絢香が5月13日にカバーアルバム「遊音倶楽部 ~2nd grade~」をリリースした。
2013年に発表した「遊音倶楽部 ~1st grade~」から約7年ぶりに届いた、カバーアルバムの第2弾となる本作。Mr.Children「everybody goes ~秩序のない現代にドロップキック~」や、荒井由実「ルージュの伝言」、レベッカ「フレンズ」、サカナクション「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」、桑田佳祐「明日晴れるかな」など、絢香自身が愛してやまない、幅広い年代の全10曲が収録されている。
名曲の数々へのリスペクトを込めつつ、音と遊び、たくさんの学びを手に入れたという本作の制作について、絢香本人に話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき
音楽にはすごい力があるんだなということを今、身をもって感じている
──新型コロナウイルス感染拡大の影響で大変な世の中ですけど、Twitterを拝見していると絢香さんは音楽と寄り添いながらしっかり前を向いて日常を過ごされている印象があります。
そうですね。会いたい人に会えなかったり、行きたい場所に行けなかったりすることがこんなに大変なことだとは思ってもみませんでした。今まで当たり前だと思っていたことが当たり前ではないんだと改めて気付かされたというか。とは言え日常は進んでいく。そんな中、私は常に好きな音楽を流すことで癒しを与えてもらっているんです。音楽にはすごい力があるんだなということを今、身をもって感じているところです。だからこそ、音楽を通してみんなとつながって、1つの曲を形にできたらいいなっていう思いも生まれたんですよね。
──絢香さんは現在、Twitter上でリスナーからのメッセージを募りながら、「ねがいぼし」という楽曲を制作されていますね。
はい。先行きが不安な今、みんなでこの有事を乗り越えていかなきゃならない中で、少しでも思い出に残せる何かができないかなって。私にできるのは歌うことと曲を作ることなので。この曲を私1人では表現しきれないと思ったので、(三浦)大知くんにも声をかけました。みんなでつながりながら作れたらいいなと思い、「今あなたが一番願うこと、感じてることは何かな?」と、Instagramにピアノで弾き語りのメロディを投稿しました。想像していた以上の反応をいただくことができて、私自身、すごく救われた気持ちにもなったんです。SNSのある今の時代に感謝ですよね。
──絢香さんの作ったメロディに歌詞が付き、ミュージシャンの方がリレー形式で音を乗せていく過程もSNS上で共有されているのは、とても貴重な体験だと思います。どんな仕上がりになるのかが本当に楽しみです。
私もすごく楽しみです。みんなの願いが込められた投稿を1つひとつ受け止めながら、大知くんやミュージシャンの方々と毎日やりとりをしています。こういう状況だからこそ、私たちのやりとりや制作過程をSNSで見てもらい参加してもらうことで、みんなに楽しんでもらえたらいいなって。
あの楽しさをもう一度味わいたい
──そんな絢香さんから素敵なアイテムが届きました。それが約7年ぶりとなるカバーアルバム「遊音倶楽部 ~2nd grade~」です。
7年前に「遊音倶楽部 ~1st grade~」を作ったとき、本当にいろいろな学びがあったんですよ。シンガーとしても、ソングライターとしても、カバーさせていただく曲をそれぞれじっくり掘り下げて聴き、歌っていく中で、「あ、この曲はこんなふうに作られているんだな。なるほど」と思うことが本当に多かったんです。しかもその学びは、後に自分のオリジナル曲を作るときに自然と跳ね返ってくるものでもあって。
──その学びを今回も欲したということですね。
はい。7年経った今、ひさびさにまたいろんなことを吸収したい、学びの時間が欲しいというタイミングが巡ってきたんですよね。「1st grade」を好んで聴いてくださっていたファンのみんなから、「2枚目も出して」という声はずっといただいていたので、それに応えられるのもうれしかったですし。
──来年のデビュー15周年を前に、改めて学びを求めるというのは素晴らしいことですよね。ある意味、シンガーとしての貪欲さを証明しているというか。
あははは(笑)。というよりは、前作を作る過程がとにかく楽しかったんですよ。自分の大好きな名曲たちを歌うこと自体も、それをどう自分なりに表現しようか考えている時間もすごく楽しくて。普段の制作ではなかなか出てこない発想が浮かぶことも多く、自分なりのチャレンジもたくさんできましたからね。その楽しさをもう一度味わいたいという気持ちも大きかったんです。私は何より歌うことが大好きな人間なので。
──カバーする楽曲に関してはどんな基準でセレクトしていったんですか?
世の中に名曲は山ほどあるし、1人のアーティストの方のレパートリーから好きな曲を選ぶにしてもきりがないので、「これもいい」「あれもいい」と言いながら選曲にはすごく時間がかかりましたね。ただ、私の中には幅広い世代の方々に楽しんでもらいたいという気持ちがあったので、そこを1つの基準にしていたところがありました。私のコンサートではいつも客席に向けて年齢を聞いていくんですけど、下は10代の方から、上は70、80代の方までいらっしゃるんですよ。親子3世代で来てくれる方もいますし。
──今回は1975年にリリースされた荒井由実「ルージュの伝言」から、2015年発表のback number「ヒロイン」まで、本当に幅広い時代の楽曲が選ばれていますからね。
そう。あともう1つ、カバーすることを想像したときに、自分なりにどう表現したいか、音の方向性が見える曲というのも選曲の基準ではありました。結果、リアルタイムでは触れてこなかった曲もありますけど、全体を通して言えるのはどれも私にとって大切な、大好きな曲ばかりになりました。
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新しさを求める気持ちは強くあるんです