バカリズムと(バカリズム×秦基博)|4年越しの思い叶う 日テレ系「バズリズム」発ユニット“ハタリズム”が贈る名バラード

英語を歌ってるっていう事実がほしかった

──秦さんはご自身の楽曲制作ではサウンドから固めていくそうですが、今回は自ら詞先がいいんじゃないかと提案されたそうですね。それはバカリズムさんの歌詞を立たせたかったから?

 そうですね。どんなメッセージを言うかが一番大事だと思ったので、まず言いたいことを言ってもらって、そこにメロディを付けたほうが今回の場合はいいんじゃないかなと。メロディの制約があると、「この言葉を言いたいけどメロディにハマらないから使えない」っていうのが出てきちゃうと思ったので。

──バカリズムさん的に詞先はやりやすかったですか?

バカリズム

バカリズム 僕、いまだに正しい歌詞の書き方や構成の仕方がわからなくて。AメロとかBメロもいまいちよくわからないから、ネットでいろんな曲の歌詞を見て「あ、これがAメロなんだ、これがBメロなんだ」って、なんとなく見よう見まねで書いてる感じなんです。

──今回Cメロは英語詞ですが、最初にバカリズムさんが秦さんに歌詞を渡した段階では、日本語詞と共に「ホントは英語にしたかったけど、わからないから断念しました」という注釈を書いていたそうですね。

バカリズム そうなんです。たまにあるじゃないですか、「急に英語になったな!」みたいな。それをやりたかったから、正直歌詞はなんでもよくて。英語を歌ってるっていう事実がほしかったんですよ。で、あとはプロの方にお願いしました(笑)。

ネタ作りのように歌詞を書く

──逆に詞先にしたことで苦労した点はありましたか?

 苦労したというか面白かった点なんですけど……バカリズムさんの歌詞、Bメロの分量が多いんです!

バカリズム そうそう、レコーディングのとき言ってましたよね。そんなこと初めて聞いたから、そうなんだなって思って(笑)。

 いや、歌詞の形に決まりなんてないんですけど、Aメロは導入で、Bメロでちょっと短めの展開があって、サビでいっぱい言いたいことを言うっていうのが、まあオーソドックスだと思うんです。そう考えるとやっぱりBメロが長いんですよ。

バカリズム ああー、なるほど。

 この曲、Bメロでいっぱい言いたいことを言うし、サビでもいっぱい言いたいことを言うじゃないですか。だからメロディを考えるときに、「このBメロとサビをどうしようかな」って思って。しかも「『いくらだと思う?』って聞かれると緊張する」っていうサビがリフレインするから「そこは同じメロディがいいな」とか、そういうことを考えていきました。

バカリズム 確かに……Aメロはわりと普通にいい曲として、ありそうな言葉を選んで。それはお笑いで言うフリですね。で、Bメロには普通の曲には出てこないような違和感のあるフレーズを入れたかったんですよ。「クイズ形式」とか、「泳がせる」とか。サビで言いたいことは決まってるんで、Bメロでいかにくすぐるかを考えました。

秦基博

 そのサビも独特なんですよね。例えばサビが3回あったら、1番と3番のサビが同じで、2番のサビの歌詞がちょっと違うっていうのがよくあるパターンだと思うんです。それは1番のサビで言いたいことを言って、2番のサビでちょっと展開させて、3番のサビで「やっぱりこれを言いたい」っていう。でもバカリズムさんの歌詞は同じサビが2回続いて、最後にめちゃくちゃ展開するんですよね(笑)。

バカリズム ああー、最後に展開させるっていうのは、それこそネタの作り方ですね。1番と2番のサビが同じなのは、同じことをずっと歌うしつこさの笑い。で、最後は「もうさっきと言ってること違うじゃん」っていうぐらいに飛躍させるんです。どうせオチに向かってるところなんで。

──バカリズムさんにとっては作詞も、ドラマやネタの脚本も、表現の根本は一緒だけど形が違うというような感覚なんですか?

バカリズム そうですね。基本的に脚本には「面白いことをしたい、笑わせたい」っていう気持ちがあるんで、それがコントの場合もあれば、ドラマの場合もあるっていう感じですね。もともといろんな形で面白いことができればなと思っていたので、作詞もわりと同じチャンネルというか。

バカリズムと歌のバケモン

──改めて、今回バカリズムさんが秦さんと制作を共にした感想を聞かせてください。

バカリズム 秦さんは無駄のない人でしたね。そんなに口数が多いわけじゃないですけど、ちょろっとしゃべると、すごくいいこと言ってくれる。レコーディングのときもずーっとじっとしてて、スタッフさんと大事な話だけ口数少なくボソッボソッボソっとしゃべって。で、すーっとブースに入って、バシー!!っと歌って帰る。

 あははは(笑)。

バカリズム とにかく無駄がないんですよね。褒めるにしても、その理由がちゃんとあって。しかも褒めすぎず、こっちが気持ちよくなる褒め方をちょうどいいサイズで入れてくれるんです。あとはもう、歌のバケモンでしたね! あのねえ、もう……これは努力だとか、そういうもので埋まるもんじゃないんだなって思いました。たぶんこの人、もう最初っからバケモンなんだろうなって。

 いやいやいや……(笑)。

バカリズム なんか「こういうのって持って生まれたもんなんだな」と思いましたね。「ずーっと歌を練習してたら、秦さんぐらいうまくなるだろう」っていう、気がしない! 「僕が100年練習しても、こうなるとは思えない」っていうのを一瞬で感じたと言うか。もし僕が歌でがんばっていこうって思ってる人間だったら、秦さんとレコーディングした日にあきらめてました。ダメ。無理無理無理無理!

──(笑)。それは秦さんの歌を聴いたときに感じたんですか?

バカリズム そうですね。歌ってる感じとか、それまでの雰囲気とか。ふわーってブース入って、スコーン!!って歌って帰る。

 スコーンって……(笑)。そんなことないですよ、慣れですよ。

──バカリズムさんはレコーディング時、秦さんの声が入ったデモ音源をたくさん聴いたうえで、秦さんらしさを意識して歌われたそうですね。

バカリズム そうですね。秦さんの歌はやっぱりいいし強すぎるから、そっちに引っ張られちゃうんです。でも、この引っ張られちゃうと思ってることすら、おごりなんですよ。近付けるわけないんですよ。引っ張られてるようで結局ずっと近付けないし、でも引っ張られちゃうから、何回も聴いて意識しちゃうし。結局その差はずっと埋まらない。

 いやいや、僕の仮歌を聴いてすごく練習してくださったんだろうなって思いましたよ。ニュアンスや節回しにもその成果が入ってましたし。あと僕にそうやって言ってくださるのと同じように、バカリズムさんの声の持ってる、バカリズムさんにしかない表情がありました。

バカリズム ふふふ(笑)。こうやって絶対褒めてくれるんですよ。

 歌声ってそういうものですから。持って生まれた声自体がいい悪いっていうより、それをどう使うかでいい悪いが決まると思うんです。バカリズムさんは自分の声質で、どう歌えばいいかを考えてくださってるのが歌を聴いてるとわかったし「あ、ちゃんと歌ってるな」って思いました。カラオケとライブが違うのは、その“ちゃんと歌ってる”かどうかだと思うんです。

──それは意思を持って歌う、という感じでしょうか?

 そうです。だから僕も、バカリズムさんがレコーディングで歌入れをしてるときに、自然と「いいですね、よくなってますね」っていう言葉が出てきて。改めて今回バカリズムさんとご一緒して、物事の見方や、物をどう作るかという姿勢がやはりすごいなと感じましたね。歌詞の構成を見ても、歌ってる姿を見ても「最後どう落とすか」っていうところをいつも考えていらして。音楽をやっている身としても得るものがたくさんありました。

──最後に「バカリズムと」の今後のビジョンを教えてください。

バカリズム 最終的には……アルバムですね。でもやっぱり、原点はライブなんで。僕ら。

 ライブから始まってますからね。

バカリズム やっぱりライブが一番気持ちいいですからねえ?(笑)

 ……ワンマンライブですかね。

バカリズム ワンマンライブやりたいですね! それこそ「矢野フェス」みたいにいろんなアーティストさんをゲストに呼んでも面白そうですし。

左からバカリズム、秦基博。
バカリズムと「『いくらだと思う?』って聞かれると緊張する(ハタリズム)」

※配信は8月26日0:00から

「『いくらだと思う?』って聞かれると緊張する(ハタリズム)」

[配信] 250円

iTunes

レコチョク

[配信] 257円

mora

収録曲
  1. 「いくらだと思う?」って聞かれると緊張する(ハタリズム)
バカリズムと
バカリズムと
日本テレビ系の音楽番組「バズリズム」内でスタートしたバカリズムのメジャーデビュー企画。毎回さまざまなアーティストとコラボし、楽曲を作り上げる。第1弾は秦基博とのコラボユニット・ハタリズムとして「『いくらだと思う?』って聞かれると緊張する(ハタリズム)」を配信リリースした。第2弾では水野良樹(いきものがかり)とタッグを組み、ミズノリズムとして楽曲を制作している。
秦基博(ハタモトヒロ)
秦基博
1980年生まれ宮崎県出身のシンガーソングライター。横浜を中心に弾き語りでのライブ活動を開始し、2006年11月にシングル「シンクロ」でデビュー。柔らかな声と叙情豊かな詞、耳に残るポップなメロディで大きな注目を浴びる。2007年9月に発表した1stフルアルバム「コントラスト」が支持を集め、2009年3月に初の東京・日本武道館公演を実施。2011年には自身3度目の武道館公演を全編弾き語りで成功させた。2013年10月に自身が選曲したセレクションアルバム「ひとみみぼれ」をリリース。そして2014年8月発表の3DCGアニメ映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌「ひまわりの約束」は130万ダウンロードを超える大ヒットを記録した。2015年12月には全曲のアレンジを自ら手掛けたセルフプロデュースの5thアルバム「青の光景」を発表。2016年9月に行われたオフィスオーガスタによる野外ライブイベント「Augusta Camp」ではプロデュースを務めた。デビュー10周年を迎え、2017年5月には横浜スタジアムでワンマンライブを開催。6月には初のオールタイムベストアルバム「All Time Best ハタモトヒロ」を発売し自身初のアルバムウィークリーチャート1位を獲得、ロングヒットが続いている。