絢香「Wonder!」全曲解説|もうすぐデビュー20周年、いつまでも音楽に夢中でいられる理由 (2/2)

07. ずっとキミと

双子の愛犬を思って書いた曲です。本当にかけがえのない存在で、ペットのいる人たちはみんな同じ気持ちじゃないかなと思います。ふとしたしぐさや、見上げるまなざし、その1つ1つが愛おしくて、忘れたくない記憶。一緒に歩んできたストーリーがこの先もずっと続いてほしい、そんな気持ちで書きました。

──この曲のミュージックビデオで絢香さんとじゃれ合っている子たちですよね。今、何歳ですか?

14歳になりました。日々の過ごし方も少しずつゆっくりになってきたんですけど、側にいてくれることがただただありがたくて。

──これは「ひまわりの帰り道」にも共通する感情だと思うんですけど、幼児期の子供やペットは、大人の人間よりもずっと早いスピード感で生きているから、「待って、そんなに早く成長しないで」と思うことがあります。

そうなんですよね。歳を重ねるほどに、1日1日の尊さを強く感じるようになってます。

──サウンドには、ウキウキとお散歩に出かけるような楽しさがあふれています。

キラキラした曲にしたかったんです。アレンジャーの河野さんには、愛犬と今一緒にいるこの時間が愛しくて楽しいから、あんまりしんみりしないで、楽しさを全面的に出してほしいとお願いしました。

08. Feelin' goo-good

──グルーヴィなソウルチューンで、後ノリのリズムが気持ちいい曲です。

感じるままに動く感覚を大切に、音楽が生まれる瞬間や、恋に落ちる瞬間のざわめきとワクワクを曲にしました。

──その感覚は日々の中にあるものですか?

はい、あります。音楽を作ってるときはもう絶対、それが一番大事。頭で考えてもそんなにうまくいかないけど、感覚を信じていけばすごくいいものが待っているっていうのは、実感としてあります。

──その感覚をキープするコツはありますか?

安心できるゾーンから少しだけ踏み出して、新しい場所に行ったり、新しいものを食べてみたり。そんなふうに、常に新鮮な刺激を取り入れることを意識しています。大きな挑戦ばかりじゃなくて、日常でできる、小さなことでもいいんですけどね。

──なるほど。それはもともと自然にやっていたことなんですか? それとも表現者として意識的に?

両方あると思います。ひらめきを大切にするタイプなので、レコーディングにかける時間はいつも1時間半から2時間くらいですし、曲作りも1日1時間くらいしかやらないんです。時間が経つとだんだん冷静になって「これってどうなのかな……」という迷いが出てくるから、限られた時間で集中して取り組みたい。というのも、ほんのちょっとでも音楽を嫌いになりたくないんです。「この作業、嫌だな」という思いがよぎるのさえも嫌なので、そうなるくらいなら一度やめて、フレッシュな頭に切り替わったときにグッと集中してやろうと。

──だからずっと音楽に夢中でいられるんですね。

そうかもしれないですね。歌詞にある「ミラクル」はどこか特別な場所にあるんじゃなくて、自分のときめきに正直になったときにふと現れるものだと思うんです。その感覚を大事にしています。逆に、ときめきを感じないものは一切追求しない。自分の時間は有限だから、この貴重な時間をどこに、誰に注ぎたいかをはっきりさせた方が人生の彩りが増すと私は思っていて。時にはそうも言えないこともあるけど、状況を変えるのは自分次第。私はずっとそうやって進んできた気がします。

「Funtale Tour 2023」より。

「Funtale Tour 2023」より。

09. Me & You

「キミとボクは2コで1だ」という歌詞の通り、誰かと手をつなぎながら前に進んでいくことの尊さやうれしさを、改めて歌いたいと思って。「Me & You」「You & I」と繰り返すパートは、視点が入れ替わることで相手の存在が自分にどれほど影響を与えてくれているかを感じられたらいいなと思って、そういう構成にしました。手をつなぐだけで見慣れた景色がキラキラ輝きだすような関係って、いろんな形があると思います。家族や友達、恋人、そして私とファンの皆さんとの間にも。

──「悲しい時はその胸借ります」というメッセージがいいなと思います。誰かに頼るのは案外難しいことなので。

誰かを支えられたら素敵だし、ときには誰かに甘えるのも必要なことで、“お互いさま”ですよね。私自身、心をオープンに保つ力が、以前よりも育った気がします。若い頃は、相手がちょっとツンとしてたら、「もうこの人との仲が深まることはないな」と私もスッと心を閉ざしてた。でも今は、そういう人の心も、突いたら開くんじゃないかって思えるようになったというか(笑)。

──わかります。第一印象が最悪だった人と仲よくなることとか、ありますもんね。

そうそう、ありますよね。私の場合、大人になってからのほうがそういうことが増えた気がします。ツンとして見える人も、その日たまたま嫌なことがあっただけかもしれないし、私だってそんなふうにしちゃってたときがあるかもしれない。人との関わり方や温度感は変わっていくもので、それは結局、人とのつながりがあってこそなんだと思えるようになりました。

──そう考えると、心をオープンにしておかないと損だなって気がします。

ホントにそう思います。今朝も子供たちに「とにかくみんなに挨拶しよう。『おはよう』って言うだけで、『おはよう』の言葉とか相手の笑顔とか、いいものがいっぱい返ってくるよ」って話をしたんです。それは自分自身にも言えることだなと思います。

10. 花束じゃなくキミといたい

──この曲は壮大なバラードです。

今回のアルバムの中ですごく特別な存在で、シンガーソングライターとして20年間大切にしてきた「愛」や「人としての本質」を表す集大成のような1曲となりました。喜びも痛みも出会いも別れも、全部愛を軸に乗り越えてきた私の旅路を、できる限りシンプルかつ力強く表現した曲です。「愛で始まり、愛で終わりを迎えたい」というフレーズが何度か出てくるんですけど、人生はそうありたいという願いであり、歌うことそのものを象徴しているようにも感じます。

──「花束じゃなく」という言葉が、ほんの少しの違和感を生み出していて印象に残ります。

きれいな言葉やものより、ただあなたと一緒にいることがどれだけ尊いかということを伝えたかったんです。派手じゃないけど、心の奥にそっとある温かさみたいな、愛の本質を表現できたらと思って。

──「愛で終わりを迎えたい」というフレーズは、今だからこそ出てくる言葉ではないでしょうか。

確かに、20年前だったら、この言葉を説得力をもって歌うことはできなかったと思います。いろんなことを経験した今だからこそ歌いたかったですし、何年か先に歌ったときには、また違った響きが自分の中に生まれる気がしています。この先もずっと歌い続けていくのにふさわしい曲になりました。

「Funtale Tour 2023」より。

「Funtale Tour 2023」より。

“絢香といえばこの感じ”を覆す新しさ

──ここまで全曲を振り返っていただきましたが、アルバムが完成した今、どんなことを思われますか?

聴き返すたびに、これはやっぱり20周年を目前にしたタイミングだからこそ生まれた作品だなと感じます。変わらない根っこと成長した部分、その両方がうまく重なり合ったような作品になりました。サウンド面では新しいものをたくさん取り入れたので、“絢香といえばこの感じ”というイメージをいい意味で覆すアルバムになってるんじゃないかなと思います。

──ジャケットに写っている小さな子を見たとき、この子は“根っこの部分”を象徴しているように感じました。誰の中にもこんなふうにワクワクした表情の子がいるんじゃないかなって。

「Wonder!」CD+DVDジャケット

「Wonder!」CD+DVDジャケット

「Wonder!」CD onlyジャケット

「Wonder!」CD onlyジャケット

そうですね。きっと誰の中にも、何歳になっても、“ワンダーボックス”が必ずあるはず。そのボックスは普段なかなか開けないかもしれないけど、開けてみたら、いつもの景色がもっと楽しく、もっとキラキラしたものに変わっていくと思います。

──9月にはツアーが始まりますね。

すごく楽しみです! 来年の節目を意識して、今回のアルバム曲はもちろん、いろんな時代の曲をセットリストに入れる予定です。バンド編成なので、ライブならではのアレンジもあると思いますし、初めて来てくださる方も必ず楽しんでもらえる内容になると思いますので、ぜひ皆さん遊びに来てください。

絢香

──20周年に向けて何か考えていることはありますか?

もちろんありますよ! まだ言えないことのほうが多いんですけど、特別な節目なので、今まで聴いてくれたファンの皆さんと一緒に楽しめる年にしたいと思って、スタッフとともにいろいろ動いてます。

──その楽しみも、すぐやってくるんでしょうね。

ホント、10周年のツアーもついこの間に思えるし、時の流れの早さにびっくりします(笑)。この先もきっといろんなことがジェットコースターのようにあると思うんですけど、それも全部楽しんでいけたらいいなと思います。

公演情報

絢香 Wonder! Tour 2025

  • 2025年9月12日(金)千葉県 森のホール21
  • 2025年9月14日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2025年9月15日(月・祝)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2025年9月21日(日)熊本県 熊本城ホール メインホール
  • 2025年9月23日(火・祝)宮崎県 都城市総合文化ホール 大ホール
  • 2025年9月28日(日)京都府 ロームシアター京都
  • 2025年10月4日(土)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
  • 2025年10月5日(日)岐阜県 土岐市文化プラザ
  • 2025年10月11日(土)北海道 コーチャンフォー釧路文化ホール(釧路市民文化会館)
  • 2025年10月12日(日)北海道 帯広市民文化ホール
  • 2025年10月19日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2025年10月25日(土)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
  • 2025年10月26日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2025年11月1日(土)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
  • 2025年11月3日(月・祝)新潟県 長岡市立劇場
  • 2025年11月8日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2025年11月9日(日)岡山県 倉敷市民会館
  • 2025年11月15日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2025年11月16日(日)大阪府 フェスティバルホール
  • 2025年11月23日(日・祝)山形県 シェルターなんようホール(南陽市文化会館)
  • 2025年11月24日(月・振休)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2025年11月29日(土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2025年11月30日(日)山口県 KDDI維新ホール
  • 2025年12月6日(土)兵庫県 たつの市総合文化会館 赤とんぼ文化ホール
  • 2025年12月7日(日)滋賀県 ひこね市文化プラザ

絢香 Premium Dinner Live 2025 Winter

  • 2025年12月14日(日)鹿児島県 SHIROYAMA HOTEL kagoshima
    [昼の部]受付12:00 / 食事12:30~ / ショー 14:00~
    [夜の部]受付17:00 / 食事17:30~ / ショー 19:00~
  • 2025年12月21日(日)愛媛県 今治国際ホテル 2Fクリスタルホール
    [昼の部]受付13:15 / 食事13:30~ / ショー 15:00~
    [夜の部]受付17:45 / 食事18:00~ / ショー 19:30~
  • 2025年12月25日(木)東京都 京王プラザホテル
    [昼の部]受付13:30 / 食事14:30~ / ショー 16:00~
    [夜の部]受付18:00 / 食事19:00~ / ショー 20:30~
  • 2025年12月27日(土)大阪府 ホテルニューオータニ大阪
    受付17:00 / 食事18:00~ / ショー 19:30~

プロフィール

絢香(アヤカ)

大阪出身のシンガーソングライター。2006年2月に「I believe」でデビュー。同年11月発売の1stアルバム「First Message」は出荷枚数140万枚を超え、2009年発売のベストアルバムでもミリオンを達成した。ギター、ピアノ、歌のみの小編成やバンド編成での全国ツアー、ディナーライブやシンフォニックコンサートなどさまざまなスタイルでライブを精力的に展開。これまでに発表した数々の楽曲はカバーされることも多く、世代を超えて歌い継がれている。2025年9月、通算8枚目のオリジナルアルバム「Wonder!」を発表した。2026年2月にデビュー20周年を迎える。