ナタリー PowerPush - ボールズ

犬を愛でながら「街と人」を歌う

愛犬「セス」

──勝手なイメージですが、山本さんってどこか外で景色を観ながら曲を書いていそうです。

左から池田健(G)、山本剛義(Vo, G)、星野隼一(G)、阪口晋作(B)、谷口修(Dr)。

僕ね、飼ってる犬がめちゃくちゃ好きで、家で犬をなでながら書くんです。あぐらを組んで、その上に犬を乗っけてリラックスしながら。そうするといいのが書けるんですよ。「セス」っていう名前で、トイプードルとペキニーズのミックスなんですよ。あ、写真見ます?

──すごいうれしそうですね。子供の話してるみたい。

子供がいるミュージシャンの方に、「子供ができたら歌詞が変わる」って言われたんですけど、僕も犬を飼い始めてから歌詞変わったんです。「ニューシネマ」の曲を作ってるあたりから飼い始めたんですけど、その前とその後で書いてる歌詞が全然違うんです。

──犬を飼い始めたことが歌詞にどのように影響するんでしょう?

「街と人」っていうのが僕の作る曲のテーマなんです、ずっと。街の様子は変わっていくものだし、人もずっといたり、逆にいなくなったりして。物事が移り変わっていくっていうのをテーマにしてるんですけど、犬がいると子供みたいなもんで、長生きしてほしいなって思うんですよ。それで前よりも優しい気持ちになれました。あと散歩してるとき「ここにあったラブホテルが取り壊されたなー」とか犬とずっとしゃべってて、そこから歌詞が書けたりもします。

──「街と人」をテーマにしてるのはなぜ?

「ばんねん」を作ったのは付き合ってた彼女と別れたときで、別れたっていう出来事を今歌いたいって思ったんです。そうしたら別れたっていうこととか、その子のことじゃなくて、その子とどこに行ったかとか、風景ばっかりが浮かんできて……。人との思い出って全部場所が一緒にあって、誰か思い出すときって場所も一緒に思い出すんだなあと思って。僕は人のことを歌いたいんで、必然的に景色もセットになってくるんです。

“人”を多くした「スポットライト」

──今作「スポットライト」でメジャーデビューです。曲の作り方や意識は変わりました?

変わりました。というのも1回ライブをやるにしても、自分たちだけやったらステージからのことしか見えないんですけど、メジャーデビューが決まってからスタッフが増えて、フロアはこんな感じやったとか、こっから見たらこんな感じやったとか、いろんな情報とかヒントをもらえるようになったんですね。だから前よりお客さんのことを考えて曲を作れるようになりました。それは売れ線の曲を作るとか、わかりやすくするってことではなくて、前のアルバムの流れを踏まえつつも、こうすればもっと喜んでくれるんじゃないかとか、こうすればもっと伝わりやすいんじゃないかとか。いろんなアプローチができるようになりました。それが今回のアルバムの一番聴いてほしいところです。

左から谷口修(Dr)、池田健(G)、山本剛義(Vo, G)、阪口晋作(B)、星野隼一(G)。

──歌詞にも影響ありました?

歌詞だと、「ニューシネマ」は“街と人”の“街”、つまり風景の部分が多かったんですけど、「スポットライト」は、“人”の占める割合が増えてきてます。なので「何のことを歌ってるかわからん」っていう人が前より少ないんじゃないかなと思います。より広く聴いてもらえるようになったんじゃないかな。

──“人”の占める割合が増えたきっかけって何かあるんですか? 誰かに何か言われたとか。

何も言われたことなくて。メジャーデビューしたら「売れそうな曲」を作るように言われるって思ってたんですけど、全然そんなことなくて。僕らがやりたいことをやるにはどうしたらいいかってことをチーム全員が力合わせて考えてくれているので、よりスムーズにできるようになったっていう感じです。

歌の力でギャップを埋めたい

──曲だけでなく、ライブも変わりましたか?

いや、変わってはいないんですけど、1つ気付いたことがあって。僕らに対してかわいい感じでライブするっていうイメージを持ってライブに来てくれる人がいるんですよね。もちろん、それは入口としてわかりやすいし、聴いてもらいやすいと思うんでいいんですけど、僕は楽曲にもライブにもどこか男らしさみたいな部分は求めてるので、前よりも強く、ライブは絶対男らしくやる、しっかり前を向いてやるっていうのを意識するようになりました。

──それまではかわいいっていうイメージを持たれてるって思ってなかった?

思ってなかったんです。「ニューシネマ」を出して、音源を聴いてくれたりライブに来てくれる人が増えて、そう思われてるんやってことに気付いたんです。でも自分はそんなこと考えてもなかったから、「じゃ自分はほんまはどうしたいんやろ」って立ち返ったときに、堂々と男らしくライブがしたいって思った。だからかわいいっていうイメージを持ってライブに来た人はギャップを感じるかもしれないけど、歌の力で、そういうお客さんを引きずり込んでいけるようなバンドになりたいです。

──そのために何かしてることはありますか?

最近ボイトレに行きはじめました。あと走ってます。セスと一緒に。犬も僕も最近太ってきたので一緒に鍛えてます(笑)。

ニューアルバム「スポットライト」2014年7月9日発売 / 1944円 / Virgin Records / TYCT-60041
「スポットライト」
収録曲
  1. 通り雨
  2. SING A SONG GIRL
  3. 長い夢
  4. 君はまぼろし
  5. サイダー
  6. メルトサマー
  7. スポットライト
ボールズ 1st Album「スポットライト」発売記念ワンマン「スポットライトの夜」
  • 2014年9月19日(金)
    東京都 下北沢SHELTER
  • 2014年9月26日(金)
    大阪府 LIVE HOUSE Pangea
ボールズ
ボールズ

2008年に山本剛義(Vo, G)と阪口晋作(B)の2人で結成。大阪でノイズユニットとして活動していたが、ポップスを奏でるバンドへと転身し池田健(G)、星野隼一(G)、谷口修(Dr)が加入した。2013年10月に発表した1stミニアルバム「ニューシネマ」が、「タワレコ渋谷アワード2013<年間ベスト>」を獲得するなどロングヒットを記録。2014年4月にバンド名を「ミラーマン」から「ボールズ」に改名し、同年7月にアルバム「スポットライト」でメジャーデビュー。