音楽ナタリー Power Push - ASH DA HERO
クソみたいな未来を迎えに行こうぜ! 自らのストーリーを描く壮大なロックオペラ完成
クソみたいな未来をこっちから迎えに行く
──7曲目の「Never ending dream」、8曲目の「生命のリレー」からは歌の内容がさらに本質的、普遍的になっていきますね。
「Never ending dream」は「本当に叶えたい夢がありますか?」という問いかけですね。あきらめがつく夢だったら最初から見ないほうがいいし、本気でつかみたい夢がないから、なんとなく生きるしかなくなっちゃうと思うんですよ。叶えられないくらいの夢を持ってがんばることは全然カッコ悪いことではないし、最後まで叶えられなくて失敗したとしても、その姿を見てる人は絶対にいますからね。見た人はきっと、その意志を継ぐだろうし。僕自身もそうだったんですよ。さっきも言いましたけど、必死でがんばっていたヤツが死んでしまったときは「あいつの分まで生きなくちゃな」って素直に思ったので。
──なるほど。
もしも命が尽きそうだったとしても、ずっと背中を見てくれていた人だったり、隣にいる誰かのことを忘れずにいてほしいんですよね。そこにはちゃんと愛情があるはずだし、自分が叶えたかった夢を受け継いでくれる人がいる。まさに「生命のリレー」ですよね。その100年後を描いたのが「One Hundred Years Later」。100年後の世界に僕はいないし、今僕の音楽を聴いてくれてる人もいなくなっているかもしれないけど、僕らが残した種は誰かが運んで、土に埋めて、水をあげてくれるんじゃないかなって。
──最後に収録されている「HELLO NO FUTURE」には「愛じゃ救えない」「希望は見出せない」というフレーズがありますが、これがアルバムの結末なんですか?
どうせこれからもクソみたいな未来が来ると思うんですよ。Sex Pistolsのジョン・ライドンが「No Future」(「God Save The Queen」)って叫んだのは1977年ですけど、それから40年経って、本当にクソみたいな未来になったと思うんですよね。でも、アングリーな気持ちで「No Future」って叫ぶとただの真似事になっちゃうから、クソみたいな未来をこっちから迎えに行く歌にしたんですよ。歌詞にはまったく救いがなくて退廃的なんだけど、迎えに行くためには明るい曲調である必要があったんですよね。アルバムはここで完結だけど、僕としては1曲目の「Overture」に戻る感覚のほうが強いんです。そこで新しい人生が始まって、「お前自身が原動力になれ。周りが動かないのなら、お前が動け」っていう「You Gotta Power」があり、「目立ったことをやれば周りからいろんなことを言われるだろうけど、怒りを抱えながらもうまく答えを出していけ」っていう「Anchor」があって。で、4曲目の「Everything」が本当のエンディングなんです。生きていればいろんなことがあるし、黒か白か決められない、グレーなことも多い。「Everything」では、そのすべてを抱きしめる強さを持ってほしいということを歌ってるんです。誰かが誰かを傷つける世界だけど、その真似事をやってもしょうがない。傷つけるよりも抱きしめるほうが難しいけど、きっとできるよなって。
しばらくリリースはしないつもり
──シリアスな内容も含んでいますが、バラエティに富んだサウンドを含め、エンタテインメントとしても成立しているアルバムだと感じました。
そのバランスをあえて考えていたわけではないけど、自然とそうなりましたね。曲の流れだったり、全体的なロジックに関しては緻密に組んでいきましたけど、3部作を満足できる形で完結できたのは大きいと思います。もちろん、周りのスタッフ、アレンジャーを含めて、関わってくれたみんなへの感謝もすごくありますね。1人でやっているわけではないし、自分がやりたいことに賛同してくれて、動いてくれる人たちがいるから実現できているので。同時に「目に見える成果として返していかないと」という気持ちも強くなってますね。そうしないと、歩き疲れてしまう人も出てくると思うので。
──責任感、プレッシャーも強まってる?
うん、そうですね。実際に、このアルバムの制作はものすごく疲れました。今までは楽しみながら作っていたんだけど、「THIS IS LIFE」にはかなり持っていかれた感じがあったので。作り終わったあと「これで本当に大丈夫なのかな」って心配になりましたからね。“アルバム自体が1つの化け物”みたいな感覚になっちゃったんですよ。自分自身を振り絞ったからこそ、「このアルバムに食われちゃうんじゃないか」って思ってしまったというか……。作品を作るっていうのは、そういうことなんだなって改めて感じましたね。
──今はそういう状態を抜けてるんですか?
はい。今はもう「いろんな人に聴いてほしい」という気持ちになってるので。7月から8月にかけて東名阪のツアー(「ASH DA HERO ONE MAN TOUR 2016『THIS IS LIFE』」)があるんですけど、もちろんアルバムの曲が中心になるし、それぞれの会場で違ったこともやろうと思っていて。“THIS IS 3部作”が完結したので、しばらくリリースはしないつもりなんです。この3つの作品を堪能してほしいし、いろんな場所に飛び火させたいですね。
収録曲
- Overture
- You Gotta Power
- Anchor
- Everything
- いつかの街で
- 上京難民
- Never ending dream
- 生命のリレー
- One Hundred Years Later
- HELLO NO FUTURE
ツアー情報
ASH DA HERO「ASH DA HERO ONE MAN TOUR 2016『THIS IS LIFE』」
- 2016年7月27日(水)
- 東京都 TSUTAYA O-WEST
- 2016年8月19日(金)
- 大阪府 OSAKA MUSE
- 2016年8月26日(金)
- 愛知県 ElectricLadyLand
OPEN 18:00 / START 19:00 (全日程共通)
インストアイベント情報
アコースティックライブ+サインセッション
- 2016年6月18日(土)
- 愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店
- START 15:00
- 2016年6月19日(日)
- 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
- START 16:00
サインセッション
- 2016年6月15日(水)
- 東京都 タワーレコード新宿店 7F特設カウンター
- START 14:00 / END 14:30
- 2016年6月15日(水)
- 東京都 タワーレコード池袋店 5F特設コーナー
- START 16:00 / END 16:30
ASH DA HERO(アッシュダヒーロー)
「ロックンロールに夢と希望を。ロックンロールに栄光の光を。」という目標を掲げて活動する男性ロックボーカリスト。10代の頃から地元・愛知で音楽活動を行い、2013年まで在籍していたバンドでは海外のフェスにも出演した。2014年春よりASH DA HEROとしての活動を始め、VAMPSが所属する音楽事務所・VAMPROSEに所属。2015年12月にミニアルバム「THIS IS A HERO」で日本クラウンからメジャーデビューし、2016年6月に初のフルアルバム「THIS IS LIFE」を発表した。