっかり走っていくみたいな。

──「スポットライト」という曲はなかったんですね。

そのあとに時間があったからもう1曲作ってたらこの曲ができて。ほんまにまったく何も考えんと歌詞書いて、できたものを読んだらすごい「スポットライト」っぽいなって思ったんですよね。めちゃくちゃ感覚的なものなんですけど、自分の中でバチッとハマって、これ最後の曲にしようってなりました。アルバム聴いてもらうとわかるんですけど、7曲目「メルトサマー」の途中で曲がバシッと切れるんですよ。

──聴いててびっくりしました。

あれはもちろんわざとやってて。途中でバシッと切れていきなりこの曲が始まるっていうので、僕は「スポットライト」っていうタイトルの曲が最後にある意味がしっかり提示できたかなと思って、気に入っています。

「自分が良いと思う物がもっと沢山の人に届くシーンを作ります」

──「スポットライト」という単語には、メジャーに行ってスポットライトを浴びるという意味も込められているんでしょうか?

自分が何をするにしても、自分がしたいことをするには、自分自身が影響力を持たないといけないなと思って。人にスポットライトを当てたり、何かをフックアップして世の中に提示できるようになるには、まずは自分がスポットライトを浴びないといけないと強く考えています。

──スポットライトをあてたい人や、フックアップしたい何かがあるんですか?

大阪でずっと活動してたんですけど、周りにカッコいいバンドがすごくたくさんいるのに、ライブハウスに人がいないんですよね。来てる人も、いつも同じバンドばっかり観てるっていう。僕、それがすごい嫌で。でも嫌だって言ってみんなで仲良くしてても何も変わらんし、だから自分がいいと思ったものが評価される場所やシーン、時代っていうのを作りたいって思ってます。

──メジャーデビューを発表したときのブログにも「自分が良いと思う物がもっと沢山の人に届くシーンを作ります」という強いメッセージがありましたよね。

すごいもったいないです。選択肢がいっぱいあるように見えて、みんなどれを選んでいいかわからん状態になってると思う。莫大な情報で、いいものが埋もれていくんですよね。僕がいいと思ってるだけで、それは別の人から見たら全然よくないものかもしれないけど、それをわかった上で「僕はこれがいいと思うんやけど、どうですか?」って外に向けて発信していきたいって思います。

いい歌を作ってしっかり歌ったら売れるって信じてる

──そのために自分がスポットライトを浴びにいく、と。

左から星野隼一(G)、阪口晋作(B)、山本剛義(Vo, G)、池田健(G)、谷口修(Dr)。

僕たちが一歩先に行って、ほかのバンドのライブに誘われるバンドにならないといけないと思ってて。ほかのバンドと足並みそろえるのではまったく意味がない。だから僕はあえてバンドの友達は作らずにやってきました。企画とかでも1回呼んだバンドは絶対2回目は呼ばない。カッコいいバンドと本当は仲良くしたいけど、今は我慢したほうがいいんじゃないかなって、不器用なんですけどそう思いました。

──自分たちが先に行けるという自信があるということですよね?

あります。いい歌を作ってしっかり歌ったら売れるって信じてます。なので今はちょっと先行してるバンドに比べると、負けてるところはいくつかあると思うんですけど、自分たちの持ち味を全力で研ぎ澄ましたら絶対追い抜けるって思ってます。

──テレビに出るくらい売れたい?

めちゃくちゃテレビ出たいです。なんなら「アメトーーク!」とかも出たいですし、僕しゃべるの好きなんで講演会とかもやりたい(笑)。女性と別れたときに立ち直る方法とか、ヨリを戻す確率が上がる方法とか話したいです(笑)。

──(笑)。立ち直ろうみたいなことを歌で伝えるのではなく?

元気出そうぜみたいな? 僕、そういうのウソくさく感じてしまうんですよね。ライブで「さあみんな手を挙げろ!」とか言うのも。だからちょっと今はできないです。そういう歌で元気付けられる人もいるとは思うんですけど、僕は落ち込んでるときに「元気出そうぜ」って言われるよりも悲しい歌聴いてるほうが癒されるんで。

──励ますというよりも、寄り添いたい?

寄り添いたいと思います。悲しいときだけじゃなくて、何か思い返したときに「あのときに私この曲聴いてたな」とか、何か人生のかけがえのないワンシーンに僕らの音楽があったらすごい作り甲斐があるな、バンドやっててよかったなって思います。僕らの楽曲が誰かの人生に、ほんの一瞬でも寄り添えたら最高です。

──最後に、9月に東京と大阪で行われるワンマンライブの構想を教えてください。

ワンマンライブ初めてなんですよ。今作ってる新曲もやりますし、普段やらない曲とかも。いろんな時代の曲をごちゃまぜにして、お客さんがどんな顔をするのか楽しみたいです。あとカバーも披露しようと思ってます。

ボールズ - 通り雨

ニューアルバム「スポットライト」2014年7月9日発売 / 1944円 / Virgin Records / TYCT-60041
「スポットライト」
収録曲
  1. 通り雨
  2. SING A SONG GIRL
  3. 長い夢
  4. 君はまぼろし
  5. サイダー
  6. メルトサマー
  7. スポットライト
ボールズ 1st Album「スポットライト」発売記念ワンマン「スポットライトの夜」
  • 2014年9月19日(金)
    東京都 下北沢SHELTER
  • 2014年9月26日(金)
    大阪府 LIVE HOUSE Pangea
ボールズ
ボールズ

2008年に山本剛義(Vo, G)と阪口晋作(B)の2人で結成。大阪でノイズユニットとして活動していたが、ポップスを奏でるバンドへと転身し池田健(G)、星野隼一(G)、谷口修(Dr)が加入した。2013年10月に発表した1stミニアルバム「ニューシネマ」が、「タワレコ渋谷アワード2013<年間ベスト>」を獲得するなどロングヒットを記録。2014年4月にバンド名を「ミラーマン」から「ボールズ」に改名し、同年7月にアルバム「スポットライト」でメジャーデビュー。