音楽ナタリー Power Push - ASH DA HERO
本物かフェイクか?自らヒーローを名乗る男の“反抗声明”
「ロックンロールに夢と希望を」というテーマを堂々と掲げるソロアーティスト、ASH DA HEROがミニアルバム「THIS IS A HERO」でメジャーデビューを果たした。ヘヴィロック、メロコア、R&B、レゲエ、ラテンなどを自在に採り入れたサウンド、社会に渦まく鬱屈と「現状を変えたい」という反骨精神にあふれたリリック、そして、彼自身の強烈な存在感。新しいロックスター像を提示しようとする彼のスタンスは、現在のシーンの中でもきわめて異質だ。
名古屋のパンクシーンから活動をスタートさせ、2013年まで在籍していたバンドではアメリカでの大型イベントにも出演した経験を持つASH DA HERO。音楽ナタリーでの初のインタビューとなる今回は、ソロアーティストとしてのコンセプト、その個性的な音楽観について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介
僕はASH王国の王様だから、国民の声は聞かないと
──10代半ばから地元・名古屋のパンクシーンで活動。その後参加したバンドではアメリカでライブを行ったりと、ロックボーカリストとしてもさまざまな経験をしていますね。
そうですね。バンドはどちらかというと受動的にやってきたところがあるんですよ。バンドって、メンバーが4人だったら4人のモノになっちゃうじゃないですか。僕は群れるのが好きじゃないし、自分が一番目立ちたいんですよね(笑)。だからソロになったというところもあるんですよ、単純に。
──バンドは性に合ってない?
と思いながらやってました。「シックリくるバンドに出会ってないだけかな」という気持ちもあったから、いろんなバンドを転々としてたんですけどね。時代的にも、もうバンドじゃない気がするんですよ。1人が看板を背負って、いろんなクリエイターと一緒にやるほうがいいんじゃないかなって。もちろん集合体の力、チームのすごさもあると思うけど、自分はそういうタイプではないので。
──ワンマンバンドという選択肢はなかったんですか? 「これは俺のバンドだから、言う通りにやって」って。
そのやり方も確かにあるけど、仕切るのが苦手なんですよね。リーダーシップ、キャプテンシーは持ってない人間だと思っているし、でも、すごくセルフィッシュでもあるっていう。まあ、だからソロなんでしょうね。
──実際にソロアーティストとして始動してみて、ここまでの手応えはどうですか?
やりやすいとは思ってますね。ただ、関わってくれる人も多いし、「引っ張っていかなくちゃいけないな」とか「責任感を持たなくちゃな」という自覚をようやく持てた感じがします。やっぱりみんなをハッピーにさせたいですからね。ソロだから全部自分のワガママだけでもやれるんだけど、盲目的にならず、周りの意見も聞くようにしてます。バンドのときは「自分だけでやりたい」って思ってたのに、ソロになったら、みんなの意見を聞くっていう。まあ、アマノジャクなんでしょうね。
──そうかもしれないですね(笑)。
スタッフのみんなと話していく中で市民権を得たアイデアを優先しているし、自分で言うのもアレですけど、そんなにエゴイスティックではないと思いますよ。俯瞰で観ることは大事だけど、自分1人ではどうしても主観的な俯瞰になるじゃないですか。そこはやっぱり、いろんな角度からの意見をもらったほうがいいなって。僕はASH王国の王様だから、国民の声は聞かないとね(笑)。
サバンナの動物たちが16ビートでノルところを見たくないか?
──ソロ活動を始めたときから、自らのアーティスト像は明確だったんですか?
実はそこまで明確なイメージはなかったんですよ。ソロをやろうと思ったときに、まず自分で企画書を作ったんです。ASH DA HEROはどういう物語を見せていくのか、そのプロットを作ろうと思って。断定的なものではなくて、抽象的な感じだったんですけどね。例えば「サバンナでライブをやりたい」とか。
──何ですか、それ?
無観客試合っていうのかな。サバンナの砂漠にステージを作ってライブをやったら、動物たちは果たして寄ってくるのか? とか。シマウマやライオンが僕の曲を聴いてノリ始めたら、それは人間の作り出した音が壁を超える瞬間じゃないですか。企画書には「サバンナの動物たちが16ビートでノルところを見たくないか?」って書いたと思うんですけど。
──ぶっ飛んでますね(笑)。ほかにはどんなことを書いてたんですか?
そうですね……。まず、俺が10代の頃に比べて、ロックやロックスターのパワーが弱まってるなって気がしてたんですよ。そのときから「ロックンロールに夢と希望を」と思っていたし、「もう1回、カッコいいロックスターが出てこないかな……あ、俺がやればいいか」っていう感じで。ASH DA HEROのテーマはそこですよね。「ひさしぶりにこういうヤツが出てきな」と思ってほしいなって。あとは「洋楽が好きな人に邦楽の素晴らしさを」「邦楽が好きな人に洋楽の素晴らしさを」という思いも最初からありました。最近は「これ、洋楽じゃん?」っていう感じのバンドがたくさん出てきてますけど、だったら洋楽を聴きますからね。「Fall Out Boyみたいでカッコいいね」っていうバンドだったら、Fall Out Boyを聴いたほうがいいじゃないですか。それじゃ意味ないし、僕は世界で戦えるアーティストになりたいと思っているので。
──その企画書に賛同してくれるスタッフが見つかり、デビューに至ったと。
そうですね。いろんな人に企画書を見せましたけど、みんな「面白いね」って言うんですよ。当たり前ですよね、面白いと思ってもらえるように書いてるんだから。そこから一歩踏み出して、自分にBet(賭ける)してくれる人がどれくらいいるのかリサーチしたいとも思っていたし。いま一緒にやってるマネージャーは「これだけじゃわからないから、音源送ってください」って言ってきたんです。で、何曲か送ったら、翌日の朝に「俺と組みましょう」って電話してきてくれて。こちらもいつでもスタートできるように、音源の準備だけはしてましたからね。
──音楽の方向性については、どんなイメージがあったんですか?
最初は企画書のプロットに沿って、そのストーリーを彩るような楽曲の作り方だったんです。ただ、僕は1週間くらいでマイナーチェンジしていくような人間だし、イマジネーションもどんどん広がって。やっていくうちに変わっていく感じなんですよね。
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収録曲
- HERO IS BACK 2
- 結局なんにもやれてない
- 反抗声明
- WAKE UP ROCK AND ROLL BAND
- BABY GOOD NIGHT
- THIS IS LOVE
- 「THIS IS A HERO」発売記念イベントLIVE「IS THIS A HERO?」
- 2015年12月4日(金)東京都 TSUTAYA O-West
<出演者>
ASH DA HERO
GUEST ACT:Made in Asia / Fo'xTails
OPENING ACT:Outside dandy
- 「VAMPS LIVE 2015-2016 JOINT 666」大阪・なんばHATCH公演
- 2015年12月5日(土)ゲスト:ASH DA HERO
- 2015年12月6日(日)ゲスト:Derailers
- 2015年12月9日(水)・10日(木)ゲスト:KNOCK OUT MONKEY
- 2015年12月12日(土)・13日(日)ゲスト:Nothing More
ASH DA HERO(アッシュダヒーロー)
「ロックンロールに夢と希望を。ロックンロールに栄光の光を。」という目標を掲げて活動する男性ロックボーカリスト。10代の頃から地元・愛知で音楽活動を行い、2013年まで在籍していたバンドでは海外のフェスにも出演した。2014年春よりASH DA HEROとしての活動を始め、VAMPSやMONORALが所属する音楽事務所・VAMPROSEに所属。2015年12月にミニアルバム「THIS IS A HERO」で日本クラウンからメジャーデビューを果たした。