生きていて歯車が合わないときってあるじゃないですか

──今作に関するインタビューは……。

渡邊忍（Vo, G）　初めて。

──インタビュー自体も久々なんじゃ？

渡邊　はい、劇的に（笑）。

一瀬正和（Dr）　前作のリリースは4年前だったから、いい意味でも変わっていると思うので、その頃に受けたインタビューとは真逆なことを言うかも（笑）。人として成長できていたらいいな（笑）。

──ということで、まずは、4年も前作から時間が空いたのはなぜなのか、から語っていただかざるを得ないというか（笑）。

渡邊　そうですね（笑）。なんだかんだやっていたらこうなっちゃったっていうか。手を付け始めたのは一昨年なんですよ。リズムとかは、その頃に録音したものとかも入っているし。

一瀬　そう。3～4曲。

渡邊　歌もかな、ちょいちょいあるんです。「DIDDY-BOP」はリレコーディングもしてて。

一瀬　「HUMDRUM」とか「MEND OUR MINDS」も、一昨年じゃない？

渡邊　そうだね。だから、もっと早く出したかったんですけど、何か……うまくいかなかったんで。

──何かというのは？

渡邊　あるじゃないですか、生きていて歯車が合わないときって。どうですか？

──返された！ まあ、ありますね（笑）。

渡邊　予定どおりにいかないとか、逆に予定に間に合わせようとして焦ってしまうとか、そんな雰囲気があったんですよね。だったら、もうちょっとゆっくり作ったほうがいいのかなと。いや、一昨年は焦って、どんどんやっていかなきゃって思っていたんですよ。でも、その年の末に機材車を盗まれたんですよね。そこでふっと力が抜けちゃって。これは焦っちゃいけないんだって勝手に思い込んで、早く作んなきゃっていうのを一回取っ払ったんですよね。そうしたらこんなに間が空いちゃったっていう（笑）。ツアーもやるから、ざっくりは予定を立てなきゃいけなかったですけど、制作期間を結構長めにとってもらって、ゆっくり作らせてもらいました。最終的にはそのギリギリのところで完成しましたけど。あはははは！（笑） これは性格なのかな？

──忍さんの？

渡邊　僕、かもしれない（笑）。でも、前よりはみんながアレンジする余裕はあったかな。

一瀬　うん。

原直央（B）　そうだね。

渡邊　前はもっとギリギリだったかもしれない。曲の作り方としては、僕がデモを上げて、2人に聴いてもらって、アレンジしてもらって、みんなで詰めて完成させていくんですけど。最初の発信源である僕が、ギリギリ野郎みたいなところがあるんで（笑）。でも、ギリくらいだったよね。

一瀬　いや、今回はじっくり詰められたよ。それにエンジニアさんも忙しい方だったんで、録音の日が飛び飛びで、まとめて録るわけじゃなかったから、スパンが空いた分、1曲1曲を詰められた。なので、時間はかかったけど、前よりは余裕がありましたね。

リリース時期が見えなかったことに対するプレッシャー

──収録されている14曲は、書いた時期にも開きがありますか？

渡邊　かなりあります。4年越しぐらいで曲を書いていましたね。

──最近できた曲も？

渡邊　はい。レコーディングの1週間前とか。

一瀬　いや、もうちょっと余裕あったよ。忍はがんばってたと思う。

渡邊　あ、僕、がんばってました（笑）。

──ライブなどでは、忍さんが自ら「出す出す詐欺」なんて言ってましたけど、アルバムを出したい気持ちはあったんですよね？

渡邊　なんかこう……背中に重いもの……とり憑かれてるっていうか、プレッシャーは多少ありましたね。どんだけ人を騙し続けていけばいいのか……詐欺師の気持ちが、すごくわかった。

原　ははははは！（笑）

渡邊　でも、このタイミングで出せて、人としてそこまで黒くならなくてよかったなって思いました（笑）。続けちゃうと慣れてきちゃうじゃないですか。よくある、老人たちを騙して、磁気入りの布団を買わせるみたいな。ああいう人たちは、騙している本人も悪気がなくなっちゃってるんでしょ？ 洗脳されているから。俺も、罪悪感がなくなる一歩手前でした。

──そういう話ですか!?（笑）

一瀬　悪いことやってる気持ちがなくなりそうだったね。ここで出せて良かった（笑）。

原　だからMCで「出す出す詐欺」なんて言って己を鼓舞していたんだけど……。

渡邊　お客さんもだんだん「また言ってらあ」みたいになってきてたんで（笑）。