音楽ナタリー Power Push - ASH DA HERO
クソみたいな未来を迎えに行こうぜ! 自らのストーリーを描く壮大なロックオペラ完成
飛び降り自殺未遂と、ASHの誕生
──善と悪がせめぎ合うような内容の曲もありますからね。特に「いつかの街で」には衝撃を受けるリスナーも多いと思います。
実体験ですからね、名古屋に住んでいた頃の。自殺しようとしたときの話なので。
──この歌はASH DA HERO誕生の瞬間を描いているんですか?
うん、まさしく。今までの名前を捨ててASHになろうとした瞬間というか。神頼みをやめた瞬間という言い方もできるかもしれないですね。
──当時は他力本願だった、と?
そうですね。この歌詞の内容の通りですけど、自分自身をしっかり信じてあげないといけなかったのに、全部周りのせいにしてたんです。「俺がこれだけやってるのに、何でお前はもっとがんばれないんだよ?」とか、「これだけやっても差が埋まらないのはどうしてだ?」とか。そうかと思えば「あの人は成功するだろうな」と思っていた人が突然辞めちゃったり、「こんな素敵なヤツ、なかなかいないよな」と思ってた人がいきなり死んじゃったりもして。神様にケンカ売りたくなるようなことが重なっていくうちに、たぶん頭が少しおかしくなっちゃったんでしょうね。気付いたら、ビルの屋上にいたんですよ。でも、飛び降りようと思ってフェンスを越えようとした瞬間にすげえ強い風が吹いて、「うわ、危ねえ」って思っちゃったんです。今から死のうとしているクセに「危ねえ」なんて、めちゃくちゃ情けないじゃないですか。その後、一生分くらい泣き枯らして、過去の自分と決別しようと思ったんです。その直後ですね、タトゥーを入れたのは。
──その出来事によってすべてが変わったと。
はい。風が吹いたときに「神様っているのかもな」って思ったんですよね。「君はもっとやることがあるんじゃない?」って言われてる気がしたというか……。そこからですね、ASHとして生きようと思ったのは。実際、その直後から人生がどんどん転がっていったんです。それまでやってたバンドを辞めたら、同郷の先輩から「東京に来ないか」って誘われて、海外でのライブも経験させてもらって。そこからソロになって、いろんな人と出会う中で今に至るっていう。あっと言う間だったからこそ、すべて鮮明に覚えてますね。
俺、東京も名古屋も嫌いなんですよ
──「上京難民」は上京した後のストーリーですよね。“なんとなく”生きている人たちへの辛辣なメッセージも含まれていますが、こういう状況があったんですか?
自分のことではなくて、周りのヤツらの話ですね。地方から東京に来たヤツが嫌いだったんですよ、当時。先輩に誘われて東京でバンドを始めたんですけど、周りに俳優とかミュージシャンだってヤツがいっぱいいて。「この前の現場で○○さんがさ」みたいな感じで著名人の名前をバンバン出して、それを武器にするようなヤツっているじゃないですか。
──いるかもしれない(笑)。
「俺らが認められてないのは、時代が追い付いてないだけだから」とか言ったり。そんなヤツらに嫌悪感を持ってたんですよね。「なんとなく生きてるんだろうな」って思って。そういうタイプのヤツがいると「いやいや、本職は服屋のバイトでしょ? たまに趣味で役者やってるだけでしょ?」って言ってたんです。いつもケンカになってたし、友達も全然できませんでしたね。それを見て「お前、気合い入ってるな」みたいに近付いてくる先輩もうざったいし。
──自戒を込めて言いますけど、なんとなく生きてる人間はいつの時代もどんな場所にもいますからね。
うん。だから俺、東京も名古屋も嫌いなんですよ(笑)。パーマネントトラベラーというか、世界中を旅しながら海賊みたいに暮らすのが希望ですね。そのためにも早く売れて、ネームバリューを上げないと。それが現実になったら「家が欲しいな」って思うかもしれないけど(笑)。
──「上京難民」はヒップホップの手法が取り入れられてますね。
ポエトリーリーディングに近いのかな。フォークソングのつもりで作ったんですよ、もともと。四畳半フォークみたいなものってすごくブルース的だし、自分に合うんじゃないかなって思ったんだけど、実際に作ってみたらベタベタで古臭くなっちゃって。「ASH DA HEROに四畳半のアパートは似合わん!」と思ったし(笑)、「こういう曲があるんだけど、どうしたらもっとアーバンな感じにできるかな?」ってアレンジャー(宮田“レフティ”リョウ)に相談したら「The Rootsみたいな感じでやってみよう」というアイデアをくれて。クエストラブのドラムをイメージしながら、バースは打ち込みにして、フックは生演奏で……みたいな感じでどんどんインスピレーションが湧いてきたんですよ。その後、アコギを弾いたり指を鳴らしたりしてトラックを作ってたんですけど、たまたまLINEの着信音が鳴って「これを録音するのもアリだね」ってことになって。アレンジャーとはいつもそんな感じでやりとりしてるんですよね。
──音楽的にもASHさんのルーツが見える作品になってますよね。このアルバムを聴けば、ロックだけではなく、ブラックミュージックも根底にあることがはっきりわかるだろうし。
そうかもしれないですね。自分の音楽的なルーツを曲に落とし込むことを意識していたわけではないんだけど、曲によっては色濃く出ちゃっているかもしれない。
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収録曲
- Overture
- You Gotta Power
- Anchor
- Everything
- いつかの街で
- 上京難民
- Never ending dream
- 生命のリレー
- One Hundred Years Later
- HELLO NO FUTURE
ツアー情報
ASH DA HERO「ASH DA HERO ONE MAN TOUR 2016『THIS IS LIFE』」
- 2016年7月27日(水)
- 東京都 TSUTAYA O-WEST
- 2016年8月19日(金)
- 大阪府 OSAKA MUSE
- 2016年8月26日(金)
- 愛知県 ElectricLadyLand
OPEN 18:00 / START 19:00 (全日程共通)
インストアイベント情報
アコースティックライブ+サインセッション
- 2016年6月18日(土)
- 愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店
- START 15:00
- 2016年6月19日(日)
- 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
- START 16:00
サインセッション
- 2016年6月15日(水)
- 東京都 タワーレコード新宿店 7F特設カウンター
- START 14:00 / END 14:30
- 2016年6月15日(水)
- 東京都 タワーレコード池袋店 5F特設コーナー
- START 16:00 / END 16:30
ASH DA HERO(アッシュダヒーロー)
「ロックンロールに夢と希望を。ロックンロールに栄光の光を。」という目標を掲げて活動する男性ロックボーカリスト。10代の頃から地元・愛知で音楽活動を行い、2013年まで在籍していたバンドでは海外のフェスにも出演した。2014年春よりASH DA HEROとしての活動を始め、VAMPSが所属する音楽事務所・VAMPROSEに所属。2015年12月にミニアルバム「THIS IS A HERO」で日本クラウンからメジャーデビューし、2016年6月に初のフルアルバム「THIS IS LIFE」を発表した。